春は苦い物を食べよ
2021年1月第3週の食とココロの処方箋。
今週1月17日から、「冬の土用」に入りました。
まだまだ厳しい寒さですが、冬から春へと移り変わっていく期間。
日も少しずつ長くなり、これから春に向かって行く様が感じられます。
再びの緊急事態宣言となりましたが、
心と体のメンテナンスをしながら乗り切っていきたいですね。
《コーナー①》
最初のコーナーは、「四季折々の食事と健康」。
この番組では、「医食同源」をテーマに、
日本の四季と旬の食べ物・その季節にお勧めの食べ物を紹介していきます。
今週の暦です。
一年を24に分けた二十四節気と、
さらに三分割して72に分けた「七十二候」をご紹介しています。
小寒・大寒
二十四節気は、
1月19日までが「小寒(しょうかん)」、
20日からは「大きい」に「寒い」と書いて、「大寒(だいかん)」に入ります。
1年で最も寒さの厳しい時期、今年は寒波や大雪で特に厳しさが増しています。
体調の変化や事故も多くなりますので、お気をつけください。
雉始雊・款冬華
七十二候は、
1月19日まで「雉始雊(きじ はじめてなく)」、
20日から24日までは「款冬華(ふきのはなさく)」、蕗の薹が顔を出す時期。
「寒の内」と呼ばれる最も寒い時期ですが、雪の間から顔を出す蕗の薹が、春が近づいていることを教えてくれます。
暦の上では「立春」が春の始まりであり、旧暦の1月、1年の始まりでもあります。
節分
「立春」の前の日が、「節分」。
「節分」は、雑節の1つで、「季節を分ける」という意味があります。
本来は、春夏秋冬それぞれの季節の始まりの日、
つまり立春・立夏・立秋・立冬の前の日のことですが、
江戸時代頃からは特に「立春の前の日」を指すようになったようです。
「節分はいつか?」と聞かれたら、2月3日と答える方が多いのではないでしょうか。
ここ何年も、節分は2月3日、立春は2月4日でした。
それが今年、2021年は、2月2日が節分、2月3日が立春となっています。
ちょっと聞き慣れない感じがしますね。
124年ぶり
国立天文台によると、
節分が2月3日以外になるのは昭和59年(1984)の2月4日以来37年ぶり,
2日になるのは明治30年(1897)の2月2日以来124年ぶりのことだそうです。
立春は、二十四節気の1つなので、
毎年何月何日と日付が決まっているわけではありません。
地球が太陽の周りを1周する1年は、実際には365日より6時間弱長い、365.2422日。
実際の1年が、カレンダー上の1年よりほんの少し長い分、
毎年少しずつずれていくんですね。
1年で6時間弱、4年経つと約1日のずれになりますから、
4年に1度、閏年(うるうどし)を設けてこの差を調整しているのです。
閏年に、2月29日という1日=24時間を加えて366日にすると、
今度はちょっとだけ多すぎてしまうので、
やはり長い年月の間にはずれていってしまいます。
そのために、今年は立春の日付が1日早くなって2月3日となり、
前日に当たる節分も、1日早い2月2日になるというわけです。
詳しく知りたい方は、ぜひ国立天文台のHPをご覧ください。
「節分の日が動き出す」という記事と併せて、2012年の秋分の日の記事を見ていただくとわかりやすいと思います。
Youtubeとnoteにはリンクを載せておきますね。
(https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/topics/html/topics2021_2.html)
蕗の薹
今週の食材は、七十二候に登場しました「蕗の薹(フキノトウ)」です。
実際に出回るのは、2月~3月頃と、もう少し先が多いでしょうか。
フキの蕾の部分で、ほろ苦い、早春の山菜として知られています。
この苦み成分は、「ケンフェロール」と「アルカロイド」、
香り成分は「フキノリド」。
冬の間に滞った新陳代謝を活発化させて、食欲を増進させたり消化を助けたりする働きがあります。
冬眠から目覚めて穴から出てきた熊が、最初に食べるのがフキノトウなんだとか。
春は苦い物を食べよ
昔から「春は苦い物を食べよ」と言います。
暖かくなって活動的になる春に備えて、体を整えておくための知恵ですね。
本能的にわかっている動物のすごさを改めて感じます。
他には、抗酸化作用のあるビタミンE、カリウムなどのミネラル、食物繊維が含まれています。
私は、天ぷらや蕗味噌で食べるのが好きです。
おひたしや和え物などの和食だけでなく、イタリアンやフレンチにも取り入れられていて、オリーブオイル、チーズ、バターとの相性もいいようです。
フキノトウの苦み成分アルカロイドは、
「ピロリジジンアルカロイド」という天然毒でもありますので、
下茹で・あく抜きをすること、大量に食べ過ぎないことなど、少し注意も必要です。
あく抜きをすれば含有量が減り、安全に食べられることがわかっていますので、早春の味覚を楽しんでみてはいかがでしょうか。
「冬の土用」
次のコーナーです。
今週のテーマは、「冬の土用」です。
1月17日から「冬の土用」に入りました。
土用というと、夏の「土用丑の日」が最もよく知られていると思います。
頭に「う」の付くものが良いということで、鰻を食べる風習がありますよね。
土用は、夏だけではなく、春夏秋冬それぞれの季節の変わり目のことを指しています。
中国から伝わった陰陽五行説を基に作られた雑節で、日本独自のものです。
「四立(しりゅう)」と呼ばれる立春、立夏、立秋、立冬の前の約18日間、
季節の変わり目が「土用」。
今年は、1月17日から2月2日までの17日間です。
土用とは
全てのものを「木火土金水(もく・か・ど・ごん・すい)の五元素に分類する五行説では、春・夏・秋・冬のそれぞれの季節に、木・火・金・水が当てられていています。
残る「土」は季節の変わり目に当てはめられ、
次の季節のエネルギーに変わっていく移行期間=「土用」と呼ばれるようになりました。
五行説では、それぞれの季節に色も当てはめられていて、冬は黒(玄)。
太陽の力が弱まり、自然界では多くの植物や動物が活動を休止して、
春の再生に向けて眠りについている時期でもあります。
冬から春に移り変わる冬の土用は、活動期に向けて体を目覚めさせ、
準備を整える時期と言えます。
冬と反対のエネルギーを持つ夏の色は赤(朱)。
冬の土用には、反対のエネルギーを取り込むために、
赤い物を食べると良いとされています。
夏の土用が丑(うし)の日なら、冬の土用は未(ひつじ)の日。
頭に「ひ」のつく物も良いとされていますが、
土用丑の日の鰻のように定着したものはなさそうですね。
緊急事態宣言中の地域が多い時期に土用が当たっていますが、
感染状況が落ち着いた時に備えて、心と体を整え、周りの環境や日々の習慣などを見直してみるのもいいのではないでしょうか。
大変な時期ではありますが、今だからできること、
今こそやっておいた方がいいことがあるのではないかと思います。
来週も「冬の土用」についてお届けします。ぜひ聞いてくださいね。
産業医 櫻庭千穂
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