エスケープ

サムライ・エスケープ⑧

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 奴がオニと名乗った後も、不思議と素直な会話が成立した。

「そうですか。穴の中に」
「おう。先日酷いドンパチがあってな。山一つ越えて見に行ったら、お前が穴の中で唸っていたのさ」

 穴。恐らくヤヘジの巨大絡繰だ。あまりの因果に、おれは黙る。

「見つけた時は、酷いモンだった。死んでいても、おかしくなかったぞ」

 言われておれは、身体を確認する。火傷の痕があちこちに残っていた。爛れていないのが、不思議なくらいだ。

「お前、傷の治りやすいタチだろう。オニの秘伝薬でも、ここまでは早くないからな」
「……よく言われた」

 昔のことを思い出す。ヤヘジもトガノも、いいヤツだった。なのに、どうして。

「なにがしか考えているところに、悪いが」

 オニが、口を開いた。木の爆ぜる音が、小屋の中に響く。

「人間のドーシンとやらも、バカではないらしい。ここを嗅ぎつけたようだ」

 オニが立ち上がり、置いてあった武器を掴んだ。それは伝説通りに、金棒だった。


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