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〜無双そうで無双じゃない、ちょっと無双なFate〜 「 Fate/Samurai Remnant 」 プレイ感想(ネタバレあり)

はじめに

当記事はコーエーテクモゲームス『 Fate/Samurai Remnant 』のプレイ感想等をまとめたものです。物語の核心的部分を含む内容のネタバレがあります。プレイ予定のある方はご理解の上、閲覧をお願いします。

プレイ順序は「一条の光→可惜夜に希う(上→下で2周)→怨讐の焔」。
PS4版をPS4 Slim(SSD換装)でプレイ。
寄り道しながら105時間程度のプレイでトロコン済。




ゲームシステムについて

戦闘

タイトル通り、半無双みたいな味わいの戦闘システム。
沢山のザコ敵と、そこそこ強い敵が1〜数体。イベント戦闘の際はザコ敵がいないことも多い。範囲内の敵を全滅させるか、一定の条件を満たすかすれば戦闘が終了する。勝利した場合は経験値やアイテム等を得ることが可能だ。
主人公の宮本伊織はかの"二天一流"の後継者であり、武蔵の教えと自身の工夫によって、5つの型を切り替え使いこなして戦う(5つ全て使えるのは後半になってからだが)。素早い攻撃と広範囲の攻撃で集団戦に向く"水の型"、ガードやアーマーを有し強敵との戦いに強い"地の型"、魔術と剣を併用し怪異を滅する"風の型"、残り体力が少なくなるほど素早く強くなる"火の型"、超高速の居合により敵を圧倒する"空の型"。それぞれ適した場面があり、型を変えるとモーションすら様変わりするので、プレイヤーも飽きずに戦うことができる。
また、剣とは別に魔術を使用したり、サーヴァントの強力な攻撃で敵を行動不能にしたり、セイバーと息を合わせて特殊な攻撃を仕掛けたりと、その戦法は多彩だ。専用のゲージを貯め、消費すればサーヴァントを直接操作することも可能になる。通常の攻撃が通りづらい"外殻"を持った敵でも、英霊の剛力を以てすれば容易に砕ける。"外殻"を破壊したあとは伊織の攻撃も十分通るようになるため、強敵を相手する際はまず"外殻"を砕くことになるだろう。

サーヴァントの攻撃などで外殻を砕いてしまえば、通常の攻撃でもダメージが十分通る。

イベント以外の戦闘はマップ上で赤く表示される範囲に到達すると始まる。シンボルエンカウントとも少し違うが、望めばある程度敵を避けられるというのは共通。メインストーリー等のイベントで出現する敵は基本的に手強い相手が多いため、通常の戦闘で十分に経験値やアイテムを手に入れ、屋台で回復アイテムのおにぎりを買い込んでから挑むことになるだろう。

残念ながら怪異の肉はドロップしない。
戦闘中の主な回復ソースはおにぎりと魔術になる。

イベント戦闘の中では、敵陣営のサーヴァントと戦うことになる場面も多い。
サーヴァント(以下鯖と呼称)戦では、鯖が単体のこともあればマスターと共に向かってくる場合もある。基本的には鯖を倒すかある程度体力を減らすかすると戦闘は終了。「だったら鯖だけ狙っておけばいいのでは?」そう思った読者諸兄も多いかもしれない。もちろんそれでも問題はない。しかしこと聖杯戦争に於いては、マスター狙いも有効な戦術だ。マスターは魔術等で攻撃を仕掛けてきたり、鯖との協力技を放ってきたりする。そしてそのマスターはマップに設置された移動砲台などではなく、ちゃんとHPを持ったNPCである。つまりHPを0にすれば倒すことが可能だ。
マスターを倒すと鯖が弱体化され、十分な戦力を有した人間なら立ち向かうことが現実的になる。鯖が弱った隙に集中攻撃を仕掛ければ、仕留めるのも割合やりやすくなるわけだ。というか単純に相手の戦力が1人減るので、後方から殴られるリスクが減るのも重要な点の1つ。
Fateシリーズをよく知っている方なら、マスターを倒したときにそのまま鯖が消滅しないのは不可解かもしれない。最初は自分もそう思っていたのだが、どうやらこのFate/Samurai Remnantでは倒す=殺すという式が成り立たないらしい。主人公の伊織は不要な殺生は好まないようで、マスターを倒すといっても一時的に意識を奪う程度にとどめている。実際時間空けると復活してくるしね。よって、意識を奪ったことによって鯖-マスター間のパスが狭窄し、魔力供給が不十分になった結果鯖が弱体化するという感じなのだろう。もちろん敵はそんな手加減などしてくれないので、伊織のHPが0になることはマスターの死と鯖の消滅を意味するのだが。

