母が作ってくれた朝ごはん(初めて海外へ旅立つ日)

私が初めて海外へ行ったのは、20歳の夏。
大学の短期語学留学の為だった。

出発の朝まで、バタバタとしており、朝ごはんのことなど考えてもいなかった。

大学生になり、履修した授業の関係で、決まった時間に出かけることがなくなり、朝ごはんを母に用意してもらうこともなくなっていた。

私は比較的、環境が変わると体調が悪くなったりすることがあり、
短期とはいえ、外国へ行くことに両親はあまり賛成をしていなかったが、
私がどうしても行きたいとアルバイトでお金を貯めたので、
仕方なくいかせてあげよう。という感じだった。
父は、仕事の関係でニューヨークの郊外へ1年ばかり勉強のために留学をしていたが、その当時は楽しかったけれど、危険が多かったらしく、かなり心配していた。

私は、飛行機に乗るのも初めてな上に海外も初めてで、緊張していた。
若さゆえの好奇心で、海外へ行きたいばかりだったが、出発間近1週間前になると出発まで、やはりドキドキしていた。

そんなこんなで出発の朝。

朝ごはんも忘れていたところ、母が
「ご飯を食べていきなさい。」
と用意をしてくれていた。

・炊き立てのご飯
・焼鮭
・玉ねぎとお豆腐とわかめのお味噌汁
・卵焼き


炊き立てのご飯を一口ほおばると、本当に炊き立てであっつあつだった。
焼鮭は甘塩で、私の好みの塩加減。箸を入れるとほろりと身が崩れた。
卵焼きは、母方の味で少し甘い。
お味噌汁は、ご飯のおかずにもなるような少し濃いめに味噌を溶いたもの。

仕事が忙しい母が手間ひまかけて、すべて朝から作ってくれた朝食を食べながら、ありがたい気持ちでいっぱいになり、涙が目ににじんだ。
若かったので見られたら恥ずかしいと思い、泣くのを我慢した。

25年前の話である。

私は、親の愛情をたっぷりと受けて育っていたが、こういったどこかへ初めて出かけるときなどは改めて親の愛情の深さを感じていた。
(その時々で、親の愛情表現は変わるけれど。)

この朝食もその思い出の一つだ。

多分、私はこの朝食メニューにどこかで出会う度、自分で作る度にこのエピソードを思い出すだろう。
そして、将来自分の子供や家族にもそうしよう。と思ってきたが、結婚していた間は子供に恵まれず、今現在、朝ごはんを作ってあげる家族には恵まれていない。

ありがたいことに両親は健在だが、私の料理は好みに合わないようで、作るといってもあまり好まれない。笑

人生のうち、思い出に残るごはんがある。というのは生まれてきてよかったーと思えるうちのひとつかもしれないな。と思った。

お写真は、yamshita0129の作品を使用させて頂きました。
ありがとうございます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?