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名古屋大学 研究フロントライン

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ポッドキャスト番組「名古屋大学 研究フロントライン」をテキストでお届けします♪ 名古屋大学の最近の研究の話題を、週に1回、柔らかめのトーンで紹介しています。
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記事一覧

ちょっぴり数奇(すき)で乙(オツ)な研究の眺め方

今年も日本の研究者がイグ・ノーベル賞を受賞しました。ドジョウの生態からヒントを得て「動物のお尻には呼吸する能力がある」ことを発見したそうです。 さて、9月7日に開催した第108回名大カフェのゲストは、デンキウナギを初めユニークな魚類研究で知られる飯田敦夫さん(名古屋大学大学院 生命農学研究科 助教)です。『報道』と『論文』との違いを感じながら、人を笑わせつつ考えさせる過去のイグ・ノーベル賞の研究を眺めてみたいと思います。 「数寄」で「乙」な研究者飯田さんは、「へうげもの」

第107回名大カフェ☕メダカの巧みな生存戦略〜季節の変化に適応するしくみ〜

2024年8月29日(木)に第107回名大カフェ「メダカの巧みな生存戦略〜季節の変化に適応するしくみ〜」をオンライン(zoom)で開催しました🐟。今回のゲストは名古屋大学高等研究院/大学院生命農学研究科YLC特任助教中山友哉さんです。 今回は、中山さんにメダカが季節の変化に適応するしくみについてお話しいただきました😊。メダカは季節を感知して生殖腺のサイズを変えるだけでなく、冬には人でもあるような「うつ病」のような状態になるようです。とても賢いメダカの生存戦略に脱帽でした。

遺伝子ビッグデータが明かす、赤くなるのに飲める人の不思議

お酒を飲むと赤くなる人は、食道がんのリスクが高い──。 以前から言われていた飲酒に関わる遺伝要因や病気のリスクについて、今年1月、日本の研究グループ(愛知県がんセンター主導)から新たな研究成果が発表されました。 身近なテーマで、国内のニュースサイトでも話題になりましたが、 「お酒に弱い体質の方がほとんどいない欧米諸国からも、結構注目されたんですよ」 データサイエンティストとしてこの研究に参加した中杤昌弘さん(医学系研究科 准教授)は話します。 いくつもの遺伝要因の組

ジャガイモの「免疫」を活性化!農薬を使わない新たな疫病菌対策の可能性

ジャガイモは、春と秋の2回の旬があるのを、皆様ご存じでしたか🥔?北海道が一大産地ですが、寒い地域では春に植えて秋に収穫されます。一方、北海道に次ぐ産地である鹿児島や長崎では、冬に植え付けて春に収穫します。そんなジャガイモは高温多湿な環境が苦手で、病気になって腐りやすくなります。ジャガイモに感染する病原菌のうち最も怖い「ジャガイモ疫病菌」は気温が20℃くらいになると発育し、湿度が高くなると活動が盛んになります。また、水の中を泳いで胞子が飛散することから、長雨の後に急激に感染が拡

植物の基礎体力UP!企業と大学が共同開発した「バイオスティミュラント」を使ってみよう

「バイオスティミュラント」という言葉を聞いたことがありますか? 直訳すると「生物刺激剤」で、これからの農業資材として注目が高まっています。農薬でも化学肥料でもなく、植物が本来もっている「成長する」力や「病気から自分を守る」力を高める、サプリメントのような働きをします。 まだ新しく、知名度も高くないバイオスティミュラント。実は、名古屋大学と株式会社レゾナックさんが共同開発しています!既に「クロピコ®」という商品名で販売されているバイオスティミュラントを実際に使い、よりよい農

見て、つぶして、調べよう!名大温室で育てた砂糖イネ

「砂糖イネ」という名前を聞いたことがありますか?砂糖イネは、遺伝子の変異で、「米」ではなく「砂糖水」をつくるイネです。つぶすと甘い汁が出る不思議なイネで、名古屋大学などの研究チームが開発を進めています。 2024年8月9日、砂糖イネの実験を通して、砂糖イネを暮らしの中で活用する未来を考えるイベント「見て、つぶして、調べよう!名大温室で育てた砂糖イネ」を開催しました。 砂糖イネの糖度はどのくらい?まずは、実験です。 砂糖イネをひと粒、稲穂からもぎ取ります。 粒の上の部分を

「もったいない」からナノサイズの穴を開ける…!?