霊地争奪戦

"霊地争奪戦"というのがこのゲームには存在する。
聖杯戦争を含めた魔術師同士の戦闘に於いて、霊脈の確保は重要な課題である。魔力は大まかに体内に存在する小源(オド)と世界に満ちる大源(マナ)に分けられるが、大は小を兼ねるとも言うように、魔力も大きいほうが強い。サーヴァントへの魔力供給、魔術の行使、あらゆる局面において魔力があるに越したことはない。だから、霊脈の魔力を確保するのが大事だったんですね。
前置きが長くなったが、ストーリーを進行する際に、強力な敵へ立ち向かうため霊脈の魔力を自身の支配下において自らを強化する場面がある。それをゲームの中に落とし込んだのが霊地争奪戦だ。
敵味方問わず、各陣営が通過した地点(霊地)がそれぞれの支配下に置かれるという単純なルールだが、なかなかどうして面白い。自陣営の状況と敵陣営の動きを見つつ、どう動けばより多くの霊地を押さえられるか考えるのはちょっとしたパズルみたいでいい刺激になった。敵の移動先も表示されるし、ユニット同士がかち合った場合の戦闘もそう厳しいものではない。いざとなれば礼装でのゴリ押しも可能と、好きな人から苦手な人まで対応可能な親切設計。(一部ストーリー上で移動先を指定・強制される不親切な部分もあるがチュートリアル的な場面なのでしょうがない)
なにより、強化された状態でボスに挑むことができるというのも嬉しいし、争奪戦の最後にはステータスの1つ(MAT)を永続的に上昇させられるのも素敵だ。各地の"はぐれ"たちとの共闘もワクワクするし、サムレムのメインストーリーを通常のバトルを一辺倒にせず飽きさせないための工夫としては上々ではないだろうか。

これだけ霊地を押さえると強化幅もそれなりのものになる。つよい。

育成

RPGとはいえば育成や強化。
このゲームでも様々な方向からの育成が可能で、レベルを上げたり、スキルを獲得したり工房を整えたり装備を変えたりと色々できる。全てを万全にしなければクリアできない、というものでもないが、ある程度整えておくと戦闘が快適になるのは間違いないだろう。

特に工房管理は金をガッツリ持って行かれるのでほどほどに。
写真では所持金が59文にまでなっている。

各項目についての記述。
RPGといえばレベル制がけっこうメジャーだと思う。
DLC実装前の時点では、レベルを100まで上げることが可能。割とレベルは上がりやすい。
レベル上昇によってスキルポイントを獲得でき、スキルポイントを使用して基礎能力を上げたり特殊能力を得たり。共鳴絶技や魔術を獲得することもできれば、攻撃をはじかれなくしたり回避性能を上げたりなどの技能の獲得も可能。まあ「よくあるやつ」ではあるのだが、やはり定番は面白いからこそ定番なのだろう。また、何の工夫もないスキルツリーというわけではなく、主人公の伊織くんは"五輪"の形、逸れのサーヴァントたちは各クラスのアイコンをなぞるような形になっている。それぞれの項目が集まって一つのシンボルを作り上げるというのは、星と星座の関係を思い出させてとてもロマンチックだ。

澄み渡る天の如く。

"工房管理"では直接的に能力値を増やしたりスキルを獲得したりというよりも、色々な部分を便利にしていくという側面が強い。秘剣ゲージの上昇量がアップしたり、屋台での買い物が安くなったり魔術拵を強化できるようになったり。管理においては相当の金が飛んでいくが、こつこつ強化していくとそれに見合うだけの恩恵はちゃんとある。まあこのゲームで金を得る目的って回復アイテムの購入か工房管理のためが殆どだし、工房管理に金を持っていかれること自体はさほど大きな問題じゃないが(個人の感想です)。

