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未公開小説の一部

「お前は今、なにをした」
キャスケット帽を目深にかぶった男が、問い掛けながら歩を進める。地味な色のトレンチコートは、静かに降り続ける雨に濡れ切っていた。その色は、黒。キャスケットも黒。喪服を思わせるような黒であった。

「五月蝿いな。この町は人も物も、なにもかもが俺達のモノだ。俺達のモノを、俺達がどうこうしたところで。お前にはなーんも関係ないだろぉ?」
舌なめずりをしながら、心底不思議そうにキャスケット帽に問い掛けるトサカ頭。顔には多数のピアス、両手にはナイフ。あからさまな悪党だ。傍らには黒く焼け焦げた、少年だったモノ。サイバネティックスによる発火能力者だ。

「関係ない」
キャスケット男の歩みは止まらない。よく見るとそのコートに降る雨が、湯気に変じていた。やがて、湯気は煙へと変わる。服が、ブスブスと鳴る。音と煙を立てていく。そして。

バウッ!

「そうだな。お前の言う通りだ」
一際けたたましい音を皮切りに、炎が大きく爆ぜた。むせ返るような臭いに、トサカ頭が顔を顰める。口を腕で塞ぐ。なにが起きているのか、訝しむ目。だがそれをよそに、炎は更に前進する。

「だが、俺は。怒りを得た」
やがて。その中から出てくる足。それは、黒色の。硬く分厚い甲鉄で構成されていて。
続いて出てくる腕も、頭部も、身体も。全てが、甲鉄だった。喪服の如き装束は全てが灰燼と帰し、黒色甲鉄に身を窶した、赤い瞳の異形がそこにあった。

「な、なんなんだお前は!」
トサカ頭は錯乱し、ナイフを無茶苦茶に振った。だが、甲鉄の生き物は意に介さない。それどころか。

「この少年の悲しみを知れ」
右の拳でトサカ頭を殴る。
「ぐへっ!」
トサカ頭がよろめき、下がる。無防備だ。

「俺の怒りを知れ」
左の拳でトサカ頭を殴る。
「ぐへぁ!」
トサカ頭がよろめき、下がる。最早戦意は見えない。

「ゆ、ゆるひて……」
頬を腫らし、何本の歯が折れ。歪んだ口で許しを請うトサカ頭。だが、黒甲鉄の男は。無慈悲にトサカ頭の顔を彩るピアスに指を掛け。無慈悲に引き千切る。
「あがーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
口元に付けていた二つのピアスを千切られ、のたうち回るトサカ頭。最早会話もままならず、黒甲鉄の男から少しでも遠くに離れようとする。

「た、た、たひゅ、たひゅ……」
「お前は少年の命乞いを聞いたか?」
黒甲鉄の戦士は無慈悲に宣告する。トサカ頭は、力なく首を振った。

「そういうことだ」
トサカ頭のトサカを、戦士が掴む。そして、己の膝に向けて叩きつける。引き千切られた毛がハラリと舞い、路上に鈍い音が響いた。
二目と見られぬ顔面を地に伏せた『元』トサカ頭。それを一瞥し、黒甲鉄の男は雨の中を去っていった……。


メタル・ダーク・ヒーロー的な作品を構想したものや。まだ未完成やけど、昨日不摂生して脳が死んでいるさかい、ちょっとここに貼っておくことにした。たまにゃ、小説書きの面も見せんとな。へへっ。

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