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卒業式後:備忘録

 日本語教師として、初めて学生を卒業させたので、今感じていること・今後も大切にしていきたいことを少し。

 この3月、私は初めて日本語教師として自分のクラスから学生を送り出した。学生にとって最後の目標である12月のJLPTが終わり、進学先も全員が見つけ終わった後は本当にクラス管理に骨が折れた。モチベーションがなくなる学生も多い。そうでなくとも、なんとなくクラス全体が引き締まらないと感じる毎日だった。そこから卒業の日まで、忙しさやストレスが私の視界に入るすべてで、正直なところ、卒業することへの寂しさを微塵も感じていなかった。けれど、実際に送り出した今、明日から学生たちが学校に授業を受けにやってくることはないという実感が沸き、子を送り出す親の寂しさを感じている。

 卒業式の後、私は学生たちのパーティーに誘われ参加させてもらった。そこで、3時間ほど学生たちと話し、彼らが何を思っていたか聞くことができた。
 まず、私のクラスには私を「ジュンキリ」「ジュンキリ先生」と呼ぶ学生がいた。ジュンキリは彼らの国の言葉で「蛍」の意味らしい。そして、そのパーティーの中で、どうして私をジュンキリと呼んでいるのか学生が話してくれた。学生曰く「ジュンキリはかわいい女の子に使う言葉。私は先生だけジュンキリと言います。」。学生たちはいつでも「かわいい」と言ってくれる。でも、今回はそれだけじゃなった。学生はこれに続けて「先生の授業は一番わかりやすかった。クラスが変わって先生になって、私はもっと上手になった。本当にありがとう先生。先生は私のお父さん、お母さんと同じ。とても大切な人です。だから先生がジュンキリです。」と言ってくれた。この国の学生は、父母、そして年長者に対する感謝の気持ちや尊敬の念がとても深い。それと同じように「先生」のことも心から大切にしてくれているのだと知った。また、彼らが年長者を敬うのは、年長者からの愛や施しが多いからだと私は知っている。それなら、私から学生たちへ彼らのために何かを与えることはとても重要になると思った。私は彼らからの感謝に見合うほどのものを与えられていただろうか。
 こちらから「彼らのために与える」気持ちは、きっと年々見えづらくなっていくに違いない。来年度から新たな学生を迎える。2年間彼らと向き合う中で、時々この気持ちを思い出して授業に臨みたい。

 そして多くの学生は「授業のことだけじゃなくて、生活のために必要なことをたくさん教えてくれた。だから簡単だった。ありがとう」と言ってくれた。文化もルールも全く違う国に来て、本当に大変だっただろう。教科書ベースの知識だけでは、アルバイトでも、日常生活でも困ることが多かったはずだ。今後も、少しでも学生たちの助けになることを教えていければと思う。


 
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最後に、パーティーはずっとダンスとお酒ですごい騒音だったけど、学生たちは思ったよりずっと紳士的で、いいパーティーをしてた…でもとにかく絶対に家ではパーティーをしないでほしいと思った。苦情が来るに違いない…


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