「魔術は金食い虫」という言葉を体感できたサムレム。
なお普通の魔術師は研究費用も必要になってくる模様。

魔術拵はRPGでの"装備"枠。能力値が上昇したり追加効果で戦闘に有利な効果を発動させたりと恩恵は大きい。途中からは能力値や追加効果を強化したりができるようになり、基礎能力を高めるも良し、追加効果の強化に特化しピーキーな自分だけの構成を汲み上げるも良しと、夢が広がる要素だ。ただ筆者はアイテム消費をケチってしまうタイプなので、ついぞ拵強化をすることはなかった……。適当に基礎能力値の強化幅が大きいやつを装備しているだけでなんとかなるゲームバランスが災いしたのかもしれない。DLCで更に強い拵が来るのではないかという気持ちにとらわれてしまったのが運の尽きか。あとはどのビルドが強いか・自分に合っているかを考えるのが苦手でね……。でも獲得品増加の追加効果は好き。
最初は人間離れこそしているものの、サーヴァントや大型怪異戦ではめちゃくちゃ強いわけではなかった伊織くん。ただ様々な強化を施していくと凄まじく強くなっていくのがとても面白い。どの聖杯戦争の主人公もそうだけど、期間中の成長速度が速すぎてもう笑っちゃうんですよね。強くなりすぎでしょきみたち。「男子三日会わざれば刮目して見よ」という言葉がここまでしっくりくるのも珍しい。……いや物語中に急成長する主人公多すぎて別に珍しくはない気がしてきた。でも登場人物が成長していくのは見ていてとても楽しいのでヨシ!

スキルコンプしたときに撮った伊織くんの能力値。
魔術拵の厳選とかしてないのでもっと伸びる。

育成に関してはとても楽しいのだが、不満……というよりは取るに足らない願望というか、がある。
例えばレベルとMATの上限について。
トロフィーコンプをするために周回をしていると、けっこうアッサリとレベル上限に到達する。霊地力によるMAT上昇も4周目序盤で止まってしまうので、もうちょっとレベル上限ほしいなーという気持ちが生まれるのは自然なことだろう。まあ上限上げすぎると兇剣でもヌルゲーになってしまうのかもしれないけど、やり込むときの楽しみがもっと欲しかったというか。FGOのレベル上限が(コインなしだと)100とかなので、そこらへんに合わせたのはあるのかもしれない。まあDLCで上限が上がる可能性もあるので、そこは期待したいところ。
あとは異愽を最後までクリアすると能力値+25くらいしてくれるとかのおまけがあればよりありがたかったなと。ただそれをやると、その能力込みで敵が強くなっていく気がするので良し悪しかもしれない。

霊地争奪戦はこのゲームにおける大きな要素のひとつなので、
正直霊地力によるMAT上昇はもっとあるものかと思っていた。

彫仏

仏像を彫ることで経験値を得ることができ、ミニゲームの成功度によって仏像の質や経験値の量も上昇する。

(事態は一刻を争うというのに、何故イオリはワカダンナの像を彫っているのだ……?)

成果物は巴比倫弐屋で売却することができ、このゲームにおける貴重な資金源のひとつとなる。前述の「工房管理」に凄まじい費用が必要となってくるので、謎のルーラー若旦那はパトロンとして有り難いことこの上ない。

伊織くんが何の木材を持っているのかは不明

それにしても、短期間にあれだけの仏像を彫れる伊織くんは、ある意味初期から空の型に至る片鱗を見せているといえるのかもしれない。
一体彫るのにそう大した時間をかけている様子はない。その上であれだけ見事な仏像を彫れるのは、もう才能とかそういう次元で語れるものではないような気がする。特に空の型に開眼してから作成可能になる(っぽい?)千手観音像。あれって熟練の職人が超特急でやっても1ヶ月はかかりそうなんだけど……?
これを上回るという話の男武蔵がどれだけ見事な像を彫れるのか、気になって夜も眠れない。

若旦那像は99体でフィニッシュ。これでも金策のため20以上は売っている

2024/02/12追記:
仏像の所持上限は消費アイテムと同じ99らしい。
つまり99超えた分の若旦那像がそれなりの数、闇に呑まれて消えていた……

共通ルート部分の感想とか

Fate定番の聖杯戦争でありながら、いつもとは時代も大きく異なる"江戸時代の聖杯戦争"。Fateにおける聖杯は基本ロクなもんじゃないが、今回もその通り。よく江戸時代に人工聖杯とでも言うべきものが作れたなとは思いつつ、ワクワクしながらプレイは始まった。

いつもの構図。
なんだかんだ見るとテンション上がる。

セイバーと運命の出会いを果たした、二天一流宮本武蔵の弟子――宮本伊織。我々が知る歴史とは異なり、彼はしがない浪人として暮らしている。
妹のカヤ、馴染みの同心助之進。
ありふれた、だからこそ尊い日常の中に彼はいたが、ある日突然聖杯戦争に巻き込まれてしまう――

