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Mojito.2020.8.29

夏の記憶によく似合う。ミントとライムと、氷のカラコロいう音。

日ざしがものすごい。ひなたを歩くだけで、溶けるでもなく、焼けるでもまだ済まされない、照射されているような感覚。ただでさえそれなのに、四川麻婆豆腐を食べたあとの体温となれば汗というより齧り付いた小籠包から肉汁が溢れ出すようにべったりと体にまとわりつく液体、マスクの下は鼻からくる風邪をひいた上にクシャミした直後みたいになっている。肘関節の窪みに鼻を当てるようにして時折拭い去る。あーーーーーーーーーが頭の中を支配してそもそもが適性検査注意力Eの人間から更に視野を狭め取る。「かき氷食べ行こうよ」のご提案に了承してコメダコーヒー。狭い階段の横、氷ののぼりと店員募集の張り紙。片付けまで手が回らないせいで列がじわじわと長さを増やす。じりじりしてきた数段下のおばさん「席は空いているのにねえ」と階上にも届く。白桃のかき氷ひとつを四人でがつがつ分ける。秒でなくなる。コーヒーについてくる豆菓子がおいしいのだ、と右隣の友人。斜向かいはスマホを横にしてサッカーしている。正面はツイッター漫画。「そろそろ行くか」

ワリカンするとかき氷は170円。昼飯はひとり1700円くらいだったから落差。小銭持ってないやつが少しずつ多めに払っていくと、のこり一人がタダになってしまった。駅まで向かううち、40分後の映画を経路1で徒歩32分かかる映画館まで見にいくことを決意。友人ひとり着いてくる。のこり二人はじゃあね。日影を選ぶようにしつつ、友人がそこここのコンビニに寄ってマスク探してたら、ちょうど40分後に映画館についた。チケットカウンターで判明する現金の無さ。「あの、じゃあカードで……」「現金のみとなっておりまして」

財布をひっくり返してもあと300円足りない。ここまできてうそだろ、とおろおろしていると、映画館の管理人さん「下の券売機ならカードお使いになれます」と助け船をくれた。予告が始まったあたりでシートにうずもれる身体。友人は斜め前の座席にかけた。

上映時間をよく確認していなかったけれど実は3時間映画で、友人「ゴッドファーザーじゃん」エンドロールもわりと長くて、幕切れは長編小説を読み切ったあとくらいのふわっと感だった。思い出した映画をぽつぽつ話しながら歩く。世界はすっかり日暮れの明度。出だしは『冬冬の夏休み』雨の部分は『パラサイト』何度となくオススメしているのだが『クーリンチェ少年殺人事件』を見るようにまた伝える。何事もサクサク展開モノが好きな友人としては手が出しづらいのは承知の上。駅についてじゃと別れ帰宅する。坂道の脇にしげる雑草は逆光てき真っ暗さ、背後のちいさな盆地的くぼみの民家たちの窓のひかりは際立ちはじめ、空の色うつくし。ちょっとでかく見える太った半月が家の隙間からにゅっと顔だし。夕風に吹かれてなお背中に垂れる、マスクをひたす勢いの汗。分厚い綿のシャツに水気ぶんのおもたさ。

そんないちにちにはモヒートだ。というより記念すべきカクテルメイキング初日はぶっちゃけ簡単なやつがいい。

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採取したあと放置・ゴロゴロしたせいでへたったミントと、ラップかけずに冷蔵庫に1日入れといて若干ひなびたライム。ブラウンシュガーは無いからシロップで代用。ラムと炭酸水を50mlずつというから、あの漏斗ふたつ繋げたみたいなオシャレ計量器で確かめてぼたぼた落とす。コレジャナイ感あふれる作業を経て

感想:ちょっとあますぎた.水っぽい.ミントが絶対に少ない.キンとする冷たさがない,やり方はそもそも合っているのか??

とこれは現実に存在する赤いノートにも書きつけてある。バッキンガム宮殿の公式グッズで、小口が金色をしていて、スピンはラプンツェルの髪の色みたいで、真っ白な各ページのボトムにBuckingham Palaceと流麗な字体で、でも目立たないダークグレーで印字されている。ここにチェキで撮ったなんか貼ったらおしゃれかな、と思って数年振りにライトブルーのころっとしたinstax mini7を起動したけど、フィルムの値段を思い出したのでもうやらないと思う。


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