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芸能人のドラッグにやいのやいの言いたくないの

「アマニタ・パンセリナ」という本を読んだ。

キンドルで半額セールされていたので買ってみたのだけど、これが面白かった。

中島らも、という人について私は何も知らなかった。どうやら、若い頃から重度のアルコール依存症、睡眠薬や咳止めシロップへの依存症、40代ではうつ病に苦しみ、52歳の時に酒に酔って階段から転落死したらしい。なかなかファンキーな人だ。

「アマニタ〜」には、彼自身のアルコールやドラッグへの依存の体験談、他にもLSDやらアヘン、シンナーから幻覚サボテンまで、古今東西のドラッグ譚が綴られている。

違法ドラッグへのスティグマが強い日本で、よくこんな本を出せたなと驚いたけど、中島氏が依存していたのは主にアルコール、咳止めシロップ、睡眠薬、抗うつ剤であって、これらはどれも合法だ。(その後、大麻所持で捕まったりしたみたいだけど)

「ドラッグ」という言葉自体、日本では禍々しい響きをもつが、そもそもそれは「薬」の英訳でしかない。ドラッグにも色々ある。それが合法でも違法でも。

「アマニタ〜」が面白いのは、忌避(タブー)をただ真正面から扱っているというゲテモノ的な面白さだけではなくて、中島らもという人がどこまでも真面目な人だからじゃないかと思う。

彼はこんなことを言っているのだ。

酒を飲む人を見ていると、というよりも自分の有様を見ていて如実にわかるが、あれは口唇期性欲への退行現象である
すべてのドラッグは自失への希求ではないか

なんか、すげー勉強してるし、哲学している。彼は真剣なのだ。

(口唇期というのは精神分析学者フロイトの発達理論の話をしている。)

わたしは、芸能人や有名人がドラッグで捕まるたびに世間が大騒ぎする風潮が、ものすごく苦手だ。

薬物依存という問題について、考えることは良いと思う。

ただ、あらゆる薬物を合法・違法の二つにカテゴライズして、違法の箱を汚らわしいと指さすのではなく、一つ一つの薬物への知識を共有することが必要ではないのか。抗うつ剤だって、かなり強い依存性があるという。

そして、違法な薬物に依存せざるを得なかった個人を、ひたすらに攻撃することになんの意味があるというのか。

何かに依存してしまう人は、依存してしまうなりの理由があるのだ。

わたしは、開かれた人間でありたいと思う。

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