という感じで物語が始まる。(正確には巻き込まれた場面からゲームは始まる)
「聖杯戦争に関してロクな知識もない状態で巻き込まれる主人公」というのはもはや定番と言っていいが、このサムライレムナントというゲームからFateを始めるプレイヤーもいる以上、事前知識がほぼなくとも世界に入り込めるというのは素晴らしいと思う。主人公に対する親近感も芽生えやすいし。
一方で、ほかの作品を意識したような表現も各所に見受けられる。既にほかの型月作品に触れているプレイヤーがニヤリとできる描写もいい。まあ、ランサーと若旦那の因縁とか、初プレイの人にはよく分からないかもしれない描写があったのも確かだが。でもあの2人が同じ時代、近くの場所で召喚されたらそりゃああならない方が不自然という感じもする。

見覚えがある気もするけど、寡聞にして"若旦那"という真名の英霊を存じない。
いつもの青タイツ。赤い外套のお兄さんがどこかにいないものか。

当然、ほかのFateを知らない人がプレイするも「意味が分からなくてお口ポカン」みたいな状況になる、みたいなことはほぼないと思う。
そのままでも意味は通るけど、シリーズ経験者には追撃が入るみたいな。

足止めするのはいいが――

聖杯戦争への所感について。
原典の冬木における聖杯戦争も大概おかしいのだが、この江戸和製聖杯戦争――"盈月の儀"もなかなかに不可解なものだ。
例えばマスターが死んだ結果ではなく、最初から土地に紐付けられた"はぐれ"のサーヴァントが召喚されているところ。しかもその数がやけに多い。更にその中には普通の聖杯戦争では呼ばれない裁定者――ルーラーが存在するのもなかなかだ。サーヴァントの数やルーラーの存在を見た限りだとApocryphaの"聖杯大戦"が思い出されるが、半数にマスターがいないこと、ルーラーがなぜか弱体化していること、これらを考えるとより異質に思える。
一方ではぐれ以外のサーヴァントに於いて、エクストラクラスがおらず基本7クラス1騎ずつで構成されているのも珍しい。ソースは忘れてしまったが、「聖杯戦争で基本7クラスのみの構成であることは珍しく、たいていエクストラクラスが少数混ざる」みたいな感じの記述がどこかにあった気がする。……いやまあ、これまで見た聖杯戦争ってだいたい基本7クラス揃ってた気がするけど。

それはそうとクラスのイラストが和風なのとてもいい。

前置きが長くなったところで本編の内容にも触れたいけれど、具体的なストーリーの中身についてはここで語り切れないので、特に印象に残った部分のみ語ろうと思う。

まずはなんと言っても、逸れのキャスター、キルケーについて。
まさか江戸時代に召喚されるなんて思ってもみなかったので、登場を初めて知ったときはひどく驚いた。

恐ろしく見事な隠形、私でなきゃ見逃しちゃうね。

というか個人的な偏見だが、彼女と逸れのバーサーカーだけ見た目が江戸に溶け込んでいない。アサシンも割と違和感があるにせよ、彼は虚無僧の姿で可能な限り自然にしようとしているし(自然だとは言っていない)。

偉丈夫の体育座りは絵面が面白すぎて困る。

それはそうと、キルケーといえば「料理に混ぜ物をして、食べたものを豚に変えた」逸話が有名だ。
サムレムの本編では、キルケーに魔術で魅了され、伊織くんが彼女の料理を食べてしまうことになる。
果たしてその伊織くんがどうなるのか、もはや言うまでもないだろう。

……イオリが豚になったー!!

ピグレット伊織の誕生である。
ある意味プレイヤーの分身とも言える主人公を豚にするというのは、なかなか普通のゲームで見られない光景だ。
ただでさえ新鮮な体験な上に、なんとこの状態で探索を行うことになる。

イケボでの「ブヒッ」は腹筋に悪い。

崖では放り投げられ、ジャンプすると小さく鳴き、薬草を匂いから探知することも可能になる。
坂道の下りでジャンプをするとポヨンポヨンと跳ねる姿も見受けられ、スタッフの遊び心と妙な熱意が感じられるだろう。工数もバカにならないだろうにこの素晴らしい出来、それを思うと得も言われぬ感覚にふと襲われる。なるほど、これが「えもい」という感情だったんですね。

