大藪裁判 第三回公判レポ-ト 2

2022年5月11日
前橋地方裁判所で、大藪龍二郎氏の大麻取締法違反事件の第三回公判が行われた。今回は、大藪さんに職務質問を行った警部補に対しての証人尋問が実施された。
この証人尋問は、大藪さんの罪状を証明するために検察側が要求したものである。
13時から始まった検察側の主尋問が終わり、弁護側による反対尋問が始まろうとしている。
主任弁護人である丸井英弘弁護士は、左手に書類を持ち立ち上がると、証言台に立つ塚田警部補に視線を合わせ、口を開いた。


丸井主任弁護人
最初の段階なんですけど、あなたが当直のときに電話があったんですか。
 
塚田警部補
はい、当直勤務中にありました。

丸井主任弁護人
最初の段階なんですけど、あなたが当直のときに電話があったんですか。
 
塚田警部補
はい、当直勤務中にありました。
 
丸井主任弁護人
では、直接あなたは電話を聞かれたんですね
 
塚田警部補
直接ではありません。
 
丸井主任弁護人
直接ではないんですか。ということは伝聞ですか。
 
塚田警部補
はい。
 
丸井主任弁護人
誰から聞いたんですか。
 
塚田警部補
相勤者です。
 
丸井主任弁護人
相勤者は何と言ってたんですか。
 
塚田警部補
ゴルフ場近くの登坂車線に運転席のドアが開いた車が駐車しているので、危険であるので見てきてほしいといつた内容の通報です
 
丸井主任弁護人
ドアが開いてるから危険だから見てほしいと
、こういうことですね。
 
塚田警部補
はい。
 
丸井主任弁護人
それであなたは、職務質問として現場へ行ったんですか。
 
塚田警部補
まず車両を発見しに向かいました。
 
丸井主任弁護人
車両を発見、それは職務質問じゃないですよね。
 
塚田警部補
はい。
 
丸井主任弁護人
それから?それからの行動の根拠なんだけど、本人を起こしたりとかしてるでしょう。
 
塚田警部補
はい。
 
丸井主任弁護人
それはどういう根拠で行っているんですか。職務質問としてやっているんですか
 
塚田警部補
車両を発見した段階で、登坂車線に車両が上まっており、運転席のドアが全開に開いてるのは明らかに不審であったことから、職務質問を行いました。
 
丸井主任弁護人
その不審というのは、道交法に違反するとか、何か法令違反があったということでしょうか。
 
塚田警部補
ただちにこれが法令違反になるかと言われれば別かとは思いますが、ドアが開いているということは明らかに不審であると思いましたので、職務質問を行いました
 
丸井主任弁護人
8月の暑いときに、窓を開けたリドアを開けたりして休むことはあると思うんですよ。どういう点が危険なんでしょうか。
 
塚田警部補
登坂草線の真ん中に駐車されており、 ドアが全開であったことが、明らかに不審であると思いました。
 
丸井主任弁護人
道路の真ん中に止めてたということですか。
 
塚田警部補
登坂車線の真ん中に止まっておりました。
 
丸井主任弁護人
登坂車線の真ん中ということは、その道路の真ん中ということですか。
 
裁判官
登坂車線だから、多分複数の車線があって、そのうちの登坂車線の真ん中に止まっていたと、そういうことをおっしゃつていると思うんですが。そういうことですね。

 
塚田警部補
(うなずく)
 
丸井主任弁護人
分かりました。道交法では、例えば睡眠不足で運転して眠りそうになっちゃった場合には、これは逆に運転をしてはいけないことになっておりますよね
運転に支障が生じる場合です。眠気が生じるとかそういうことになった場合は、運転を継続すること自体が違法になると思うんですが。だから、止めてそこで一時休むということ自体は適法な行為だと思いますが、どう思われますか
 
