映画視聴記録 『ミスミソウ』

※ただの自己満足映画感想文です。また、掠める程度のネタバレがあります。

◯映画『ミスミソウ』 感想

『人というのは、環境次第で此処まで恐ろしく悍ましいものになれるのか』というのが、この映画を見て感じた率直な想いだ。

本当に本当に、全員頭がおかしい。
……が、それはその人の元々の人間性というよりかは環境によるものが多いように見えた。壮絶なイジメの対象になっていた主人公は勿論のこと、その主人公をいじめていたいじめっ子、そしてそのいじめをことごとく無視してきた先生でさえ、閉鎖的な田舎町で苦しみもがいてきた物語があるのだ。
「だから仕方がない」というわけでは無いけれど、こうした人を取り囲む環境はこれ程までに人格や思考に影響を与えてしまうのかと、恐ろしく感じた。
救いが無い、胸糞が悪い、あまりにグロいの三拍子で、あまり万人におすすめできるような映画でない。しかし、その映像美は素晴らしい。所々CGでの演出がチープだと感じることはあるが、それを補って余りあるほどの美しさが、そこにはある。
雪と血、清廉な白と鮮やかな赤。目を覆いたくなるような惨状でも、どうしてか惹きつけられるような引力を感じてしまう。突きつける凶器、飛び散る血液、震える冷たい肌、汚れていく純白の雪。
一面の白い世界でひっそりと咲き誇るミスミソウ。
そして、惨殺シーンに心を痛めるほど、過ぎた日の思い出のシーンがより美しく映えるのだ。血も、妬みも、恨みも、殺意も知らない純な心で生きていたあの頃が、澄み渡る雪のように麗らかに映る。それがもう戻りはしない宝物であることが、これ以上無いほどに胸を締め付ける。
人は失って初めて大切なものに気づくとはよく言ったものだけれど、これはあまりに悲しすぎる。小さな歯車のズレが重なり、やがて修復出来ないほどまで狂ってしまう。どうしたら良かったのかなんて誰にも分からない。ただ苦しくて、悲しくて、恐ろしくて。でも美しい。そんな映画だった。
前述した通り、これは万人におすすめ出来る映画ではない。私も向こう1週間ほど引き摺るのではないかというほどに胸を痛めた。もしかしたら、もう見返すことは出来ないかもしれない。好き嫌いも賛否もわかれるだろう。

しかし、これを見る価値は大いにあったと私は思う。

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