もうちょっと丁重に扱ってほしい。
下りるときはちゃんと抱えられてダイブするのでヨシ!
神は細部に宿る。たとえ認識されなくともね。
紅玉の書が豚化したときの一幕。

もちろんつい笑ってしまうようなシナリオばかりではなく、決めるところはきちんと決める。盈月の儀は生半可な気持ちで勝ち残れるようなものではない。

Oh……

5章での連戦など、気が抜けない戦いの最たるものだろう。
ライダー主従との戦い、そして本性を表したライダー、丑御前との決戦。彼女の宝具を止めた後には、師匠との真剣勝負も待っている。
全てが死力を尽くした戦いであり、それらがシナリオとアクションの激しさでしっかりと表現されていた。
正直あれこれ語らずとも、盈月の儀という戦争の苛烈さは、プレイ済みの人ならばよく分かっていることと思う。故に多くは語らない。もしこの記事を読んでいるあなたが未プレイであれば、ぜひとも実際にプレイして「Fate/Samurai Remnant」という作品を味わってほしい。

上から来るぞ、気をつけろ!
宮本武蔵 VS 宮本伊織
残念ながらカルデアでは実現しそうにない。

また、ストーリーの合間に挟まる異愽もいい味を出していた。
メインストーリーである盈月録は基本的に慌ただしいので、異愽のシナリオで一呼吸入れられるのは個人的にとてもありがたい。サーヴァントたちからの依頼を受けたり、伊織たち以外からの視点を楽しんだり。各陣営やはぐれたちをより知る機会にもなるので、DLCで追加してくれると嬉しい。

手に入らぬからこそ、美しいものもある。
うちのバーサーカーは最強なんだ!

各ルートの感想

恩讐の焔

地右衛門が盈月を手にし、江戸城を中心に"地獄"を顕現させようとする。
妹のカヤが再び拐かされ、伊織にはどうあっても地右衛門を止める以外の道がない。

ランサー陣営は好きだし、地右衛門も憎めないキャラだと思うけれど、結局彼のことをいまいち理解しきれなかったなと。
彼が幼い頃地獄を見て、ひどく苦しい思いをしてきたのは分かる。ただ”復讐”と言いつつ、地上に地獄を顕現させて無辜の民を苦しめようとしているのがいまいち納得できない。地獄を引き起こした奴らに仕返しをしてやりたい、というならまだ分からなくもないんだけど。地獄の家族と会うために地上を地獄にするってのは復讐ともまた違うしなと。
どうにせよ、江戸の民、そして妹を犠牲にしようとした以上、倒すしか道はなかった。

江戸城くん……
江戸城入ってからマップでみんなから応援されたの正直とても嬉しかった。

ルートそのものの話からは少し逸れるが、地右衛門とランサーの主従関係には感じ入るものがあった。共に地獄へ墜ちてくれるというランサーの隣人愛。それを鬱陶しいと思うが決してランサーを嫌っているのではないというのが、可惜夜ルートの「お前はこっちに来るな」という発言から分かる。というか一部を除いて全陣営好相性だよなって。

隣人愛の極致

ラスボス戦はなんとなくすっきりしなかった。なんとなく動く壁を殴っているような感覚になって自分の好みではなかった。でもサムレムではほかにないタイプの戦いで、そういう意味では新鮮で興味深いものではある。ただ「倒してやったぞ」感を自分が感じ取れなかっただけで。
また、こっちのルートでは逸れのセイバーと深く関われるのもよかった。
てっきり悪鬼スレイヤーで猪突猛進型かと思いきや、ちゃんと話が分かる。まあセイバーだもんね。これがバーサーカーだったらちょっと分からなかったけど。共にライダーを倒すという目的を背負って協力しあうのはシンプルにワクワクする。一緒に戦ってくれるイケメン武将とか好きに決まってるですやんか。
それはそうと、このルートでキャスターさんがどうなったのかよくわかっていない。
このルート、自分の理解力不足を露呈させすぎな気がする。まあ理解しきれなくても面白かったからいいんだけど。

義仲様もカルデア来てくれませんか?

一条の光

同盟を結んだ友、鄭成功と敵対することになるルート。
正雪ルートとも言えるしドロテアルートとも言える。

鄭にとっても、かつての同盟相手と敵対するのは苦しい決断だったかもしれない。

寛永寺でアサシンが宝具を解放したとき、土御門を討つのではなくドロテアに加勢しに行くことを選択するとこのルートになる。

僕のデータにないぞ!

