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名古屋大学 研究フロントライン

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ポッドキャスト番組「名古屋大学 研究フロントライン」をテキストでお届けします♪ 名古屋大学の最近の研究の話題を、週に1回、柔らかめのトーンで紹介しています。
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#工学研究科

あなたならどう使いたい? 「きっと楽しい」向こうが見える太陽電池

名古屋大学で太陽電池といえば「松尾研」です。よく屋根にのっている黒光りするアレを想像しつつ、ラボを主宰する松尾豊さん(工学研究科 教授)を訪ねると…、 開発中の透明な太陽電池とともに出迎えてくれました。確かに、左側は松尾さんの顔が透けて見えますが、右は透けません。 そこへ、大学院生の大岩詩門さんも登場。手にしているのは「最近の自信作」という透明な太陽電池です。 室内でもしっかり発電しています。 この太陽電池、透明の秘密は…、 「カーボンナノチューブ」です。 太陽電

プラズマ×農業=スーパー作物を作りたいわけではありません

今さらですが、名大研究フロントラインは、地下鉄名古屋大学駅を降りてすぐのNational Innovation Complex(通称NIC館)の3階から発信しています。 実はそのすぐ上の4階は、専用カードキーがないと入れないエリア。先日、ついにそこに入る日がやってきました! 名古屋大学低温プラズマ科学研究センターです。 ドアの向こうは約2000m²の広大な研究スペース。間仕切り壁がほとんどない空間に、実験装置がずらりと並びます。 名大が誇るプラズマ研究の長い歴史の延長

カーボンナノチューブ、低リスク化のキーは…微生物!?

夢の素材として大きな期待を背負うカーボンナノチューブ。人の健康や生態系へのリスクが指摘されていることは、どのくらい知られているでしょうか? カーボンナノチューブの安全性の確立が求められる中、堀克敏さん(工学研究科 教授)は、「生態系への影響や分解技術の開発は、私たちの研究力で貢献できるところ」と話します。 微生物、酵素、SDGsがキーワードの堀研究室。2023年6月には廃油を微生物で分解するプロジェクトについてお話を伺いました。 堀研究室とカーボンナノチューブの関連性に

それって本当にグリーン…? 疑問からうまれた最小サイズの人工金属酵素

「最小」というワードがどうしても気になり、前回の訪問からそれほど日を空けずノックしてしまった石原一彰さん(工学研究科 教授)の研究室。 石原さんが取り組んでいるのは「人工金属酵素」。自然界の酵素はかなりの優れものです。これを産業にも活用していくため、自然界には見られない新規の化学反応を触媒する酵素の研究開発が盛んに行われているのです。 1990年代後半に注目され始めたグリーンケミストリーに構想を得て、長年の研究の末、昨年12月に発表した最小サイズの人工金属酵素についてお話

触媒の匠、新作は薬の原料をつかむ“投げ縄”!

医薬品開発を加速するために、いかに新しい化学反応を見つけ、薬の候補を増やせるかが求められています。では、原子レベルの化学反応をコントロールするには、どうすればよいでしょう。石原一彰さん(工学研究科 教授)によれば、大切なのは「分子構造を五感で感じる」こと。 最近開発した触媒は、優れた医薬品になる可能性を秘めた「鏡合わせ」の分子を合成できる、と言います。新作と、それを作るワザについて教えてもらいました。 ── 鏡合わせの分子というのは…? 実は、分子によっては左右があるん

レーザーの新たなミッション「宇宙ゴミを大気圏再突入させよ!」

2023年9月25日の名大カフェに来てくれたみなさんに聞きました。 「宇宙ゴミ」のイメージは? 放っておいたらやばそう……みなさんが感じているように、宇宙ゴミ問題は深刻な社会課題です。これに「レーザー」で切り込む産学共同プロジェクトが進行中です。 佐宗章弘さん(名古屋大学 大学院工学研究科 教授・副総長)は、航空宇宙工学のスペシャリストとしてこのプロジェクトに参加しています。佐宗さんをゲストに迎え、宇宙ゴミ問題や回収技術の今を伺った第96回名大カフェ「レーザーの新たなミ

〇〇すると黒く見えるインク、どう使う?

