見出し画像

唐組・第67回公演 「ビニールの城」

初めて、劇団唐組の公演を観劇。劇団の名前は知っていたけど、アングラ演劇の代表というイメージが強く、さらに私はアングラ演劇を苦手としていたから観にいったことがなかった。

まず、舞台が印象的。テントで動くって話は誰かから聞いたことがあったけど、実際に設営のお手伝いをしてびっくりした。

まず、テントはこんなにも重く男手が必要なのか、と感じたこと。

ただ広げて終わりではなく、様々な骨組みで固定していくこと。

本当にオールスタッフオールキャストでフル稼働していたこと。

舞台の設営お手伝いをしている中でこの小物はどこに使うんだろう?とかこんな大道具が出てくるのか!とかとか。始まる前からどんなお芝居なのかワクワクしながらお手伝いをしたり、久々に演劇に触れて楽しかったな。灯体も久々に拝見。これは演劇では当たり前の照明器具なのだけど大切に扱えよ、っていう重圧のすごいやつ。

やっぱり演劇を観るとどんな形でもいいから演劇に触れたくなってしまう。

あと役者さん一人一人にキャラがしっかりあって持っていて、魅せ方がすごく自然で大した芝居はやってこなかったけどお芝居の勉強にもなったな。戯曲とかちょっとした演劇に社会人になってからも触れたいなって思う。やりたいことたくさんだー。

あらすじ(ネタバレなし)

月光さし入る浅草・神谷バー。腹話術師の朝顔は、8ヶ月前に別れた相棒の人形・夕顔を探し続けていた。人形を「遠くから来た人」と思う朝顔は、他人との「なま」に関わりを持てずにいる。そんな中、アパートの隣に住んでいたビニ本のモデルの女・モモと再会する。モモは朝顔にこう告げる。

「あたし、あなたが忘れられない人形と同じ名の人と結婚しました。いつまでもあなたの体の半分と暮らしていたかったから」

それを知った夫・夕一は

「人形の夕ちゃんにならなければ、モモという妻に喰い込んでいくことはできない」と思い始める。

交錯する3人の思いと葛藤の中で、この悲恋物語はどういう結末を迎えるのか、、、。

(唐組チラシ引用)

私が思うことをつらつらと

主人公である、朝顔は現実世界に目を背けて「なま」とは関われない、つまり命を持たないものとしか関わることのできない人間だった。だから、夕ちゃんに話しかけ続け、ビニ本の女に話続けていた。これは、演出の久保井研さんが書かれていたように、現代でいうスマホやパソコンの遠隔作業に付随するし、現在に至っては実際にビニールで他者とを隔てている点において皮肉とさえ思う。

じゃあ、その薄くて他者も見えるけど見えない溝が深い、そのビニールは何なのだろうか。何を隔てているのだろうか。「なま」か、「なま」じゃ無い世界か。

じゃあ、逆にビニ本を通してでしか見られなかったモモは?

ビニールの城にいることで朝顔に話しかけてもらえる、見てもらえる、声をかけてもらえる、と思ってビニールの城に居続けるモモは他者からどんな目で見られていたのだろう。

ビニールの城にいる自分しか見てもらえない、っていうのは朝顔だけじゃなく、他者にも言えることなのでは?ビニ本のカメラマンはカメラを通してしかモモを見ていない。モモは自分自身を常にビニールで通してもらえないと話すら、もしかしたら存在すら認めてもらえないって思っているんじゃないかとも。

じゃあ、旦那の夕一は?

夕一はモモのどこが好きだったのだろう?好きすぎてモモの想い人、夕顔になろうとするまでに愛したのは彼女のどこなのだろう?

あと、引田の連れでやんちゃめな河合の存在はすごく気になる。まずお芝居が自然で好きだった。腹話術師3人の役回りは話した通りに捉えたのだけど、河合の存在が私の中で十分に咀嚼できていない。ただ、河合のセリフで印象的だったのが

「平和を願いながら戦争をする。平和な場所にいながら戦争のことを考える。人間はこういう2つの物事を同時にこなしているんだ」(曖昧です)

あわわわわわーってなった。軽く言ってるけど私の中でこの人一番重要な役なんじゃない?とさえ思えてくる。この言葉についてしばらく考えていた。

何で人は対極の物事を同時に考え、行動しているんだろう。どこかで何か今の行動に後ろめたさを感じているのか。ならば、平和に対する後ろめたさって何?よく、平和すぎて(幸せすぎて)怖いってセリフや感情があると思うんだけど、何に対する恐怖なんだろう。

んんー。結局ご先祖様から受け継がれる狩猟の血が抜けきれていないと考えるべきなのか。旧約聖書だって次々に喧嘩して人亡くなっていたし。

難しい。個人的にはだいぶ考えさせられる印象に残ったセリフと人物でした。


正直、アングラ演劇は最初に述べたように苦手だった。何を言っているのかよくわかんなかったのと、入りが面白くないなんちゃってアングラ演劇しか観てこなかったから。

唐組のビニールの城を観に行けて良かった!公演がまたいつかどこかであったら観に行きたいなと思わせてくれる劇団さんでした。それくらい楽しめましたー!

※ずっと公開し忘れててようやく公開しました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?