見出し画像

ブラスバンド・コンテスト 其1

 コンテストはブラスバンドの発展に関わるとても大きな要素です。19世紀中頃からのイギリスで開催されたコンテストの隆盛とそこへの積極的な参加が無ければ、現在の28人が標準となるブラスバンド編成は確立しませんでした。コンテストの目的を「競うことそのものである」と考えていた愛好家たちがその中心となり、公正に競うという視点からさまざまなルールが確立してきて、その一つが標準編成の成立です。もちろん純粋に演奏水準の向上を図るための手段としてのコンテスト参加という側面もありますが、あくまでアマチュアが主体のブラスバンド・コンテストがイギリスで150年以上も開催され続けているのは、「競う」というエネルギーによるものと言えます。

ブラスバンド・コンテスト・セクション

 イギリスのブラスバンドの予選コンテストは、チャンピオンシップ、第1、第2、第3、第4の5つのセクション毎に大会が開催されます。大会は演奏順・バンド名等は知らされずに囲われたスペースに座る審査員が審査にあたる、いわゆる「ブラインド審査」で行われます。地方、地域、全国レベルで年間を通じて開催される様々なコンテストでの順位獲得ポイントを元に所属セクションの昇進と降格が毎年の終わりに行われます。

チャンピオンシップ・セクション

 イギリスで最も優秀なバンド、コーリー、ブラックダイク、グライムソープ等が属しています。プロやセミプロの奏者もメンバーに含まれてはいますが、あくまでアマチュアが主体のコンテストとして行われます。その課題曲は非常に難しくそれぞれの演奏者に挑戦的なテクニックを要求します。チャンピオンシップ・バンドの多くは全英オープンやヨーロッパ選手権に出場します。

チャンピオンシップ・セクションのバンド(筆者調べ)

第1、第2、第3セクション

 コンテストで演奏される楽曲はセクション毎に難易度が低くなります。第1セクションのメンバーの多くは、チャンピオン・セクションのメンバーと遜色ない技量を持っていますが、全員がアマチュアです。彼らはバンドに所属して演奏するために負担金を納めていますし、バンド内外には自分のポジションに取って代わろうとしている演奏者がいるという競争があるのが通常だと言われています。

第4セクション

 イギリスの多くのブラスバンドには、スポンサーによる練習場(Band Room)・ユニフォーム・楽器・楽譜等に対する援助がありましたが、第4セクションのバンドでは近年それが特に困難になり、多くのバンドが解散・統合されています。また、能力のある演奏者は、より上部セクションのバンドでの演奏を望む場合が多いため、優れたメンバーを確保するのも難しくなっています。

ブラスバンド・セクションに含まれないバンド

ユースバンド

 おおむね20代前半の年齢までのメンバーで構成され、アクション・メディカル・リサーチ・ユース・エンターテイメント・チャンピオンシップ(Action Medical Research Youth Entertainment Championships,)、全英ユース選手権(National Youth Brass Band Championships of Great Britain)、およびミュージック フォーユース(Music for Youth)のブラスバンド部門でコンテストが開催されています。バンドの中には、チャンピオンシップ・セクションと同等の演奏能力を持つバンドもあります。また、セクションバンドのメンバーを兼ねているメンバーもいます。

コンテストに参加しないバンド(Non-contesting bands)

 様々な理由からコンテストには参加しないバンドも多数あります。

大学バンド

 イギリスには約 40 の大学にブラスバンドがありますがメンバーの多くは、セクションバンドのメンバーを兼ねています。ユニブラス(UniBrass : the National University Brass Band Championships of Great Britain and Northern Ireland)という大学対象のコンテストが開催されています。



ブラスバンド・コンテスト 其1
ブラスバンド・コンテスト 其2
ブラスバンド・コンテスト 其3
ブラスバンド・コンテスト 其4
ブラスバンド・コンテスト 其5


writer Hiraide Hisashi


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?