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名古屋大学 研究フロントライン

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ポッドキャスト番組「名古屋大学 研究フロントライン」をテキストでお届けします♪ 名古屋大学の最近の研究の話題を、週に1回、柔らかめのトーンで紹介しています。
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#情報学研究科

訓練不要!たった3ステップで怒りを鎮める方法を開発

「わかりやすい怒りの抑制方法を開発しました」 川合伸幸さん(情報学研究科 教授)の最新成果の一報を受け、情報学研究科棟にある川合さんの研究室を訪ねました。 怒りを書き出し、眺め、捨てる。これだけで、怒りを劇的に鎮めることができることを実験で証明したといいます。 世界も注目した怒り抑制法は、何を根拠に開発され、どうすごいのか。認知科学を専門に、人の「心」を長年研究し続けてきた川合さんに訊きました。 ── 怒りを抑えるといえば、アンガーマネジメントという言葉をよく聞きます

AI集団1000世代がジレンマゲーム?性格進化は何を語るか

生成AI、活用していますか? 文章を作るAI、画像を作るAI、映像を作るAI、音声を作るAI…、新しい生成AIが次々に誕生しています。名大研究フロントラインも、今回初めて生成AIにトップ画像を作ってもらったのですが、キーワードや条件次第でいくらでも提案してくれるんですね…!!  振り返れば、ChatGPTが話題になった頃から、大学では生成AIとどう付き合っていくのか、より深く議論されるようになりました。 「ChatGPTを使って勉強していいか、宿題やっていいかどうか、人

いつ、どこに意識は宿る? 脳神経科学に問う、われわれの正体

私たちはこの世界をどのように感じ、経験しているのでしょうか。 その主体となる「意識」は、全身の感覚器官からの情報や記憶、そこから湧き上がる感情、思考など、たくさんの情報をもとに形作られています。ですが、そもそも「意識」とはいったい何なのでしょうか? 1月12日に開催した名大カフェ第100回 × 高等研究院ウェビナーでは、文学、脳神経科学、実験心理学など、様々な分野の研究者が集いました。第一線で探求している現場の皆さんに研究の今を伺い、「意識」の謎を探ります。 第1部 「

「自閉スペクトラム傾向と白黒思考」に学ぶ、誰もが生きやすい社会へのヒント

自閉スペクトラム傾向の強い人は、ある心理状態を介して、ものごとを白か黒か二分的に捉える傾向がある──。以前からの仮説が、最近の認知心理学の研究で実証されました。 「自閉スペクトラムの傾向があるのは、自閉スペクトラム症の診断を受けている方だけじゃないんです。『スペクトラム』なので、診断を受けていない方も多かれ少なかれ自閉の傾向を持っていることもあるんですよ。」 そう話すのは、研究を行った平井真洋さん(情報学研究科 准教授)。人の社会性の広がりを理解する研究の一端として、自閉

ミクロの仕組み、AIでアプローチ ─多結晶材料情報学の幕開け─

今回は、以前紹介した金属3Dプリンターの話題に続く、新しい材料研究のお話です。 多結晶材料学という分野をご存知ですか?少し目線を上げて周りを見わたせば、多結晶が必ず目に入る…スマホの液晶画面、セラミックスのお茶碗、太陽光電池パネルなどなど、実は多結晶は暮らしに欠かせない存在です。より優れた性能の多結晶の開発を目指す多結晶材料学に、AI(情報学)を活用していこうとする動きが、ここ名古屋大学で起きています。 今回お話を伺ったのは、宇佐美徳隆教授(工学研究科)と、工藤博章准教授

ミライ対話イベント「空間のミライ:いごこちの良さを考える」を開催しました

ここにくると落ち着くんだよな〜という場所、あの人といると安らぐんだよね…という人。きっと誰もが、そんな「いごこちの良い空間」をお持ちではないでしょうか。 11月23日に開催したイベントに登録してくれた方々に、「あなたにとって『いごこちの良い場所』は?」と伺うと… 思わずうんうんとうなずいてしまうキーワードが並びました。いごこちが良いとリラックスできるし、いいアイディアが生まれたり、会話が弾んだり、いいことがたくさんありますよね。 そもそも「いごこちが良い」ってどういうこ

