12/18 リハビリ用未完成品【習作】

勇者の品格

「品格とか言われてもわからない。まずは魔王を倒せる強さじゃないのか。強いだけじゃいけないのか。俺は、自分の道を進んだだけなんだ」

これはかつて、彼が発言したとされる言葉である。確かに彼は、当代無類の冒険者であった。ただし、勇者と呼ぶには品格に欠け、多くの批判を受けたのも事実である。

第百十八代勇者、ドルシ・ブルドラコ。彼は草原国出身の冒険者において、初めて勇者認定を受けた人物である。

ドルシは早い時期から戦闘と魔法に高い適性を有しており、十五歳の頃には草原国において同世代随一の戦士となっていた。この才を見込んだ草原国の王は、彼を聖教国へと送り出し、冒険者とすることにしたのである。

かくて、ドルシは十六歳にして第四次聖都使節団に加わることとなり、無事聖都に到着。すぐさまハイ・サンドのギルドに登録し、冒険者としての道を歩むこととなった。

異教徒であるドルシにとって、聖都での生活が楽なものではないことなど、容易に想像がつくだろう。如何に異教への配慮が行き届いている聖都とはいえ、彼への風当たりはかなり強いものであった。先達の冒険者による嫌がらせも非常にしんどかったと、本人も後に語っている。

しかしその程度でドルシの才能は崩れなかった。積極的なクエストの連続で徐々に等級を上げていき、二年後には二級に到達、三年目には一級にまで至ったのである。そしてここからがドルシの恐ろしさであった。


ここで一度、勇者という『構造』について語らせていただく。
勇者とはそもそも遥か昔、人間界を征服せんとした大魔王を倒した男に、与えられた称号である。
初代勇者はオリハルコンの武具に身を包み、優れた戦技によって大魔王を討ち滅ぼしたとされている。

この初代勇者を『勇者』としたのが当時の聖教国の法王であり、これがきっかけとなって現在に至るまでの勇者の歴史が始まるのである。

この初代勇者は、現在に至る過程で神格化が推し進められており、その実像は明らかではない。しかし聖都に残る史料によれば『武技・人格の両面において非常に優秀、全ての民より敬われ、愛された』とあり、それを裏付ける挿話は枚挙に暇がない有様である。

ともあれ、『勇者というシステム』は。冒険者という職業が生まれていく過程において、非常に噛み合った。ごろつきと変わらない悪質な冒険者を排除し、優秀な冒険者の価値を高め、保護していく構造が生まれたのである。

こうして聖教国は『勇者を認定する』という構造を生み出した。大魔王討伐に比肩するものとして魔王討伐・聖剣の所持・試練の達成などの要件を定め、これを一定期間に二度成し得た者を、勇者として『推挙』することにしたのである。


さて、話をドルシに戻す。三年目で一級冒険者となったドルシは、全盛期を迎えて勇躍することとなる。まず南溟の魔王を単独完全討伐して王手をかけると、その数カ月後には聖都南方の湖において武神に武技を認めさせ、刀を賜ったのである。また、一級に昇格する僅か前には東部大森林に棲まう魔族を八度に渡り成敗しており、最早勇者認定は待ったなしであった。

だが。実際には認定は難航した。実は南溟魔王を討伐した時点で、勇者への推挙は行われていたのである。しかし後述する品格の問題や、以前より指摘されていた異教徒への穿った見方などから、認定は一度見送られていたのである。

名目こそ、『二級の時点での勇者要件達成は、勇者認定基準に値しない』というもっともらしいものにされていたが、品格や宗教の問題であることは既に明白であった。特に後者は百十四代勇者を巡る事案でも話題にされており、とうてい隠し切れるものではなかったのである。

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ここまで書き上げ済み。書きたい欲望よりも、承認欲求の方が強くなってきていたので、リハビリ品として投稿します。正式に書き上がったらカクヨムへ。

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