検察官
異議あり。意見又は議論にわたる尋問かと思いますので、異議を申し述べます。
 
裁判官
異議を認めます。質問を変えてください。
 
丸井主任弁護人
では、どういう法令に。先ほどの質問に対するお答えは、違反しないということでしたね、法令には特別違反するものではないと。
 
塚田警部補
駐車方法に関して言えばです。
 
何かほかに法令に違反するようなことはありますか。
 
塚田警部補
先ほど申し上げた、交通事故、飲酒運転、無免許運転の疑いはあると思います。
 
裁判官
あなたはそう考えたわけですね。
 
塚田警部補
はい。
 
丸井主任弁護人
じゃあ、それで質問をしたということは了解しましたけれど、それで、本人が起きて、寝ちゃったんだという弁明を聞きましたよね
 
塚田警部補
はい。
 
丸井主任弁護人
それで疑いは晴れなかったですか。

 
塚田警部補
まだ交通事故や飲酒運転、無免許運転の疑いが晴れてはいません
 
丸井主任弁護人
交通事故というのはどういうことですか。
 
塚田警部補
交通事故は、何かにぶつかつたとか、そういったことです。
 
丸井主任弁護人
その交通事故を起こした形跡があったんですか。
 
塚田警部補
車両に細かいきずがありました。
 
丸井主任弁護人
そのきずというのは、直前に交通事故を起こしたようなきずだったんですか。
 
塚田警部補
そこまでは確認していませんので、確認する必要があると思いました。
 
丸井主任弁護人
それで、交通事故の疑いは晴れたんでしょう。
 
塚田警部補
いきなり声を掛けた段階ではまだ分かりませんでした。
 
丸井主任弁護人
で、その後の答えを聞いて、どう思ったんですか。
 
検察官
異議あり。いつどこの時点での認識を尋ねているのかを、もう少し明確に聞いていただけますか。
 
 
丸井主任弁護人
その会話当時ですよ。
 
検察官
その段階というのは、具体的にどの段階でしょうか。
 
丸井主任弁護人
寝ていた本人が起きて、本人の寝ちゃってましたという弁解を聞いた段階です。
 
裁判官
要するに、初めに会話が始まった段階、その頃のことを聞いているわけですか。

 
丸井主任弁護人
はい。
 
裁判官
そういうことですので、それを前提に答えていただけますか。
 
塚田警部補
会話が始まった段階では、まだ何も疑いは晴れていないと思います。

 
丸井主任弁護人
じゃあ、ずっと疑いは続いてたんですか。
 
塚田警部補
声を掛けた段階では、まだ何も疑いは晴れていませんでした。
 
丸井主任弁護人
どういう疑いですか。その疑いというのをもう一度言っていただけますか。これは職務執行法の要件に該当するので、もう一度聞きたいんだけど。疑いと言うんだけど、道交法2条の要件に該当するものですか。
 
塚田警部補
疑いは、交通事故、飲酒運転、無免許運転です。
 
裁判官
まずその可能性があると判断して会話を始めたと、こういうことですよね。
 
塚田警部補
はい。
 
裁判官
その会話をしている間に、そういう疑いというのはもうないな思ったときというのはあるんですか。
 
塚田警部補
その後、照会をして、大麻取締法の前歴があるということが分かりましたので。道交法の件に関して言えば、疑いは、飲酒運転に関して言えば特にはない、無免許運転も免許証の提示を受けましたのでないということは分かりました。

丸井主任弁護人
そうすると、疑いは前歴だけしかなくなっちゃったんじゃないですか。

 
塚田警部補
大麻取締法に関して言えば、車両に細かいきずがあったことや、被告人の表情等が挙げられます。
 
丸井主任弁護人
それがどういうふうに犯罪と関係あるんですか?例えば、寝ているところを急に起きれば、ぼうっとしてるじゃないですか。服装だってそんなにきちんとしてないと思うんですね。通常のことだと思うけど。犯罪行為とは関係ないように思うけど。
 
塚田警部補
それを明らかにするために、所持品検査を行おうと思いました。
 
丸井主任弁護人
それを明らかにって、何ですか、それは。意味が分からないけど。何罪の疑いがあると思ったんですか。
 
検察官
異議。重複尋問です。先ほど来、同じ質問を繰り返してぃます。
 
裁判官
要するに、大麻に関する犯罪に対する疑いがあると、こういうお話ですよね。
 
塚田警部補
はい
 
裁判官
そういうことを言っていますので、それを前提に聞いていただけますか。
 
丸井主任弁護人
前歴だけど、不起訴処分ということでしょう、中身は。

 
塚田警部補
そこまで詳しい内容というのは、当時では把握しておりません。
 
丸井主任弁護人
実際はどうだったんですか。把握しないままに終わったんですか。
 
塚田警部補
大麻取締法の前歴があるということを確認しました。
 
丸井主任弁護人
その前歴の結果については聞いてないんですか。不起訴処分じゃないんですか。

 
塚田警部補
そこまでの詳しい内容というのは、現場では聞けませんでした。
 
丸井主任弁護人
それで、更に職務質問を続行した理由が前歴だと、先ほど言われましたね。
 
裁判官
前歴と、あとは本人の態度とか車のきずとか、それを総合してというふうにおっしゃっているので、それを前提に質問していただけますか。
 

塚田警部補は、警察官職務執行法にもとづいて、大藪さんへの職務質問に臨んだのか?