76. スポーツ戦術の巧みさを、情報科学で魅せる

先日、フロントラインでは、スポーツの「戦術」の研究紹介動画を公開しました。 スポーツで勝つために必要な”戦術”。実は、個人の”スキル”ともチームの”戦略”とも違うようです。 「戦術とは、フィールドの中で相手と争ったり、味方と協力したりするチームプレーを指します。サッカーやバスケットボールなど、相手がいる競技では、完璧な作戦が立てられると、それを打ち負かす新たな戦術が生まれます。戦術に唯一の正解はありませんが、どんな動きをすると成功確率が高まるか、過去のデータから定量的に評

AIとタンパク質デザインのコラボ、好相性! 【27】

「タンパク質」といっても、食べ物や栄養の話ではありません。 実は今、タンパク質が暮らしに役立つ、と注目されています。 そんなタンパク質を創り出す「タンパク質デザイン」の研究を紹介します。 ↓ 音声でもお届けしています! みなさんは、「デザイン」と聞いて、何をイメージされますか? 私は、ファッションやインテリア、ウェブデザインなんかを思い浮かべましたが、実はタンパク質にも「デザイン」の概念があるんです!  そもそも、デザインとは日本語で「設計」のことで、「車を設計する」と

人の声が調味料に!?声を聞くとおいしく感じる不思議 【26】

今回は、一人で食べる食事についての研究をご紹介します。 ↓ 音声でもお届けしています! ひとり暮らしの私は一人でご飯を食べることが多く、このトピックに思わず目が止まってしまいましたが、みなさんも一人より他の人と食事をする方が楽しく、食が進むのを経験されていませんか? 実は、一人で食べるときでも、鏡を見ながら食べたり、誰かが食べている映像を見ながら食べたりすると、おいしく感じ、食が進むことが科学的にわかっています。 おいしく感じる決め手は映像なのか、音声なのか…。 名古屋

意外! 「○○な動き」が赤ちゃんの学びを促す 【20】

今回は、赤ちゃんの学習に関する研究をご紹介します。 ↓ 音声でもお届けしています! 赤ちゃんは、周囲の人々のどのような仕草から知識や社会のルールを学んでいるでしょうか? 私自身もみなさんも、赤ちゃんの頃は親や親戚など周囲の人たちの体の動きから学習してきています。ただ、動きといっても無数にあるので、具体的にどのような動きを見てどのように学習するかは、まだ明らかになっていません。 そこで、名古屋大学などの共同研究グループが赤ちゃんを対象に研究を行いました。 まず、赤ちゃ

自動運転は思っているほど遠くない!? 【8】

今回は、自動運転車の動作やリスク評価に関する研究を紹介します。 ↓ 音声でもお届けしています! 自動運転といえば、先日、高速道路での渋滞中にドライバーに代わって運転操作する自動運転車が発売され、話題を呼びました。2025年にはさらに高度な無人自動運転を実現できるよう、国をあげて取り組まれています。 ただ、自動運転車が道路を走るようになるまでの道のりはとても長いです。運転技術の開発はもちろん、車両に誤作動はないか、起こりうるリスクに対処できるかといった安全面のチェックを厳

7200年前の沖縄に多くのブタがいた 【1】

第1回目の今回は、7200年前の沖縄に多くのブタがいたことを明らかにした、名古屋大学と沖縄県立埋蔵文化財センターの共同研究をご紹介します。 沖縄にはブタを使った料理も多くて、沖縄の食文化とブタは切っても切り離せない関係ですよね。 ブタは、人間が飼いならした野生のイノシシが、長い年月をかけて家畜化した動物です。沖縄にはイノシシの骨が出土する遺跡がたくさんあるのですが、実はイノシシではなくてブタの骨なのではないか…?と議論されてきました。 そこで、沖縄中部にある「野国貝塚」