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虚実 -便所の百ワット- 【旅日記】

もう5月、ゴールデンウィークだと言うのに、東北の風はまだまだ冬の抜け殻が残っていた。

いや、寒いのはそれだけでは無い、たぶん、

だだっ広い更地の造成地、その片隅にある道の駅に車を停め、海岸と思しき方向に歩みを進める。遮へいするものが無いからか、車から降りると急に風が強くなったように感じる。

あぁ、いままでは松並木が風を防いでくれていたのだろう。現実離れした景色に、呆然としながら歩みを進める。「ココニイテハイケナイ」。耳の後ろ、うなじの辺りがチリチリと逆毛立つのを感じる。

◇◇

虚なのに、何かが充満している。

赤、橙、黄、緑、青、藍、紫・・世の中にある色を混ぜると灰色になると言う。喜、悲、嬉、怒、笑、哀、楽・・大量の感情を混ぜ合わせると、何色になるんだろう。

ここには大量の感情が充満している。


◇◇

感情に押しつぶされそうだ。

今は、もう生命を宿していない『一本松』。近づいて見上げると、感情が溢れ出てくる、涙が頬を伝う。悲しい涙でも、恐怖でもない、圧倒的な何かだ。初めての感情で、どう振る舞ってよいかわからない。涙が自然と乾くまで、見上げたままそこを離れることができなかった。


アリガトウ


◇◇

感情の嵐が止み、雲の合間から太陽が見えてくる。
車の停めてある道の駅へ戻ろう。帰り道は、何だか体も心も軽くなった。

りくぜんたかた

この年、オイラたちは岩手県海岸線縦走の旅をしていた。北の久慈から、宮古、釜石を経て、陸前高田まで辿り着いた、一週間の旅。震災から6年経った2017年のことだ。鉄道の駅舎、道路、堤防、見る景色すべてが真新しいコンクリートで固められた町並み。復興は着実に進んでいた。
旅の目的のひとつに、復興支援があった。小さなことかも知れないが我々が訪れ、食事を頂き、楽しむことでお役に立てればと思っていた。

そんな気分で、最後に「奇跡の一本松」を、、


えっ!


陸前高田、かつての通行規制区域に入ると景色は一変、いまだに何もない黄土色の更地が広がっていた。同時に血の気が引くような感覚に襲われた。まだ、来ては行けなかったのか・・・?

◇◇

駐車場に戻る途中、プレハブの売店があった、中を覗く。これが「八木澤醤油」との出会い、「奇跡の醤(ひしお)」との出会いだ。醤油蔵ごと何もかも津波に流され、ゼロ状態いやマイナス状態から復活した「奇跡」の物語があった。

醤油を購入して、道の駅でラーメンを食し、一路愛知県の我が家へGO! 
800キロの帰路(キロ)だ!


◇◇

旅日記は、ここまで、 話は変わる。

この旅日記を書くきっかけになった、皆さんの記事と、この時「八木澤醤油」で買った本の紹介をします!(なぜ、醤油店で本?)

**

ひとり目は、料理家「いこまゆきこ」さん
チャリティ食事会、「旅して応援」ツアーに参加するなど、足で災害支援活動をされており、共感するとともに今回の岩手旅行を思い出した次第です。

続いて、本の紹介

とにかくオススメ
まず、筆者「竹内早希子」さんが陸前高田の人々に惚れ込んでます。被災者、関係者の方々との信頼関係が無いと、ここまでの話を聞き出せないはず。
震災当日の話はともかく、奇跡的に醤油が復活できた経緯。震災前にボンボン社長が苦悩して社員との信頼関係を築けていたからこそ、難局を乗り越えられた奇跡。色んな奇跡が縦糸横糸として織り上げられ、デビュー作とは思えない逸品。
ビジネス書として読んでも面白い。

付録というと井上さんに叱られてしまいそうですが
この本の主役、八木澤商店の「河野通洋」社長が井上さんとダブります。こんな記事があったからでしょうかね。(^。^)


◇◇◇

最後に、今回のお題「便所の百ワット」について

紹介した本の中の言葉(八木澤商店の方々の言葉)です。

「無駄に明るい」

暗い所でも明るく生きましょう! 


私も、無駄に明るく。
周りを明るくできる存在でありたい。


最後はやっぱり「トイレネタ」 笑


(おしまい)

最後まで読んで頂き、ありがとうございます😊 コメントも、励みになります。是非どうぞ! サポートは、旅先でのお酒に・・