↓ 今回のトピックはコレです!何に見えますか? ハチの巣のような、有孔虫のような…。有機的な雰囲気をまとっていますが…、違うんです。直径100ナノメートル(0.0001ミリメートル)ほどの小さな金属の粒に、さらに小さな穴をたくさんあけた「ナノ多孔体」(のイメージ)です。 名古屋大学でこの不思議な粒をつくっているのは、山内悠輔さん(工学研究科 教授)。Nature誌が「Nano Architect(ナノ設計士)」と呼ぶ、職人的なこだわりを持つ研究者です。 山内さんの研究グ

羽音の音色を聞き分ける蚊の繁殖戦略

じとじと暑い日が続きます🥴。ぷ~~~ん・・・聞きなれた羽音です😖思わずパチン!と叩きたくなる羽音の主は、夏の風物詩でもある「蚊」です。平安時代の清少納言が「にくきもの」と嫌った蚊は、何のために血を吸うのか、皆様ご存じですか?実は、メスが子供を産むために吸血するのです。配偶行動をした後のメスしか吸血しないとな・・・その配偶行動の為にオスが同種メスを見つける手段は実は、「音」なんですって😲! 羽音で聞き分けている蚊の配偶を理解できれば、蚊の繁殖を制御できるのでは?と考えて研究を

炭素でつくる太陽電池

真夏日が続く夏休み、2024年7月26日に、名古屋大学東山キャンパス内に新しくオープンしたTokai Open Innovation Complex(TOIC)1Fで「炭素でつくる太陽電池」を開催しました。 サンサンと照りつける太陽を避け、直射日光の当たらない場所でじっと耐えるしかないと思いきや、太陽光線をエネルギーに変換してくれる新たな太陽電池があるそうです。この電池は、カーボンナノチューブを活用することで薄く透明で曲げられるシート状になっているのだとか。いったいどのよう

ノーベル賞から10年、今なお続く”二材料物語”にミステリアスな展開

省エネで明るい照明だけでなく、世界のエネルギー事情までも大きく変えた青色LED。その研究業績にノーベル賞が授与されて今年で10年です。 青色LEDは、窒化ガリウムとマグネシウムの特別な関係から生まれました。窒化ガリウムという半導体に秘められた「青い光を発する可能性」を、金属のマグネシウムを加えることで実現したのです。 「でも、窒化ガリウムとマグネシウムの相互作用は、今なお魅力的な謎の物語であり続けています…」 そう話すのは、王 嘉さん(高等研究院/未来材料・システム研究

「なんか作ろう!」から1年、西洋古典とAIのコラボがアツ〜く進行中

「Humanitext」というXアカウントで、意味深な会話が展開されています。 このアカウントを運営するのは、名古屋大学、桜美林大学、国立情報学研究所の研究チーム。少し前にニュースにもなった「西洋の哲学者たちと対話できる」AIシステム「Humanitext Antiqua」を開発しています。 その始まりについて、開発メンバーの岩田直也さん(名古屋大学デジタル人文社会科学研究センター 准教授)はこう話します。 「去年、日本西洋古典学会のフォーラムで生成AIの古典研究への応

電子の兄貴分「ミュオン」を加速して、研究者が本当に見たいもの

素粒子「ミュオン」と聞いてもピンと来ない方もいらっしゃるかもしれません…ピラミッドの透視に成功して大きなニュースになったアレです! ミュオンは宇宙線を構成する要素の一つです。宇宙から絶えず降り注いでいて、今も私たちの体を通り抜けています(痛くもかゆくもありませんが)。 そのミュオンを人工的につくって加速する日本発プロジェクトが重要な通過点に達し、先日その成果を発表しました↓ ミュオンを効率的に加速できるようになったら、ものを透過するミュオンの性質を活かして「ミュオン顕微

AR×感染症 :“ARグラスを活かした、イカした感染症対策コンテンツ“は、名大から生まれるのか____!?

ARグラスが盛り上がりを見せています。ARは、「拡張現実」を意味するAugumented Realityの略で、動画やゲームや楽しむツールとしてのイメージが強いかもしれません。しかし今、視聴覚において人の能力を補完したり、間違いを防いだりするツールとしての新たな開拓が始まろうとしています。 感染症は、肉眼で見ることができない問題の一つです。新たな感染症の登場を避けることはできませんが、数学的なアプローチが対策の評価や適切な意思決定の手助けになる可能性があることがわかってき

コンクリートじゃない、コンクリーション化が地球を救う!?

5月の爽やかな気候の中、初めて名古屋大学の博物館へ足を運びました。自身が名大の学生だった頃、お恥ずかしいことに一度も足を運んだことがなく・・・🤫そんな私を温かく迎えてくださったのは、吉田英一さん(名古屋大学博物館 館長/環境学研究科 教授)。 コンクリーションとは何ぞや??という方、是非コチラをご覧ください! 👇👇👇👇👇👇👇👇👇👇👇 ── 先生おススメのまん丸コンクリーション、重たいのですか? 持ってみてください😊 ── え😲😥。あれ、うそ!?持ち上がらない・・・