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患者とその家族を温かく迎え入れる。名大病院内の「第二のわが家」

病院に入院する子どもを看病する家族のための滞在施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス」。 名古屋大学医学部附属病院の構内にある“なごやハウス”が2023年11月に開所10周年を迎えました。

ハウスを利用するのは、主に名大病院に入院または通院する子どもの患者とその家族。入院中の子どもに付き添う家族は、患者用ベッドの脇に寝たり、コンビニで食事を済ませたりするケースも珍しくありません。入院期間が長くなるほど家族の精神的、身体的負担は大きくなり、遠方から名大病院へ治療を受けに来た家族は滞在費もかかり負担が増すばかり。こうした家族が少しでも安息できる場所として開所しました。
ハウスは地域のボランティアや寄付・募金によって運営し、利用料は1人あたり1日1,000円(患者は無料)とリーズナブルな点も特長です。

全世界で約380ヵ所、日本国内では12ヵ所で開設されている「ドナルド・マクドナルド・ハウス」。 なごやハウスでは開設以来、延べ4,200家族、9,500人以上が利用

利用家族に寄り添う、温かい雰囲気に包まれた施設

玄関からハウスに入ると、吹き抜けの明るいロビーで “ドナルド人形”がお出迎え。スタッフが常駐する受付の奥に、キッチンと食堂、憩いのスペースが広がります。このほか、図書室やプレイルーム、ランドリールームも設置。壁にはボランティア手作りのタペストリーを飾るなど、入院中の子どもと家族が「第二のわが家」として過ごせるような穏やかな空間を整えています。
家族で泊まれる個室は12室。子どもに付き添う親は孤独感を感じることも多く、部屋に閉じこもらないようベッドルームにはテレビを設置していません。共有スペースで、親同士のコミュニケーションが生まれることを期待しています。
ハウスの大森マネージャーは「ひとりにさせないための声掛けや話しやすい雰囲気づくりを心掛けています。子どもの前や病院では話しづらいこともあります。泣きたいときには泣いて、感情を殺さなくても良いんです」と、家族の気持ちに寄り添います。

明るい雰囲気に包まれる施設内。
多目的室(写真右下)には寄付でいただいた漫画や小説などの書籍がずらり
全部屋に設置されている「思い出ノート」。病気と闘う子どもの様子や
ハウスへの感謝の気持ちなど、利用者の皆さんが思い思いに気持ちを綴っています

運営スタッフは職員4人と地域のボランティア約150人。ハウス内外の掃除やシーツ交換、食材の買い出し、時には食事作りもサポートします。ボランティアは高校生から70代まで幅広く、夜間は名大生のボランティアサークル「おうちプロジェクト」も担当しています。ハウス設立時の募金活動をきっかけに医学部保健学科の学生が2012年に立ち上げた団体で、現在もハウス運営のボランティアや募金活動などを行っています。

ハウスマネージャーの大森さん(右から2人目)と運営スタッフ、ボランティアの皆さん

ハウスでは夏祭りやクリスマス会などのイベントを行うことも。取材当日は病棟への“出張イベント”として、入院中の子どもたちと家族に、おもちゃや文房具、日用品などをプレゼントする「ハートフルカート」を実施。今回はハロウィンでお菓子をたくさん用意して、子どもたちは大喜びでした。

お菓子やおもちゃを満載した「ハートフルカート」。プレゼントはすべて寄付によるもの
ハロウィンの仮装をしてボランティアスタッフもイベントを盛り上げます

小児科医の目から見る、ハウスの存在の大きさ

名大病院の医師も、ハウスの重要性を実感しています。小児科の高橋義行教授は「回診していると、『今度ハウスに泊まるんだ!』とうれしそうに話してくれます。子どもたちはハウスに泊まることを心待ちにしながら、つらい治療を乗り越えているんです」と語ります。
ハウス利用者の多くが、小児がんの患者とその家族。名大病院は小児がん拠点病院(※)に指定されていますが、患者と家族の長期滞在施設の整備が指定要件の1つに入っています。
高橋教授によると、小児がんは半年から2年近い長期間の入院が必要で、「治療の合間に病院以外の場所でリフレッシュすることは闘病する親子にとってすごく大事。治療だけだとつらい思い出ばかり残ってしまいます。入院生活での楽しい思い出や病気を克服した経験などが、その子たちの強みや自信になるんです」と、小児医療における治療環境の重要性を強調します。

※小児がん拠点病院……小児がん患者と家族が安心して医療や支援を受けることができる環境の整備を目的として厚生労働省が指定する施設。日本国内で15の病院が指定されています。名大病院は診療体制や研修の実施体制などが評価され、最高得点で選定されました(2013年・2019年)。

小児医療に30年以上携わる高橋義行教授。
「病気を治すことはもちろん、医療環境の充実も子どもの成長にとっては大切」

新潟から転院してきた北角さん親子。「名大病院にハウスがあって安心した」

取材当日にハウスを利用していた北角美生子さん。5歳の長女、ひまりちゃんの治療のためこの夏、新潟から名大病院に転院してきました。「病室とは違う環境でゆっくり過ごせます。ハウスがなかったらどうなっていたか……」と感謝しています。先日、新潟に住む夫とひまりちゃんの妹がハウスに泊まったそう。「2カ月ぐらい会えなかったので、下の子が本当に喜んでいました。家族みんなでハンバーグを作って、一緒に温かいご飯を食べたことが本当に幸せでした」。

新潟から名大病院に転院してきた北角さん親子

寄付や募金、ボランティアなどサポートの形はそれぞれ

ハウスのボランティアは、名大病院で治療を受けた患者さんのお母さんも多く、中には残念ながら亡くなった患者の家族もいるとのこと。高橋先生は「病院に来ること自体つらいかもしれないのに、同じ境遇の子どもたちを支援したいと思ってくれるのは、ハウスの存在と役割がいかに素晴らしいかを示しています」と考えています。
なごやハウスでは、ボランティアの募集や寄付・募金などのサポートを随時受け付けています。現在は「チャリティラッフル」という慈善を目的にした、くじ引きを実施中。抽選で景品が当たるチケットを購入するシステムで、1シート1,000円(10口)から参加可能。締め切りは12月10日(日)まで。

こちらの景品もすべて支援企業・団体・個人の皆さんからの提供によるもの

ドナルド・マクドナルド・ハウス  ホームページ
https://www.dmhcj.or.jp/


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