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店内飲食をやめた話

2021年1月に喫茶スペースを改装して、喫茶は店内飲食提供は行わずテイクアウトのみにした。元々いちごパフェが主力の喫茶メニューだったので例年2月〜4月が普段より数倍お客様が増え、10席の狭い店内が土日は4,5回転する&お断りするお客様も多数、という状態だったので、このコロナ禍で、なんとなくうまく運営するのは無理だろうな、と。

元々、nagaya.は作家さんの器を中心にした雑貨店に、器に盛り付けした雰囲気を見たり、使い心地を試してほしいという思いで喫茶スペースを作った。オープンして数年は、雑貨が好きなお客様がついでに喫茶もしていったり、ご夫婦やご家族で来たグループが女性がゆっくり器をえらぶために喫茶を利用したりという、喫茶としてはかなりまったりした運営だった。それがこの2,3年でinstagramのカフェ写真を御朱印帳のように集めている方が増えた影響か、今までとは違う客層も増え忙しくなった。売り上げ的には大変ありがたかったけれど、雑貨のラッピングが重なったりするとお待たせする時間が長くなったり、仕込みに買い出しに業務が増えて余裕がなくなったりと、店全体の運営的に気になる事が増えた。

それでも去年はメニューを増やして、1〜3月は企画展を入れずになんとかお客様にたくさん提供できるように頑張るぞ!と意気込んでいたところの、コロナ禍。しかも2、3月はまだまだ情報も少なく、得体の知れない病原菌。まだマスクをするというのも定着しておらず、満席で長時間おしゃべりしているお客様に不安を覚えた。世間では紙製品やマスク、アルコール消毒液が品不足が騒がれ始め、忙しくて隅々まで目が届かないこともあり、なんとトイレットペーパーのストックが盗まれていたこともあった。喫茶を利用するお客様が来ることさえが、怖くなってしまった自分がいた。4月からは思い切って喫茶はお休みに。10月から席を半分に減らして1時間制にして再開してみたものの、やはりずっとモヤモヤしたままだった。そして、コロナが騒がれ始めてから、元々ずっと来てくださっていた常連の年配の方はぱたっと喫茶には来なくなった。

店というものは、お客様は選べない。コロナに対する警戒心として凄く高いお客様から低いお客様まで意識に幅があって、それはご家庭に年配の方や持病がある家族がいる場合、医療系や介護の職業の場合など、理由は様々だと思う。凄く気をつけて日々過ごしている人と、極端ではあるけれど「コロナはただの風邪だ!陰謀だ!」とか主張する人と、意識が全く違う人が同じ場所に滞在するのが「店」だ。コロナ禍の前でも、同じように何かに対する意識の違いは必ずあったけれど、コロナに対する意識の違いは、とてもとてもわかりやすく目に見えた。その人によって全く違う意識に対して、店を運営する側としてはどこに対応するべきか。店主さんによって考え方はそれぞれだと思う。けれど、私個人としてはなるべく誰でもが入れる店内では、飛沫の飛ぶ可能性を減らしたい、飛沫を吸う可能性を減らしたい、その一心でもあった。

昨日、夕方閉店間際。年配のお客様とお話をしていたら、少し長話になった。そのお客様はご家族が老人ホームに入居中で、コロナ禍でガラス越しに少し手を振る程度しか会えなくなったそうだ。最近も歩いて行ける場所にしか行かない、買い物もほとんど生協とのこと。そんな中ふらりと立ち寄って家族以外とおしゃべりすることで、カウンセリングみたいになった、ありがとうと言ってくださった。気軽におしゃべりもできない、まさかこんな世界が来るとは、と思ったことが次々と去年から起きている。

店内喫茶をやめたことで時間には余裕が生まれている。この変化に前向きに対応できるような、そんな1年にしていきたい。


徳島県徳島市でnagaya.という雑貨店を営んでいます。ナガヤプロジェクトオーナー。