これがハカセ夫婦の生きる道
2023年8月8日、名古屋大学オープンキャンパス2023に合わせ、ライフキャリアイベントを開催しました。
名古屋大学で働くハカセ夫婦のお二人に、キラキラなキャリアも、いっぱいいっぱいの日々も、包み隠さずお話しいただき、会場と語り合ったトークイベントの様子を振り返ります。
まず、二人が共に歩んできた15年間に、それぞれのキャリアにおける変化や出来事を重ねると…、
大きく3つずつのターニングポイントがあるようです。それぞれの歩みを追っていきましょう。
ハカセの生きる道<夫編>
宮武広直さんは、観測的宇宙論の研究者です。天体望遠鏡の観測データを解析し、宇宙の誕生と成長を説明する物理法則を探し出そうとしています。
博士号取得後、①まずアメリカのプリンストン大学で、②次にカリフォルニア工科大学にあるNASAジェット推進研究所で、ポスドク研究員を務めました。2018年、名古屋大学で教員ポストを獲得。これまでのネットワークを活かして国際研究プロジェクトに携わっています。
研究では、ポスドク時代の恩師の「Find things in which you have an unfair advantage. (他人にはない自分の長所を探しなさい)」という言葉を胸に、業績を出して次の「やりたい」に着実につなげていく姿勢を貫いています。ただ、海外出張が多く、1歳半の息子さんの子育てとの両立に難しさを感じているとのこと。南崎さんに負担をかけている、という言葉に背後にあるリアルを垣間見たようでした。
ハカセの生きる道<妻編>
南崎梓さんは、国際広報室副室長として、名古屋大学の魅力や研究成果を世界に発信する仕事をしています。
素粒子物理学で博士号を取得後、東京大学広報室のサイエンスコミュニケーターとして社会人をスタート。ところが宮武さんの渡米が決まり、悩みに悩んだ末、2年で退職して同行することに。言語も文化も異なる環境でも、勇気を出してやりたいことを「言ってみる」を実践し、フリーランスライターとして、カリフォルニア工科大学の天文センターの広報スタッフとして、広報のノウハウを習得しました。
宮武さんの名大行きが決まり、南崎さんも名大でKMIの広報ポストを探し出します。3年ほど勤務した頃、名大に国際広報室が立ち上がり、転職を決意。妊娠中のお腹を抱えて面接に行き、採用日はなんと産休中だったとか。宮武さんと一緒に暮らすことに軸を置き、その時々で柔軟に、かつ着実にキャリアを積んできた南崎さん。周囲への感謝と「自分は運が良かった」と常に謙虚な語り口が印象的でした。
フリートーク『ハカセ夫婦の舞台ウラ』
二人のお話の後は、会場のみなさまとざっくばらんなトークタイム。さまざまな体験がシェアされ、宮武さんと南崎さんもコメントしました。一部紹介します。
──理系の院生です。ポスドクに進もうか迷っています。経済的にも大丈夫か不安です。
宮:アメリカでのポスドク時代の初期は円高で生活も楽だったけれど、どんどん円安になって厳しかったですね。
南:家賃が安い物件に引っ越してしのぎましたよ。
──自分も彼氏も大学院生で、彼は来年からアメリカです。遠距離恋愛ってどうなんでしょう?
宮:僕たちもはじめのころは遠距離だったんですよ。でもビザのこともあって、渡米前に入籍を済ませました。あ、結婚しろというわけではないんですけど…。
南:「配偶者」になっていると、緊急のときに駆けつけることができたり、便利だったりしますね。
──これまでの歩みで、今は南崎さんが助ける、次は宮武さんが助ける、のようにお互いのキャリアを譲りあっていたのですか?
宮:うーん…結構譲ってもらってきた感じはします。今は働く時間を自分で決められるので、保育園のお迎えはしやすいですね。
南:職場の理解にもよりますよね。
GRLの関連&おすすめ本紹介
最後は、GRL司書の坂川万理子さんより、GRL所蔵の厳選10選の紹介です。
二人で紡いた物語:子育てをしながら物理学者として世界的な業績を打ち立てた女性の自叙伝。ゲスト南崎さんの心に響いた一冊。
デュアルキャリアカップル:仕事重視のカップルが愛情と仕事の両立で成功するにはどうしたら良いかを研究した本。
ワーク・ファミリー・バランス:ヨーロッパの事例をもとに、男女共に家族と仕事を両立するヒントを紹介。
なぜ理系に女性が少ないのか:綿密なデータ分析をもとに女性の理系離れを考察する本。南崎さんも分析に関与。
女性のためのキャリアデザイン:前向きに生き抜く知恵を凝縮した本。働く女性の応援歌!
世界を変えた10人の女性科学者:女性科学者の研究人生に触られる本。前向きに生きたい人にもおすすめ。
女性の世界地図:世界の女性がどこでどのように活躍し、抑圧され、差別され、生活しているのか、彼女たちの置かれる状況がわかる本。
LGBTQの働き方をケアする本:LGBTQの基本を学べる本。用語解説つき。
性別解体新書:「性別という束縛からの解放」がテーマ。筆者自身の性別適合手術経験から、生物学的性別が絶対的とする考え方を解体する。
フランスに学ぶジェンダー平等の推進と日本のこれから:男女参画均等をはかる「パリテ法」から日本女性の社会的処遇の改善を考える本。
本を読みに行くもよし、毎月開催中のブックトークに参加してみるもよし。GRLは、名大の大学院生スタッフも活躍中のアットホームで誰でもウェルカムな場所です。
閉会後も、あちらこちらでさまざまな対話が湧き、豊かな時間が続きました。ご参加いただいたみなさま、どうもありがとうございました!本文内に掲載した写真をご提供いただいた参加者の方、GRLスタッフのみなさま、ありがとうございます。
(報告:丸山恵)
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