「ちょっと変わった緑色の粒子を作りました。」 竹岡敬和さん(工学研究科 准教授)が見せてくれた、29 ✕ 29のマス目の画像です。開発した緑の粒子で塗られているのでしょうか…。ちなみに、1マスは2.8mm ✕ 2.8mmというサイズ感。明るいマスと暗いマスがあります。ここに、誰もがよく知っている模様が描かれているそうです。 が、よ〜く目を凝らしても、模様は浮かび上がってきません…よね? ところが、円偏光フィルターという特定の向きの光だけを通すフィルター越しに見ると…

大学×大学発ベンチャー×大手企業で、SDGs実現へ

2023年5月31日のことです。きんとも🦠起業家大学教授こと堀 克敏さん(工学研究科教授)がこんなつぶやきを発信。 「菌」への興味から、バイオ研究の道に進み、大学教授をしながら起業。新しい産学連携のしくみを開拓し続ける堀さんは、いったいどんな野望を抱いているのか…!? お話をききました。 <インタビュー概要> ── ハウス食品グループさん、住友商事さん、豊田合成さん、大手三社との産学連携ですね…!実現のポイントは? 本業である動植物油の分解技術の高さに加えて、名古屋大学

ミクロの仕組み、AIでアプローチ ─多結晶材料情報学の幕開け─

今回は、以前紹介した金属3Dプリンターの話題に続く、新しい材料研究のお話です。 多結晶材料学という分野をご存知ですか?少し目線を上げて周りを見わたせば、多結晶が必ず目に入る…スマホの液晶画面、セラミックスのお茶碗、太陽光電池パネルなどなど、実は多結晶は暮らしに欠かせない存在です。より優れた性能の多結晶の開発を目指す多結晶材料学に、AI(情報学)を活用していこうとする動きが、ここ名古屋大学で起きています。 今回お話を伺ったのは、宇佐美徳隆教授(工学研究科)と、工藤博章准教授

形だけじゃない!! 金属3Dプリンターで、”もっと強い”材料開発に成功

近年、3Dプリンターがものづくりの常識を大きく変えつつあります。実はそのアイディアは、1980年代に名古屋で生まれたといいます。それから40年経った今、名古屋大学では金属3Dプリンターの特性を利用し、金属の形状だけでなく”機能”もカスタマイズしようという研究が行われています。 そして最近、アルミニウムという金属を、身近でありふれる材料と組み合わせ、"もっと強くする” ことに成功したのが、工学研究科の高田尚記准教授の研究グループです。 研究の背景や成果のポイントについて訊き

49. 超伝導の起源にせまる! カギは「揺らぎ」

今回は、ツイスト2層グラフェンという物質の研究をご紹介します。理学部三年、髙山楓菜です。 ↓音声でもお届けしています♪ グラフェンを含めたナノカーボン分野は、名古屋大学が得意とする分野で、第45回でもツイスト2層グラフェンの別の研究をご紹介しました。 上の記事にもありましたが、ツイスト2層グラフェンは炭素原子をシート状に並べたものを2つ重ねて、わずかに回転させたもののことです。特に、回転させる角度を1.1度にしたものは魔法角ツイスト2層グラフェンと呼ばれ、超伝導が現れる

46. 発電効率も耐久性も!太陽電池の願い叶える「膜」誕生

こんにちは。理学部三年、髙山楓菜です。 私は新たな物質を作る、と聞くとワクワクします。 昨日まで世界になかったものが、今目の前にある。とっても素敵なことではありませんか?今回は、そんな新たな物質「酸化シリコン保護膜」を紹介します。シリコン系の太陽電池の表面を保護してくれる物質です。 ↓音声でもお届けしています♪ 太陽電池というのは、光が当たった時に内部の電子が動くことで電気を流しています。電気を多く取り出すためには、電子を多く収集しなければいけません。 現在の太陽電池

世界最大サイズができました!―Cのすごい構造― 【45】

今回は、今注目の新しい炭素材料の開発に関する話題です。 経済学研究科修士1年の堀内愛歩です。 今日は「超伝導」というキーワードが登場しますが、身近な炭素が超伝導体になるなんてすごい!と思い、このトピックを選びました。 ポッドキャストでもお届けしています♪ 炭素には、グラフェン、グラファイト、フラーレンなどと呼ばれる様々な同素体があります。例えばシャープペンの芯はグラフェンがたくさん重なったような構造をしたグラファイトでできています。 グラフェンは、炭素原子がシート状に

スター素材「ペプチド」を、特殊シリカゲルでキャッチ!【39】

新年おめでとうございます。 2022年初投稿は、食品や化粧品業界が注目する素材「ペプチド」の開発を支える材料研究に迫ります。 ↓音声でもお届けしています♪ ペプチドというと特別なものに聞こえるかもしれませんが、多くの食べ物に含まれていて、実は毎日食べているんです! そのつくりは、数個〜数十個ほどのアミノ酸がつながった鎖で、タンパク質と共通する部分もあります。特に、血圧降下や抗酸化作用など、体に何らかの作用を持つペプチドを「生理活性ペプチド」と呼びます。生理活性ペプチドは、