丸井主任弁護人
分かりました。まあ、これは評価の問題になるから、そこまで聞かなくても、判断の問題だと思うけれども、職務質問を更にやる必要性がね、警察官職務執行法では必要最小限にしなさいという規定があるのは御存じですか。職務質問は必要最小限。
 
塚田警部補
はい。任意捜査でありということは知っております。
 
丸井主任弁護人
必要最小限という原則は。

 
塚田警部補
強制にわたらない限りというふうに理解しております。
 
丸井主任弁護人
それだけですか。必要最小限というのは任意の中でもあり得るんじゃないですか。

 
裁判官
そういうことは余り意識していなかつたということですかね。
 
塚田警部補
はい。
 
裁判官
そういうことだそうです。飽くまで証人の認識を聞いている話だと思いますので。証人としては、任意捜査であるということは考えていたけれども、必要最小限というふうなことは余り意識していなかったということをおっしゃっていると思うんですけど、それでよろしいですか。
 
塚田警部補
はい

丸井主任弁護人
分かりました。じゃあ、あなたは、警察官職務執行法1条の2項というのがあって、この法律に規定する手段は前項の目的のために必要な最小の限度にわたて用いるべきものであって、いやしくもその濫用にわたることがあつてはならないという規定があるのは御存じでしたか。
 
塚田警部補
詳しい内容までは、一言一句は分かりません。


丸井主任弁護人
この必要最小限で濫用にわたるようなことがあってはならないという規定があることは知っていましたか。意識してましたか、あなたが職務質問をやつてるときに。
 
塚田警部補
濫用をしてはいけないということは認識しております。
 
丸井主任弁護人
必要最小限は?

塚田警部補
(無言)
先ほど申し上げたとおり、任意捜査であるということを踏まえて職務執行をしております。
 

裁判官
警察官職務執行法に必要最小限という文言が出てくるんですけれども、その文言があるということについて今回の職務質問のときに意識はしてましたか
という質問だと思うんですけど、これはどうですか。
 
塚田警部補
そこは意識してません。


丸井弁護士は、塚田警部補が警察官職務執行法をどこまで意識して大藪さんに職務質問をしたのかということを明らかにした。そして、次の質問へとうつった。 


通報を受けて現場へと向かった塚田警部補は、飲酒や事故などの道路交通法違反の疑いがあるとして、大藪さんに職務質問を行った。それが果たして適正だったのか?そして、どの時点で大麻取締法違反の疑いに移行していったのか?丸井弁護士は、塚田警部補の当時の行動について、ひとつひとつ粒さに質問をしていく。


丸井主任弁護人
一般からの通報について、直接あなたは電話を聞かれたんですね

 
塚田警部補
直接ではありません。
 
丸井主任弁護人
直接ではないんですか。ということは伝聞ですか。
 
塚田警部補
はい。
 
丸井主任弁護人
誰から聞いたんですか。
 
塚田警部補
相勤者です。
 
丸井主任弁護人
相勤者は何と言ってたんですか。
 
塚田警部補
ゴルフ場近くの登坂車線に運転席のドアが開いた車が駐車しているので、危険であるので見てきてほしいといつた内容の通報です
 
丸井主任弁護人
ドアが開いてるから危険だから見てほしいと
、こういうことですね。
 
塚田警部補
はい。
 
丸井主任弁護人
それであなたは、職務質問として現場へ行ったんですか。
 
塚田警部補
まず車両を発見しに向かいました。
 
丸井主任弁護人
車両を発見、それは職務質問じゃないですよね。
 
塚田警部補
はい。
 
丸井主任弁護人
それから?それからの行動の根拠なんだけど、本人を起こしたりとかしてるでしょう。
 
塚田警部補
はい。
 
丸井主任弁護人
それはどういう根拠で行っているんですか。職務質問としてやっているんですか
 
塚田警部補
車両を発見した段階で、登坂車線に車両が上まっており、運転席のドアが全開に開いてるのは明らかに不審であったことから、職務質問を行いました。
 
丸井主任弁護人
その不審というのは、道交法に違反するとか、何か法令違反があったということでしょうか。
 
塚田警部補
ただちにこれが法令違反になるかと言われれば別かとは思いますが、ドアが開いているということは明らかに不審であると思いましたので、職務質問を行いました
 
丸井主任弁護人
8月の暑いときに、窓を開けたリドアを開けたりして休むことはあると思うんですよ。どういう点が危険なんでしょうか。
 

塚田警部補
登坂草線の真ん中に駐車されており、 ドアが全開であったことが、明らかに不審であると思いました。
 
丸井主任弁護人
道路の真ん中に止めてたということですか。
 
塚田警部補
登坂車線の真ん中に止まっておりました。


 
丸井主任弁護人
登坂車線の真ん中ということは、その道路の真ん中ということですか。
 
裁判官
登坂車線だから、多分複数の車線があって、そのうちの登坂車線の真ん中に止まっていたと、そういうことをおっしゃつていると思うんですが。そういうことですね。
 
塚田警部補
(うなずく)
 
