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名古屋大学 研究フロントライン

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ポッドキャスト番組「名古屋大学 研究フロントライン」をテキストでお届けします♪ 名古屋大学の最近の研究の話題を、週に1回、柔らかめのトーンで紹介しています。
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#ホモ・サピエンス

5000個の石器と向き合い、見えてきたホモ・サピエンスの「試行錯誤」

700万年の人類の歴史の中で、なぜ私たちホモ・サピエンスだけが生き残ったのか──。以前、石器を通じて人類進化の謎に挑む門脇誠二さん(名古屋大学博物館 教授)の研究を紹介しました。 門脇さんが重視するのは、石器技術だけではなく、石器づくりに関連する人類の行動。ホモ・サピエンスが石器の種類によって石材を使い分けていたことを示した前回の研究に続き、彼らが試行錯誤を繰り返しながら石器技術を向上させていったことを発表しました。 約5万年前のホモ・サピエンスに「脳の突然変異」が起き、

ヨルダン遺跡調査チーム、石器の声を聴いてみたら…

700万年の人類の歴史で、何種類もの人類が現れ、消え、現れ、消え、、、私たちホモ・サピエンスだけが残りました。 なぜ私たちだけが残ったか議論される中、2022年のノーベル生理学医学賞の「古代DNA解析」は大きな話題になりました。化石中のDNA分析を可能にした技術で、絶滅した人類の遺伝情報が現代人に残ることをひもときました。 「ホモ・サピエンスとネアンデルタール人が交雑していたことはすごい発見です。でもなぜ交雑までしていたのにホモ・サピエンスだけ生き延びたのかは、逆に謎が深

58. ホモ・サピエンスは巧みな狩りで生き延びた

こんにちは、経済学研究科修士1年の越川光です。 今回は環境の変化が激しい氷河期の終わり頃の2万4000年〜1万5000年前の西アジアの環境で、ホモ・サピエンスがどのような狩猟活動を行っていたのかを明らかにした研究をご紹介します。 地球で唯一の人類として生き残ったホモ・サピエンス。彼らは厳しい環境変化の中で、どのように生活していたのでしょうか。ホモ・サピエンスが狩猟していた動物の種類・年齢・骨や歯などのエナメル質を調べることで、当時の生活環境まで理解することができます。 そ

47. ヨルダン遺跡調査続報 - 石器に見るホモ・サピエンスの応用力

こんにちは。理学部4年の小川詩織です。 今回は、ホモ・サピエンス繁栄の背景に、石の特徴を石器に活かす応用力が見えてくる研究をご紹介します。 以前に、ホモ・サピエンス拡散の出発点となったヨルダンの遺跡の発掘調査についてお届けしました。今回は、その続報です。 なぜホモ・サピエンスだけが人類として生き残ったか…。その有力な手がかりをつかもうと、名古屋大学などの研究グループが調査しているのが南ヨルダンの旧石器遺跡群です。その1つのトール・ファワズ遺跡の年代を約4万年前と推定した成

ホモ・サピエンス拡散の出発点、ヨルダンの遺跡で新たな発見 【42】

なぜ私たちだけが人類として生き残ったのでしょう… ヨルダンのトール・ファワズ遺跡の発掘から、私たちの歴史に思いを馳せてみませんか? (トップ画像提供:門脇誠二講師) 今回は、私たちヒト「ホモ・サピエンス」の歴史をひも解く、遺跡発掘に基づく研究をご紹介します。 発掘の舞台は、トール・ファワズという中東ヨルダン南部の遺跡です。アフリカで出現したホモ・サピエンスがユーラシアに拡散した出発点にあたる地域ですが、遺跡の正確な年代はわかっていませんでした。 そこで、名古屋大学の門