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名古屋大学 研究フロントライン

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ポッドキャスト番組「名古屋大学 研究フロントライン」をテキストでお届けします♪ 名古屋大学の最近の研究の話題を、週に1回、柔らかめのトーンで紹介しています。
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#環境学研究科

火山ガスを”縦に”測る

「コロンブスの卵的な装置を作りました。」 地球をまるごと研究する角皆潤さん(環境学研究科 教授)が見せてくれたのは、研究グループの新作装置の映像。噴き上がる煙が目を引く映像ですが、新しい装置…どれかわかりますか? 「スタッフが空に向けて持っている長い棒です。火山ガスを測っています。」 グループは、誰もやってこなかったある火山ガス成分の分布の測定から、放出量の測定に成功。新しい火山モニタリングの提案を目指しています。一体何に着目したのか、プロジェクトについて角皆さんに聞き

ヨルダン遺跡調査チーム、石器の声を聴いてみたら…

700万年の人類の歴史で、何種類もの人類が現れ、消え、現れ、消え、、、私たちホモ・サピエンスだけが残りました。 なぜ私たちだけが残ったか議論される中、2022年のノーベル生理学医学賞の「古代DNA解析」は大きな話題になりました。化石中のDNA分析を可能にした技術で、絶滅した人類の遺伝情報が現代人に残ることをひもときました。 「ホモ・サピエンスとネアンデルタール人が交雑していたことはすごい発見です。でもなぜ交雑までしていたのにホモ・サピエンスだけ生き延びたのかは、逆に謎が深

深海9801m、岩石学者が本当に欲しかったもの

5月30日、第93回目を迎えた名大カフェ「深海9801m、岩石学者が本当に欲しかったもの」が、久しぶりの対面開催で行われました。 会場は、地下鉄名古屋大学駅すぐ、NIC館1階のコワーキングスペース「Idea Stoa」。この時の模様をレポートします。 今回のテーマは超深海探査。ゲストの道林 克禎さんと一緒に、日本で一番深い海の底に出かけましょう。 ■本当は岩石学者 髙橋:道林さんは岩石の研究をされているということですね。 道林:中学生の頃は、宇宙探査機「ボイジャー」

73. 川の健康のバロメーター「硝酸」。雨でなぜ増える?

こんにちは。経済学研究科修士2年の堀内愛歩です。 最近は、台風が日本に上陸したり、梅雨明けが速報値より一か月ほど遅くなったりと、雨に関するニュースが多いですね。 今回は、森と雨に関する研究を紹介します。 森に雨が降ると、森の土から川へ、実にさまざまな成分が流れ込みます。カルシウムやマグネシウム、窒素などなど…。特に窒素は、生物にとって非常に重要で、アミノ酸やタンパク質、核酸塩基など、私たちの体の中にももちろん、あらゆるところに含まれています。 地上での窒素は、さまざまな

68. この世界は間違った愛の結末!? 植物の繁殖干渉のはなし

日本のタンポポが外来種に置き換わってしまう…そんな話を耳にしたことはありませんか?これって外来種のタンポポが強いから?強いってどういうことでしょうか? 実は、在来種が外来種の花粉を受け入れてしまい、子孫を残すのに失敗し、急速に衰退に追いやられてしまう──こんなストーリーを語ってくれたのは、植物研究者の西田佐知子さん(環境学研究科准教授 )です。 「地球上にはいろんな生物がいろんなところにいますよね。でも、実は、近縁種のほとんどは、同じところに生息していないんですよ(西田さ

67. なぜこんなところに? モンゴルの巨大火成岩地帯の謎

今回は、大昔の地球の地下深くで何が起きていたのかを探る研究を紹介します。経済学研究科修士2年の堀内愛歩です。 なんだか最近地震が多いですね。実は日本のどこかで地震はほぼ毎日起きていて、年間1000回以上、多いときには6000回以上も起きています。ですので、地震が多いというより、私たちが感じるほどの大きさの地震が多く感じる、という表現が正しいのかもしれません。そんな地震の原因の一つが「プレート」です。理科で習う、地球の表面を覆っている岩盤のことですね。今回紹介するのは、この「

65. 巨大翼竜は空を飛べなかった!? 力学計算から見えてきた新事実

第66回目の今回は、絶滅した翼竜や鳥類の飛行方法を、力学計算で調べた研究を紹介します。理学研究科修士2年、成瀬美玖です。 絶滅動物の飛行方法が計算でわかる!? 古生物図鑑や古生物が主役の映画に登場する、翼を広げた状態で10 mにもなるような巨大な翼竜や鳥類。これら絶滅した鳥類や翼竜は、実際にはどのように飛んでいたのでしょうか? 例えば大型鳥類のコンドルは、羽ばたいて飛行するのではなく、風や気流を使用した滑空(ソアリング)をしながら飛行を行います。絶滅した大型鳥類も同様に

62. 環境中の「鉄」が、温暖化予測を変えるかも!?