丸井主任弁護人
分かりました。道交法では、例えば睡眠不足で運転して眠りそうになっちゃった場合には、これは逆に運転をしてはいけないことになっておりますよね。運転に支障が生じる場合です。眠気が生じるとかそういうことになった場合は、運転を継続すること自体が違法になると思うんですが。だから、止めてそこで一時休むということ自体は適法な行為だと思いますが、どう思われますか
 
検察官
異議あり。意見又は議論にわたる尋問かと思いますので、異議を申し述べます。
 
裁判官
異議を認めます。質問を変えてください。
 
丸井主任弁護人
では、どういう法令に。先ほどの質問に対するお答えは、違反しないということでしたね、法令には特別違反するものではないと。
 
塚田警部補
駐車方法に関して言えばです。
 
丸井主任弁護人
何かほかに法令に違反するようなことはありますか。

 
塚田警部補
先ほど申し上げた、交通事故、飲酒運転、無免許運転の疑いはあると思います。
 
裁判官
あなたはそう考えたわけですね。
 
塚田警部補
はい。
 
丸井主任弁護人
じゃあ、それで質問をしたということは了解しましたけれど、それで、本人が起きて、寝ちゃったんだという弁明を聞きましたよね
 
塚田警部補
はい。
 
丸井主任弁護人
それで疑いは晴れなかったですか。

 
塚田警部補
まだ交通事故や飲酒運転、無免許運転の疑いが晴れてはいません
 
丸井主任弁護人
交通事故というのはどういうことですか。
 
塚田警部補
交通事故は、何かにぶつかつたとか、そういったことです。
 
丸井主任弁護人
その交通事故を起こした形跡があったんですか。
 
塚田警部補
車両に細かいきずがありました。
 
丸井主任弁護人
そのきずというのは、直前に交通事故を起こしたようなきずだったんですか。
 
塚田警部補
そこまでは確認していませんので、確認する必要があると思いました。
 
丸井主任弁護人
それで、交通事故の疑いは晴れたんでしょう。
 
塚田警部補
いきなり声を掛けた段階ではまだ分かりませんでした。
 
丸井主任弁護人
で、その後の答えを聞いて、どう思ったんですか。
 
検察官
異議あり。いつどこの時点での認識を尋ねているのかを、もう少し明確に聞いていただけますか。
 
 
丸井主任弁護人
その会話当時ですよ。
 
検察官
その段階というのは、具体的にどの段階でしょうか。
 
丸井主任弁護人
寝ていた本人が起きて、本人の寝ちゃってましたという弁解を聞いた段階です。
 
裁判官
要するに、初めに会話が始まった段階、その頃のことを聞いているわけですか。
 
丸井主任弁護人
はい。
 
裁判官
そういうことですので、それを前提に答えていただけますか。
 
塚田警部補
会話が始まった段階では、まだ何も疑いは晴れていないと思います。
 
丸井主任弁護人
じゃあ、ずっと疑いは続いてたんですか。
 
塚田警部補
声を掛けた段階では、まだ何も疑いは晴れていませんでした。
 
丸井主任弁護人
どういう疑いですか。その疑いというのをもう一度言っていただけますか。これは職務執行法の要件に該当するので、もう一度聞きたいんだけど。疑いと言うんだけど、道交法2条の要件に該当するものですか。
 
塚田警部補
疑いは、交通事故、飲酒運転、無免許運転です。
 
裁判官
まずその可能性があると判断して会話を始めたと、こういうことですよね。
 
塚田警部補
はい。
 
裁判官
その会話をしている間に、そういう疑いというのはもうないな思ったときというのはあるんですか。

塚田警部補
その後、照会をして、大麻取締法の前歴があるということが分かりましたので。道交法の件に関して言えば、疑いは、飲酒運転に関して言えば特にはない、無免許運転も免許証の提示を受けましたのでないということは分かりました。
 
丸井主任弁護人
そうすると、疑いは前歴だけしかなくなっちゃったんじゃないですか。


塚田警部補
大麻取締法に関して言えば、車両に細かいきずがあったことや、被告人の表情等が挙げられます。
 
丸井主任弁護人
それがどういうふうに犯罪と関係あるんですか?例えば、寝ているところを急に起きれば、ぼうっとしてるじゃないですか。服装だってそんなにきちんとしてないと思うんですね。通常のことだと思うけど。犯罪行為とは関係ないように思うけど。
 
