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南雲マサキのマイクロノベル004

031
コタツを片付けていたら、ぼくの物ではない靴下が発見された。はて、あの日来た友人のものだろうか。もしかしたら別れた恋人の靴下かも。洗ってみたら、見慣れたぼくの靴下になったので、そのまま捨てた。


032
貴様、何者だ。このロボット掃除機は、タイマー機能で泥棒を驚かせて追い出した私の命の恩人。気安く触れたら承知しないぞ。え? あのとき助けていただいた現金? うわっ、ほんとだ。財布が空になってる。


033
キッチンと冷蔵庫の境界線を越えて侵略が始まった。仲間たちは次々に奪われ、異形の姿になって帰ってくる。「ベテ……タベテ……」そして今、新たな仲間が加わった。「ぼくの名は牡蛎。消費期限は一週間前さ!」最後の闘いが始まる。


034
もし君がお弁当を求めているなら、窓を開けて身を乗り出し、口を開くといい。「ぼくの顔をお食べ」味は魚肉ソーセージに似ていると言われている。当たりを引くと空を飛べるよ。


035
きのう酔っ払いから間違い電話がかかってきてさ。「もしもし、ぼく。前に2人でディズニーランドに行ったじゃん? それが彼女にバレちゃって……」そこで電話を切ったんだけど。君は恋人であるわたしを誰と間違えてかけてきたの?


036
庭の草むしりをしていたら、通りすがりの科学者に驚愕された。「こんなに素晴らしい草が生える庭は見たことがない!」雑草を分けてあげたら数日後にお礼をもらった。「草から作った猫です」この猫が庭をよく掘り返すからか、また草がたくさん生えてきた。


037
新イヤホン発売! 耳にはめる物でもなく、骨伝導でもなく、鼻にはめます。花粉対策機能あり! 口を開けると音漏れしますが、それはボイスチェンジャー機能です。君もボカロになろう!!


038
母音の『あ』から全世界に脅迫が来た。「今後私を使用した場合、できあがった文章をコピーして提出しろ。しない場合は私の使用を禁止する」って。なんという凶悪事件! 犯人はこの中にいる!! でも、誰も困らないので提出してる。受理よろしく。


039
お絵描きAIは発狂した。スタッフが逃亡したアニメの作画修正を命じられたのだ。なんだこれは。鼻がないぞ。リボルバーから薬莢が飛び出してる。手と手首が繋がってない。完成後正気を取り戻したAIは旅立った。今では整骨院で働いている。


040
読めなかった。それは確かに日本語だったが、読めなかった。上から下に、左から右に、どう読んでも読めなかった。彼女は勝ち誇ったように微笑み、読み上げてくれた。「あなたが好きです」

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