第62回目の今回は、海が大気中から吸収する鉄に関する研究を紹介します。 経済学研究科修士2年の堀内愛歩です。 皆さんが、「鉄」と聞くと、鉄棒とか鉄パイプとか、硬くて重そうなものを想像するかと思います。でも実は、大気中にもエアロゾルと呼ばれる微粒子として存在します。この大気中の鉄が海に溶け込み、海中の植物プランクトンや海藻の光合成の材料となります。ですから、もし海へ溶け込む鉄が不足すると、海の植物が光合成を十分に行えず、大気から吸収する二酸化炭素が減ってしまいます。つまり、地

57. 名古屋大学博物館の特別展 「世界の発酵食をフィールドワークする」 は必見です

名古屋大学博物館をご存知ですか? 名古屋大学博物館は、名古屋大学のシンボル豊田講堂のすぐ横にあり、マッコウクジラの大きな骨格標本が迫力満点の博物館です。 名大博物館の企画展は、内容のクオリティはもちろん、一捻り加えたインタラクティブな見せ方やフレンドリーな関連イベントで、いつも多様な楽しみ方を提供してくれています。 そんな名大博物館で9月22日まで開催中の特別展に行ってきました。 第28回特別展「世界の発酵食をフィールドワークする」 3階の特別展展示室は、アフリカの

48. 方角を感知、渡り鳥のナビシステム

もうじきツバメがやってくる時季ですね。第48回目の今回は、渡り鳥が迷わずに目的地にたどり着く不思議に迫る研究です。 ポッドキャストでもお届けしています♪ ツバメのように夏を日本で過ごし、冬に南に移動する渡り鳥を「夏鳥」といいます。今回は、夏鳥の一種「オオミズナギドリ」に着目した研究です。 オオミズナギドリという名を初めて聞く方もいるかもしれませんが、バイオロギングという分野では世界で最も研究が進んでいる動物の一つだそうです。バイオロギングは、生き物を意味する「バイオ」と

47. ヨルダン遺跡調査続報 - 石器に見るホモ・サピエンスの応用力

こんにちは。理学部4年の小川詩織です。 今回は、ホモ・サピエンス繁栄の背景に、石の特徴を石器に活かす応用力が見えてくる研究をご紹介します。 以前に、ホモ・サピエンス拡散の出発点となったヨルダンの遺跡の発掘調査についてお届けしました。今回は、その続報です。 なぜホモ・サピエンスだけが人類として生き残ったか…。その有力な手がかりをつかもうと、名古屋大学などの研究グループが調査しているのが南ヨルダンの旧石器遺跡群です。その1つのトール・ファワズ遺跡の年代を約4万年前と推定した成

ホモ・サピエンス拡散の出発点、ヨルダンの遺跡で新たな発見 【42】

なぜ私たちだけが人類として生き残ったのでしょう… ヨルダンのトール・ファワズ遺跡の発掘から、私たちの歴史に思いを馳せてみませんか? (トップ画像提供:門脇誠二講師) 今回は、私たちヒト「ホモ・サピエンス」の歴史をひも解く、遺跡発掘に基づく研究をご紹介します。 発掘の舞台は、トール・ファワズという中東ヨルダン南部の遺跡です。アフリカで出現したホモ・サピエンスがユーラシアに拡散した出発点にあたる地域ですが、遺跡の正確な年代はわかっていませんでした。 そこで、名古屋大学の門

ご神木が倒れた原因は雨?風?それとも…? 【28】

2020年7月、豪雨で岐阜県にある大木が倒れました。 その本当の理由を探るべく、環境学の研究チームが動きました。 今回は、樹齢何百年にも及ぶ大木の倒木についての研究をご紹介します。 ↓ 音声でもお届けしています! 大雨や強風で、地域で大切にされてきた大木が倒れる…。自然災害の被害の規模が大きくなっている今、そのようなことが珍しいことではなくなってきています。岐阜県瑞浪市大湫町で、ご神木として町のシンボル的存在だった大きな杉の木も、その一つです。 2020年7月11日、

小惑星リュウグウの黒くて軽い岩は何を語る? 【9】

今回は、はやぶさ2が観測した、小惑星リュウグウの岩にまつわる新たな発見について、ご紹介します。プロジェクトには多くの大学や研究所が参加していて、名古屋大学もその一員です。 ↓ 音声でもお届けしています! コロナ禍一色だった2020年、はやぶさ2は明るいニュースをたくさん届けてくれましたね。リュウグウに着陸する瞬間や衝突装置で穴を掘るミッションを、息をのんで見守っていた方も多いのではないでしょうか。 そして今、はやぶさ2の光学および赤外線の高性能なカメラが捉えた画像から、