人間がサーヴァントに挑む無謀さは他のシリーズでよく分かっているので、上の選択肢を選ぶことはドロテア嬢を見殺しにすることとほぼ同義だった。さすがにそれは抵抗があったので、初回は下ルートを選択。同じような思考と行動に至ったプレイヤーは割と多いのではなかろうか。当然、土御門を討つことが聖杯戦争の終結につながるのも確かなので、結局は何を優先するかという話。目の前の命を助けようとするか、大局を見て多数の幸福を選ぶか。どちらも間違ってはいない。
ともかく、上ルートではドロテア嬢が死に、下ルートでは生存する。ステイナイトの言峰綺礼のように、あらゆるルートで死が確定しているよりはマシだと思いたい。
閑話休題。

魔術師2人だけで宝具を解放した鯖と戦うのは無謀が過ぎる。
上ルートだとドロテア1人で戦うことに。

このルートでは、ずっと敵対していた由井正雪と共闘することになる。最低限の宝石魔術以外は不得手な伊織くんなので、魔術師がパーティーに入るのはとてもありがたい。
シナリオ上だけでなく、ちゃんと決戦時は魔術で攻撃してくれたりするので、頼もしいことこの上ない。ラスボス戦で敵のチャージ攻撃を防いでくれたりもするので、彼女かキルケーあたりが同行しなければ全滅していた可能性が高い。というか死にかけであのレベルの防御魔術を行使できるあたり、さすが森宗意軒が手がけたホムンクルスと言うべきか。

個人的にこのルートで一番好きなのが、「温かな右手」のCG。
伊織に光を見出した、かつての敵。
勇気を出して握手を求めた正雪の表情がなんとも味わい深い。

言えたじゃねえか……

……まあ、だからこそ「その光はただの勘違いだった」という思考に彼女が至るあのルートを見ると胸が苦しくなるのだが。

ルートクリア後、ロード画面で最後の一文を見て背筋が凍る。



可惜夜に希う

伊織が本質、あるいは最上位の欲求である"剣鬼"としての本性を顕わにしたルート。
盈月を破壊せず、災いを残すことを選択し、セイバーと敵対する。

個人的には、「”もしも”の話としてはとても好きだけど、トゥルーエンドとして出されるとなんとなく釈然としない」というのが正直な感想。
話としては本当に好き。伊織がこれまで抑え込んでいた自身の至上命題を遂げようとするところ、最終的には満足して逝けたこと。そのものではないとはいえ、日本最古の大英雄と本気で戦っての敗北、しかもその人物こそかけがえのない友であったこと。伊織の思いを考えた場合、確かに一番いい終わり方かもしれない。
しかしどうしても、この終わりを認めたくないという気持ちがある。残された人々の思いは推し量るしかないが、決して望んだ終わりではないだろう。妹であるカヤが伊織の”本質”に気づいていたかはともかく、長年の付き合いである兄を若くして亡くすことが幸せだとは思えない。それに、プレイヤーである自分も彼に生きていてほしい。だからこの終わりはもしもの話であってほしいと願うばかりだ。
もしもの話。もし彼が、自身の渇きを抑えることをやめて、盈月を壊さなかったら、というあり得たかもしれない話、と自分は思いたい。
宮本伊織という人間は、満たされぬ渇きを抱えている。それでもなお江戸の世を守ることを是とし、盈月を破壊する。本質の欲求を抱えていながら平穏を良しとする姿こそ、真に尊いものではないかと。



諸国漫遊の旅

若旦那の異博を進め、彼の配下になることを選択するとこのエンドになる。
縮緬問屋を名乗る主とお供2人、諸国を旅しながら世に蔓延る悪党たちを成敗していく――――

ギルガメッシュ叙事詩の発掘すらされていないこの時代に、
印籠を見せたところで果たしてどうなるというのだろう……

サムレムの舞台は慶安四年、関係あるか分からないけどかの水戸光圀が23歳ごろ。隠居するのは60超えてからなので時代が合わないしやっぱり関係ない気がする。まだまあそもそも水戸のご老公は諸国漫遊の旅を実はしていなかったみたいだし本当に関係ないね!
若旦那はなんとなく千里眼とか持っていそうな気がするので、日本の時代劇でも見てそれを真似たとかなんですかね?
盈月の儀を放り出して若旦那の旅に同行するというエンドだが、そこまで悪くない気もする。伊織くんは各地の強者と戦えるし旅の中であの月夜の剣士に会える可能性もある。セイバーくんも伊織くんとの日常を続けることができる。オトタチバナさんは……まあ、くノ一枠としてなんとか。
それにしてもこのエンド、盈月の儀がどういう結末を迎えたかはなかなかに気になるところだ。抑止力がなんとかするのか、それとも剪定事象なのでどうにもならないのか。セイバーくんの現界はUBWのグッドエンドにおけるセイバーさんみたいな感じで、伊織くんの魔力のみでなんとかなっている可能性もある。

