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ブラスバンド・ニュースを読む -その3

 140年前、日本なら明治17年(1881)のことです。はるか遠方の国、英国では「ブラスバンド・ニュース」という新聞が創刊し月に1回発刊されていました。その新聞は1958年までの77年間にわたりライト・アンド・ラウンド社(Wright and Round)というブラスバンド楽譜の出版で有名な会社が通算900号を越えて発行し続けたのです。その内の834号が英国サルフォード大学のブラスバンドアーカイブでいつでもどなたでも閲覧することができるのです。なんと素晴らしいことでしょうか。


購読料金

 1881年10月1日の創刊号は6ページの新聞でしたが、その購読料金は前払い年間購読料が2シリング6ペンス、1部3ペンス、そして各号の郵送料は3.5ペンスです。その頃の多くの新聞販売価格は1部1ペニーで、1888年に創刊の日刊紙「アンサーズ・トゥ・コレスポンデンツ(Answers to Correspondents)」は1部12ページ1ペニーで販売されました。同じ年のブラスバンド・ニュースの1部販売価格は創刊時と変わらず3ペンス(郵送料4ペンス)ですので、3倍の価格設定で販売されていたことがわかります。
   *ペニーの複数形がペンスです。

Currency converter: 1270–2017によると

ちょっと価値が低すぎるように思いますが・・・

1881年頃の
 2シリング6ペンスは、現在価値 8ポンド27シリング
               (日本円 1380円)
      3ペンスは、現在価値 0.83ポンド
               (日本円 138円)
      3.5ペンスは、現在価値 1.245ポンド
               (日本円 207円)
なお、1971年以前のイギリスの貨幣は10進法ではありませんでした。
   1 シリング(1s)は12ペンス(12d)
   1 ポ ン ド (£1)は20シリング(20s)
   1 ポ ン ド (£1)は240ペンス(240d)
 ちなみに現在のイギリス貨幣は、1ペニー(penny)はポンド(pond)の100分の1で複数形はペンス(pence)、シリングという単位は使われなくなりました。

現在日本の新聞料金

 1881年頃のイギリスの多くの新聞が1部1ペニー(現在価格日本円で46円)だったというのは、換算が間違っているのかもしれませんが考えられない低額です。

一般紙
スポーツ紙

創刊号の内容

読者の質問への回答

 1881年10月1日発行のブラスバンド・ニュース創刊号には、「読者の質問への回答(ANSWERS TO CORRESPONDENTS.)」という欄があります。創刊号なのに「読者からの質問」に答えていることに若干の違和感を覚えますが、1888年に《アンサーズ・トゥ・コレスポンデンツAnswers to Correspondents》という日刊紙が創刊されているように当時の英国では新聞に「読者の質問への回答」欄が設定されているのは通常のことだったのかもしれません。

J.ジオさん : あなたの災難を聞いて残念に思います。しかし、自転車でコルネットを練習するのは安全ではないし、時速10マイル(時速16キロ)で走りながら、最高音ドを出そうとするのは絶対に危険です。病院に入院している間に、コルネットがパンケーキに変身しているかもしれません。コルネットケースと松葉杖を交換したいのなら、「物々交換」を試してみてください、間違いなく気に入るはずです。

レザーさん :ソの音をシェイクするには、Gを第1と第3バルブで作り、第1バルブでシェイクする。

その中に日本とフェントンに関する短い記述があります。

エヌさん : 私たちの音楽*1は、元英国陸軍楽長のフェントン氏によって初めて日本に紹介されました。

 全部で20程の回答があります。

創刊の言葉

ライト&ラウンズ社からブラス・バンド月刊誌の創刊について
・ブラスバンドコンテスト情報の提供
・ブラスバンド活動への理解深化

創刊のお祝い

 チャールズ・ゴッドフリー、ブラック・ダイク・ミルズ・バンド代表など10人からの創刊を祝う言葉

コンテスト結果

ウエールズ国際音楽祭

ブラスバンド部門
 
1位賞金21ポンド(現在日本円23万円程)とリーダーに金メダル     
   シファースファ・バンド(Cyfarthfa Band)
 2位賞品ベビー・トロンボーン(F.Besson and Co.製18ポンド相当)(現在日本円19万円程)      
   コリス・バンド(Corris Band)

コルネットソロ部門
 
1等賞金2ポンド2シリング(2万3千円)
   W.ベリー、ポンモレ、マーサー(W. Berry, Pontmorlais, Merthyr,)
 2等賞金1ポンド1シリング(1万1千5百円)
   ジョン・フランシス、アベルタウエ、スウォンジー(John Francis, Abertawe, Swansea)

アビー・レイクス・ホテル・ブラスバンド コンテスト

 1等賞金12ポンド(現在日本円13万円)
   ブラックバーン・テンペランス(Blackburn Temperance)
 2等賞金6ポンド(現在日本円6.5万円)
   第23D.R.V.グロソップ(23rd D.R.V.Glossop)
 3等賞金4ポンド (現在日本円4.3万円)
   ペンバートン・アマチュア(Pemberton Amatenr)
 4等賞金2ポンド (現在日本円2.16万円)
   ラドクリフ・テンペランス(Radcliffe Temperance)
 4等賞金1ポンド (現在日本円1.08万円)
   ドロイルズデン・ヴィレッジ(Drysden Village)

第29回ベルビューブラスバンド コンテスト(ブリティッシュオープン)

課題曲サンク・マルス(Cinq Mars)グノー(Gounod)作曲C.ゴドフリー(C.Godfrey)編曲

 1等賞金30ポンド(日本円33万円程)
  F.ベッソン社製バスドラム1個(20ギニー現在日本円23万円程)
  3ギニー(日本円3.4万円)相当の金メダル
  ブラックダイクミルズ(Black Dyke Mills)
    指揮アレクサンダー・オーウェン(Alexander Owen)
  各メンバーに、ブラックダイクが3年連続1位獲得記念金メダル贈呈
 2等賞金20ポンド(日本円22万円程)
  F.ベッソン社製B♭AC切り替えコルネット(23ギニー日本円26.6万円)
  3ギニー相当の金メダル
  メルサム・ミルズ(Meltham Mills)
    指揮ジョン・グラッドニー(John Gladney)
 3等賞金15ポンド(日本円16.5万円程)
  W.D.キュービット&サン社製4ピストン ユーフォニアム
  3ギニー相当の金メダル
  ステイリーブリッジ・オールド(Stalybridge Old)
    指揮ジョン・グラッドニー(John Gladney)
 4等賞金12ポンド (日本円13.2万円程)
  3ギニー相当の金メダル
  ボアズハースト(Boarshurst)
 5等賞金 8ポンド (日本円8.8万円程)
  3ギニー相当の金メダル
  トローデン(Trawden)
 6等賞金 5ポンド (日本円5.5万円程)
  3ギニー相当の金メダル
  バーンズリー(Barnsley)

*1 それ以前にもフランス軍事顧問団ラッパ伍長L.ギュティッグ氏らの指導による喇叭隊が設立されていましたが、1883年よりフェントン氏により英国製管楽器を使用した日本人バンドの演奏が始まりました。






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