塚田警部補
それを明らかにするために、所持品検査を行おうと思いました。
 
丸井主任弁護人
それを明らかにって、何ですか、それは。意味が分からないけど。何罪の疑いがあると思ったんですか。
 
検察官
異議。重複尋問です。先ほど来、同じ質問を繰り返してぃます。
 

塚田警部補は、道路交通法違反の疑いがあるために、大藪さんに免許の提示を求めた。本来であれば、免許を提示した時点で本人確認及び無免許などの疑いは消える。しかし、データベースへの照会によって、大藪さんの過去の履歴が明らかになった。
それは、以前に別の大麻事件の捜査のために、任意で取り調べに協力したことについての履歴だった。この件は、本人への通知もなく「起訴猶予」として処理されていた。つまり、この件では大藪さんにはなんの罪もない状態である。
任意で捜査に協力した結果が、「前歴」として照会され、新たな捜査に繋がっていく。


裁判官
要するに、大麻に関する犯罪に対する疑いがあると、こういうお話ですよね。
 
塚田警部補
はい
 
裁判官
そういうことを言っていますので、それを前提に聞いていただけますか。
 
丸井主任弁護人
前歴だけど、不起訴処分ということでしょう、中身は。

 
塚田警部補
そこまで詳しい内容というのは、当時では把握しておりません。
 
丸井主任弁護人
実際はどうだったんですか。把握しないままに終わったんですか。
 
塚田警部補
大麻取締法の前歴があるということを確認しました。
 
丸井主任弁護人
その前歴の結果については聞いてないんですか。不起訴処分じゃないんですか。

 
塚田警部補
そこまでの詳しい内容というのは、現場では聞けませんでした。
 
丸井主任弁護人
それで、更に職務質問を続行した理由が前歴だと、先ほど言われましたね。
 
裁判官
前歴と、あとは本人の態度とか車のきずとか、それを総合してというふうにおっしゃっているので、それを前提に質問していただけますか。
 

職務質問は、「警察官職務執行法」に則り、行わなければならない。


主任弁護人

分かりました。まあ、これは評価の問題になるから、そこまで聞かなくても、判断の問題だと思うけれども、職務質問を更にやる必要性がね、警察官職務執行法では必要最小限にしなさいという規定があるのは御存じですか。職務質問は必要最小限。
 
塚田警部補
はい。任意捜査でありということは知っております。
 
丸井主任弁護人
必要最小限という原則は。

 
塚田警部補
強制にわたらない限りというふうに理解しております。
 
丸井主任弁護人
それだけですか。必要最小限というのは任意の中でもあり得るんじゃないですか。

 
裁判官
そういうことは余り意識していなかつたということですかね。
 
塚田警部補
はい。
 
裁判官
そういうことだそうです。飽くまで証人の認識を聞いている話だと思いますので。証人としては、任意捜査であるということは考えていたけれども、必要最小限というふうなことは余り意識していなかったということをおっしゃっていると思うんですけど、それでよろしいですか。
 
塚田警部補
はい
 
丸井主任弁護人
分かりました。じゃあ、あなたは、警察官職務執行法1条の2項というのがあって、この法律に規定する手段は前項の目的のために必要な最小の限度にわたて用いるべきものであって、いやしくもその濫用にわたることがあつてはならないという規定があるのは御存じでしたか。
 
塚田警部補
詳しい内容までは、一言一句は分かりません。
 
丸井主任弁護人
この必要最小限で濫用にわたるようなことがあってはならないという規定があることは知っていましたか。意識してましたか、あなたが職務質問をやつてるときに。
 
塚田警部補
濫用をしてはいけないということは認識しております。
 
丸井主任弁護人
必要最小限は?

 
塚田警部補
(無言)
先ほど申し上げたとおり、任意捜査であるということを踏まえて職務執行をしております。

裁判官
警察官職務執行法に必要最小限という文言が出てくるんですけれども、その文言があるということについて今回の職務質問のときに意識はしてましたかという質問だと思うんですけど、これはどうですか。
 
塚田警部補
そこは意識してません。


 丸井弁護士の尋問により、塚田警部補がどの段階で、道交法から大麻取締法へと捜査内容を変化していったのか?
果たしてそれは、適正な手続きを踏んで行っていたのか?
丸井弁護士は質問を終え、着席した。
続いて、石塚弁護士による尋問が始まった。


第三回公判リポート3に続く

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