このルートなら伊織くんも満足できるかもしれない。

逆に、若旦那の勧誘を断ると彼との戦闘になる。
逸れの身、更に知名度も無。FGOとのコラボイベントによると「蔵の性能も落ちている」とのことで本来よりかなり弱体化しているが、それでも相当に厄介な相手だ。
対決の場所は鳥越神社。
余談だが、この敵対イベントと同タイミングで、逸れのランサーと戦闘の約束を取り付けることが可能だ。逸れのランサーは鳥越神社で待っていてくれるので、そこに伊剣と若旦那が来てどんな気持ちになるのだろうか。

倒すと若旦那が褒めてくれる。

その他の雑感想列記

各項目に入れるまでもない雑感とか。

難度は基本的に剣豪、3周目の可惜夜ルートだけ剣鬼でプレイ。
剣豪でも回復ケチってリトライを繰り返していたので、剣鬼がすんなりクリアできるはずもなく。
正直最初は「おにぎり連打するだけだし、まあなんとかなるでしょ」くらいの気持ちだった。甘かった。
レベル100でも即死にしてくる技もあるし、多段ヒットの技は1撃目を食らった瞬間におにぎりをキメまくらないとアウトなものも多い。「なんとなく全スキル取って挑むのは違うな」とかほざいて火の型のスキルくらいしかコンプせずに挑んでいたが、別にゲーム上手くもないのに慢心するとか身の程をわきまえてほしい。確か「別ゲーの『いくらパワーアップしても一撃でミスとなる究極の難易度』もリトライゴリ押しで0%クリアできたしへーきへーき」とか思っていた気がする。せめてBloodborneで最初のボスを完全初見かつ手刀のみでクリアするくらいしてから言ってもろて。
まあ全スキル取ってもリトライ回数はそう変わらなかった気がするが、起死回生・極くらい取っておいてもよかったんじゃないかな……
各強敵に応刀しやすい攻撃もいくつか用意されていたので、それを利用すればまあ自分程度でもゾンビアタックでクリア可能だったのが幸い。
更に上の難度、兇剣でクリアするのは自分じゃどう足掻いても無理だろうなという感じ。リトライ禁止なので、宮本武蔵戦・セイバー戦を二連続で突破しなければならない。ただ兇剣ノーダメージ攻略とかも上がっているあたり、できる人は普通にできるっぽい。コーエーテクモもちゃんと用意した難易度使ってもらって嬉しいやろなって。

ゲームあるあるだけど伊織くんはどこにあれだけの荷物を持っているのだろうか。しかもおにぎりは腐らないしどれほど強いダメージ受けても仏像は壊れないし。しかも一瞬で取り出せるので、ドラえもんの四次元ポケットもびっくりな性能をしている。これがSamuraiのFutokoro……!

デジタルサントラとアートブックを別端末で聞いたりできないのが不便。まあPCとかで開けるようにすると違法アップロードの原因になるのかもしれないが……。ただトレジャーBOXについてるCDの中身を上げようと思えば上げられるので、そこが理由ではないのかも。
ただ、先日サウンドトラックの発売が決定したのでとても嬉しい。発売まで少々遠いのがネックだが、それでも好きなところでサムレムの劇伴や主題歌を聴けるというのがとても嬉しい。
できればDL販売もしてほしいと思う今日このごろ。

