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47. ヨルダン遺跡調査続報 - 石器に見るホモ・サピエンスの応用力

こんにちは。理学部4年の小川詩織です。
今回は、ホモ・サピエンス繁栄の背景に、石の特徴を石器に活かす応用力が見えてくる研究をご紹介します。

音声でもお届けしています♪


以前に、ホモ・サピエンス拡散の出発点となったヨルダンの遺跡の発掘調査についてお届けしました。今回は、その続報です。

なぜホモ・サピエンスだけが人類として生き残ったか…。その有力な手がかりをつかもうと、名古屋大学などの研究グループが調査しているのが南ヨルダンの旧石器遺跡群です。その1つのトール・ファワズ遺跡の年代を約4万年前と推定した成果に続き、1万点以上も収集したという石器からもおもしろい発見がありました。

グループが注目したのは、石器に使われた石の性質です。出土した石器の表面の粗さを、専用の測定器で一点一点測りました。360点ほどの石器の表面の粗さを、数週間かけて計測した結果、トール・ファワズ遺跡以前の時代に比べ、表面が滑らかな石材が多く使われていることがわかってきました。

トールファワズ遺跡よりも後の時代になると、大きさが5センチ未満の小型石器が増えてきました。小型石器は、使う石材が少なくて済みますし、色々な形の柄にはめて使うことで、道具の種類が増えたと考えられています。

メリットの多い小型石器には、表面が滑らかな石材が合っていることに気づき、利用を拡大していったのが、唯一生き残った私たちホモ・サピエンスなのですね。こういった技術を発展させ、厳しい自然環境に適応し、人口を増やしていった、そんなストーリーが見えるように感じます。

研究を行った束田和弘つかだかずひろ准教授からコメントをいただきました。

私の専門は地質学です。考古学者と地質学者が、学問の垣根を超えてタッグを組んだ研究はあまり多くありません。石器を、“石”という観点から地質学的に検証したところ、今まで解らなかったことが色々とわかってきました。

我々の共同研究が、人類史考古学の新たな地平を切り開いていると思うと、本当にワクワクします。

詳しくは、2022年1月27日発表のプレスリリースもご覧ください。

(文:小川詩織、丸山恵)

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◯関連リンク

門脇誠二研究室(環境学研究科)

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