ふわり、初めましての春
花見
パパが張りきってレジャーシートを
広げるみたいに、
朝は絹色の時間を敷いていた
見上げた主役は 喉から乾いた手を伸ばして
渇望していた
確かに何かを欲しがっていた
浴びたい、羨望を
あなたが立っているだけいいわ
満たしたい、この空腹を
私のお弁当ならあげない
菫の砂糖漬けを詰めてきたの
欲しい、穏やかな明日
目を瞑るだけでいいわ
宙に浮いた言の葉
轍にひらり、後を濁さない
手放された白い花びらは
星の粒のように永遠の時を打つ
全部持っているじゃないか
欲張りだな
甘いかおり
ずん
腹に流れてくる
春はもう満ちているじゃないか
みなさん、こんにちは、こんばんは。
たけだです。
まだ、夏に片足を突っ込んでいたあの頃。
私は、「花、雨、夢、幻、美容院」という作品(と言えるのかは分かりませんが)を書きました。
その冒頭でふわっと詩を詠ませていただいたのですが、ようやく決定版が完成しました。
何ヶ月もかけて修正しては書き直し、悩んでは元に戻し、、を繰り返しまして、この愛おしくて可愛い私の詩が誕生しました。
「絹色の朝」って、かなり気に入っています。
朝って、世界中が薄い絹を広げたように白んで見えます。
夜が明けるにしたがって、縦と横の編み込みが解けてゆくように、ゆっくりゆっくり時間が溶けてゆく。
朝日がやけに眩しくて、泣いたあとのように、まつ毛を濡らしたあの夜のように、薄ら目は静かな朝焼けを捉えます。
そんな、あまりにも素敵な時間があります。
「桜を見に行こうか」
パパは張り切ってレジャーシートで場所を取りますね。
みんなお弁当を持って、今日の主役を見上げます。この空間の全ての眼差しを集めて、注目を浴びて、凛と立っている。
全てを持っているような、既に満たされているような、そんな貴方でも、まだ欲しいものがあるのでしょうか。
乾いた手を伸ばして、これ以上何を求めているのでしょうか。
風に吹かれる度に桜は私とお喋りをしてくれます。クスクス、クスクス。楽しげですね。
羨望が浴びたい、空腹を満たしたい、穏やかな明日が欲しい。桜はお喋りです。
私たちは、二度とない一度目を見ています。
来年もここに桜の花が降るでしょう。でもそれは今日この日と同じ桜のようで、二度とない一度目なのです。目の前の世界は移り代わってゆくのです。
だから、そんなに欲しがらなくてもいいよ。
今日持っているものも、明日にはどうなるか分からない。昨日持っていたものも、今日なくなってしまうかもしれない。
立つ鳥はいつだって跡を濁さない。轍に落ちた花びらが、軽く風に吹かれてゆくように。
今この時を自分の中に閉じ込めなさい。
見上げた花びらの空を、閉じ込めて、ずっとずっと留めておくのよ。星の粒が何光年も先から、あの場所に飾られているように、ずっとずっと。
今を抱きしめて生きなさい。
私は何も持っていません。
だけどこれで良い。
腹に流れてくる甘ったるい匂い。
これだけで充分よ。
まだまだ春は遠いけれど、いつか必ず来る初めましての春を夢みて。
今日も独り言にお付き合いいただき、ありがとうございました。
素敵な一日をお過ごしください🎐
またね(^-^)
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