全体的な感想

めちゃくちゃ面白かった。
元々、ゲーム面は正直あまり期待していなかった。しかしやってみると作り込まれていて楽しい。
そもそもこれまでのノベル系じゃないゲームで追体験できる聖杯戦争は、普通の(?)聖杯戦争みたいなのがあまりなかった。月の聖杯戦争はタイマン続きだし、FGOはそもそも聖杯戦争じゃないし(ストーリーによっては聖杯戦争っぽいのもあったけど)。ある意味タイころとか花札とかが一番普通に聖杯戦争してたかもしれない。あとはアンコ。なので、一見普通っぽいバトルロワイヤル形式の聖杯戦争を追体験できるというのは得難い経験。
ストーリーも先がなかなか読めない展開で、飽きずに最後まで進められた。ただ、未だに謎は多く、ここらへんはDLCとマテリアルを紐解けば回収できるかなという感じ。
アクション面はなかなか爽快感があってグッド。色々な型を切り替えて使い分けたり、ときには魔術を使ったりサーヴァントの力を借りたり、はたまたサーヴァントを直接操作できたりと、”Fate”のゲームとしてはおおよそ現時点でのほぼ最高値を叩き出せているのではないかなと。また、難易度系のトロフィーなどはないということで、難しいときは安心して難度を下げられるのも嬉しい設計。自分は主に剣豪でプレイしたが、ほかのゲームで言うハードモード相当なだけあってなかなか難しかった。回復を徹底して挑めばそこまで苦戦しないのだが、つい「まだ回復しなくてもいける」と慢心して被弾しすることが多い。剣鬼まではリトライ機能も使えるので、何度も挑戦して動きと対処法を覚えていくというアクションゲームの醍醐味を存分に味わえる。ただリトライでも直前から再開できるときと直前の会話が入るときと連戦の最初からやらされるときがあるので、忙しい読者諸兄がサーヴァント戦等に挑むときはちゃんと備えておくことをおすすめしたい。リトライし続けると際限なく時間が溶けていくのでね……
アクション苦手でも初心選んでおにぎり食べまくっていれば普通に進められるので、そこらへんの救済措置があるのはそんなにゲームが上手くない人間としては助かる。吹っ飛ばされながらでもおにぎりを食べられるので、ちゃんと食べてればまず死なないし。屋台で売られているおにぎりの数には制限こそあるものの、章をまたげば在庫も復活するし雑魚狩りでドロップしたりもするし。ただ、屋台の在庫復活はゲームに慣れていないと分かりづらい気もするので、在庫制はなくてもよかったのではないかとも思う。まあどうしてもクリアできない場合は雑魚戦でひたすらレベルを上げて装備を整えて相手の攻撃をある程度回避して危険な攻撃は中断させて――とやっておけばなんとかなるはずなのでまあ。
難しいのを楽しみたい人向けにも剣鬼や兇剣といった高難度があるのは安心。兇剣に関してはリトライやおにぎり使用不可ということで、よほどアクションに自信がないと難しいだろうなと。ソウルシリーズとかの経験者なら普通にクリアできたりするんですかね?
あとはRPG要素もとてもよかった。スキルを獲得したりレベルを上げたり新しい型を獲得したりで伊織くんがどんどん強くなっていくのが快感。最初はサーヴァントと切り結ぶのが無謀な感じあったのに、後半は割と現実的になっていくあたりがとてもいい。ただし鍔迫り合いは負ける。レベル上げにスキル獲得、工房管理に魔術拵。強くなれる要素が山ほどあってオラワクワクすっぞ! 
山吹さんの依頼は全部クリアしてから1周目の最後で報告しようと思ったけど、赤坂の万屋と屋台で買い物をしていなかったので不可能に。まあ2周目で回収できるからいいんだけど、ストーリー進めるとサブクエ達成できなくなるのちょっと悲しい。総玉蓮さんに至っては1周目の終盤にはもう話しかけられなくなっているし、彼女の依頼も1周目での全クリは不可能だった(というか1周ごとに出現数が限られている怪異がいるっぽいのでそもそも数周しないと無理)。助之進のやつは全部クリアできてよかったが。ただ魔術と秘剣が大変だった……魔術は逸れのアーチャーから教えてもらった奥義がとても役立った。
プレイ時間は1周だけで55時間超。4周して100時間超。自分がリトライしまくったりずっと寄り道してたりしたのが原因の一つだが、それにしても時間がかかる。
割と1周あたりのボリュームが多く、かつ分岐も割とあるのでトロコンにはそれなりの根気が要る。面白いしやりこめるのはありがたいのだが、もうちょい周回しやすくしてくれたらなあというのが正直なところ。特に吉原みたいに広い場所はちょっと移動するのも大変なので、複数トラベルポイントを備えてくれればよかった。あとストーリー上でちょこちょこ移動するが、そこそこロード時間があるので換装なしのPS4とかSwitchは大変だろうなと。PS4 Slimだとちょくちょくカクついたりもしていたので、NVMe SSD搭載かつ処理性能の高い、高性能PCやPS5向けのつくりだったりするのかもしれない。 プレイ時間は前述の通りだが、毎周異愽に余さず通ったりしていたので、効率的にやればもうちょっと短く済むのかなと。

色々と書いたけれど、総合的に見るととてもいいゲームだった。
DLCエピソードも楽しみだ。

出典など

ゲーム:
Fate/Samurai Remnant - TYPE-MOON/コーエーテクモゲームス, アニプレックス

フォント:
ステッキ
(サムネ作成に使用)

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