七帝柔道で「古豪・名大」復活へ――8カ国の多国籍チームが力を集結!
日本のお家芸とされた「柔道」は今や「JUDO」として世界中に普及し、国際的なスポーツとして定着しています。名大柔道部にも近年、国際化の風が吹き、日本の学生とアジア、アメリカ、ヨーロッパの留学生が“一つ屋根の下”で練習に励んでいます。7月6、7日に愛知県武道館で開催される七帝戦(=七大戦)は、名大の出場選手14人のうち10人が留学生。出身8カ国の多国籍メンバーで臨む戦いの結果はいかに――。
柔道とJUDO、伝統と多様性が芽吹く名大柔道
夕方17時、東山キャンパスの第4体育館にズシン、ズシンという振動が響く。柔道部の練習開始だ。白い道着に身を包んだ部員が横一列に並び、畳の上を往復しながら黙々と基礎練習に打ち込む。前転、後転、横回り、ほふく前進や、あお向け状態から体を反転させる動作など、畳の上を動き回る。部員の白川晴喜さん(農学部2年)が「試合で使う動きなので、これができないと試合になりません」と額の汗をぬぐいながら説明してくれた。
基礎練習を終えると「打ち込み」「乱取り」などの実践練習に入る。部員同士が1対1で向き合い、互いの袖と襟をつかんで組み合う。試合を想定しながら様々な体勢から技をかけ合い、防御や攻撃などの動作を体で覚えていく。
部員は国籍も話す言語も、体格も千差万別だ。身長168センチの白川さんが、身の丈が二回りも大きい身長187センチのサートビク・ラム・アナンドさん(経済学部1年)の体を抑え込む。その体勢を維持しながら、白川さんはアナンドさんに身体の動きを封じる技術を日本語と英語混じりで教えていた。
アナンドさんはインド出身。英語で単位を取得できる「G30(グローバル30)国際プログラム」で学ぶ留学生だ。留学生仲間から柔道部のことを聞いて入部した。「友達と一緒にスポーツするのが楽しい。おじぎ、敬語など日本の文化も知ることができて、何よりも柔道は相手をリスペクトして向き合うことが素晴らしい」と練習に打ち込んでいる。
5年後、10年後の強豪を目指すチーム作り
今年度の主将は、韓国出身の留学生で工学部3年の全益秀(ジュン・イクス)さん。入学してから始めた柔道だが、人一倍の努力で実力を上げてきた。現在の“多国籍チーム”形成は、G30の留学生に積極的に声を掛けて入部を募った全さんの働きがあればこそ。主将として「みんなに楽しく部活を続けてもらえるよう、ご飯に誘ったり、柔道以外の話をしたりしています」と責任感も人一倍。後輩から「ジュン先輩」と慕われている。
今回が73回目となる七大戦柔道は、15人対15人の勝ち抜き戦。しかし名大の布陣は14人。さらに、けがで出場できない見込みの選手もいるため情勢は圧倒的に不利だ。ただ、他にも出場選手が15人に満たない大学もあり勝機はある。
全さんはメンバーの一人一人に七大戦での目標設定を促し、勝利への意識と機運を高めて大会に臨む。主将としての目標は「みんなが後悔しない試合をしたい」と控えめだが、真の目標は目先の勝利ではなく、将来の「強豪校」への布石を打つことにある。「5年後、10年後には部員が大勢いる強豪校になるよう土台を作りたいです」と、先を見据える。
名大柔道の強みは、300人超の卒業生たち
道場の片隅で、マネージャーの澤田若菜さん(医学部保健学科3年)が年1回発行のOB会報の発送準備に追われていた。「自分でも役に立てることがあるかと思って入部しました」という澤田さん。「OBが300人以上もいて大変です」と笑いながら、会報を封筒に入れ、宛名ラベルを印字して貼る作業を続けていた。
OB会の活動が盛んな名大柔道部は、歴代の卒業生が時おり練習場に顔を出して部員と共に汗を流すなど、OBと現役部員との交流が盛んなことが強みの一つ。6月中旬、練習場を訪れた卒業生は「名大」と名前の入った道着を着て練習に参加。「今も柔道を続けているので、自分としても良い練習になる」と、後輩の指導に当たっていた。
「師範」の資格を持つ卒業生が現役部員の指導を担うのも伝統だ。現在、師範を務める二村雄次さん(昭和38年入学)は御年81歳。現役時代に七大戦での優勝を果たすなど、かつての黄金時代を経験した。医学の道に進み、名大病院の病院長を務めた後、様々な役職から引退した現在は指導者として常駐して“孫世代”の指導に情熱を傾ける。
「古豪復活」に向け、今なお畳の上に立ち、部員らに手ほどきする二村さん。様々な国の若者が共に汗を流す姿に目を細めながら「今や柔道は世界のJUDO。国際色豊かで良いのでは」と、新時代の名大柔道部に期待を寄せる。