吉田という男
西加奈子の「地下の鳩」。
そこに出てくる「吉田」という、40歳のキャバレーの客引きの男性が、一目惚れをした人に似ていて、動揺してる。
40歳。脆くて、弱くて、栄光の記憶にしがみついて。でも、そんな弱さを見せないように立居振舞って、自分を大きく見せようとする姿が、自虐的で、恥ずかしくて、可愛くて、めっちゃ人間くさくて、まっすぐで、正直で、眩しい。
そんな主人公が、大好きだった人に似てる。ちょっとだけ。
「僕にも定期的に連絡をとって飲む女性がいて、でもその女性は結婚をしていて。あ、子どもはいないんですけど離婚することもないみたいで。そういう、よく飲む女性がいるんですよね。べつに体の関係があるわけじゃないんですけど。」
思い切って告白した結果、はにかんだ40歳男性からの答えがこれ。要するに、彼は既婚者の女性に叶わぬ恋をしてるらしい。
かすかに雨が強くなり始めた、初夏の深夜だった。
いつか彼に言われた言葉を思い出す。
「僕って、めっちゃヒューマンじゃないですか。」
そのときは失恋のあとで「ハハ」って、乾いた笑いしかできなかったのだけど(「だってパーフェクトっすもんね」くらいの返しができてたら。と今になって)
ただ1つ、今だから思うのは
自分の感情に嘘つけなくて恋心に蹴りをつけれてないし。適当な理由をつけて振ればいいのに、聞きたくない理由まで話してくれて。かなり不恰好で、究極にダサい返事をくれた。
今思えば、彼は確かに人間臭くて「めっちゃヒューマン」だった。
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