「書く」ことで成長する3つの理由(その2:自己認知でき、経験学習のスタートに立てる)
5月9日のnoteで
「書く」ことで成長する3つの理由として
理由1)自分の感情をコントロールできるようになるから
理由2)自己認識でき、経験学習のスタートに立てるから
理由3)脳が活性化して、思考力がアップするから
を上げて、そのうちの
を説明しました。
今日は
その2:自己認知でき、経験学習のスタートに立てる
を解説したいと思います。
まず、ネットマン社が企業向け人材育成で提供しているコアメソッドに「 NETMAN 7 Steps」と呼ばれるものがあります。
自己認識から自律までの7ステップとして、Step1からStep7まで丁寧に積み上げていくことで、自律型人材の育成を実現していくモデルです。
この中のStep1が
Step1【自己認識】:「できたこと」と「感情」を自ら認識できる
です。
前回の「感情コントロール」で解説した、「自分の認知のクセ、感情の変化のパターン」がわかってくることで「感情をコントロールする術を習得する」という考えは、このStep1「自己認識」に強く関係しています
さらに、主体性を発揮して自ら前向きに成長するためには、「できたこと」を「自己認識」することが非常に効果的です。
人の成長に欠かせないと言われる心理プロセスである「メタ認知」は以下のように説明されています。
「現実の自分を別のもう一人の自分が客観的に俯瞰的に捉えて、その感情や行動をモニタリングすることによって、次の感情や行動をコントロールする」
「メタ認知」においても、感情と行動のモニタリングの重要性が解かれています。
ここで「書く」という行為が効果を発揮します。
ボヤッと考えているだけでは、実はわかっているようでわかったことににはなりません。人は、文字にすることで初めて自己理解が進むのです。
ステップ7の自律へのスタートである「自己認識」によって、
「自分はけっこうできているな!」
「今こう状況だからこういう感情なのか」
と成長スイッチが入ります。
その後、他者と承認しあったり(Step2)、自己開示する(Step3)ことで貢献しあったり(Step4)、目的思考(Step5)から挑戦的な行動(Step6)が生まれ、自律(Step7)へ至るのです。
まさに、自律に向かって、経験学習のスタート時点に立てるということですね。
私の師である、佐伯 胖先生の書籍である
『「わかる」ということの意味 新版 』(子どもと教育)/1995
(原書『「わかる」ということの意味』岩波書店/1983)
という本があります。私のバイブルです。教員や人材育成担当者や保護者など教育に関係する人であれば必ず読んでほしい本です。
少し引用します。
子どもが自分の可能性を自分で選んで、その子なりの可能性の中に花を開かせようとしている。「子どもは常にわかろうとしている」
私たち自身(大人)も未だ「わかっていない」存在とみなし、子どもたちも私たちも「わかろうとしている」ものと考え、「できること」から「わかること」へ向けて努力しながら、私たちの社会の文化をより価値のある、より人間的なものにしていこうという呼びかけが教育だというのです。
(教員が)「わかるということは大変なことなのだ」ということを正直に認めましょう。わかったふりをかなぐり棄てて、何度も何度も「わかり直し」を経験していくべき。当然と思っていることを疑ってみたり、あらためて「やっぱりそうか!」と感動してみたり。私たち自身の、そのような「わかり直し」の渦に、子どもたちを巻き込んでいくのが本当の教育ではないでしょうか。「わかる」ということの感動、新鮮なおどろきを、私たち自身が再体験しておきたいと思うのです。
ものごとが「できる」とか「できない」というのはどういうことでしょうか。
たとえば、「自分なりにできた」と思うことでも、他人の目からは「ちゃんとできてない」とされてしまいます。ほんとうは「できた」とか「できなかった」というのは、自分なりの実感であるはずです。ところが、やはり学校の授業の中では、自分なりの実感は無関係なのです。要するに、先生の目から見て、「できた」か「できなかった」のいずれかになってしまいます。
「できた」とか「できなかった」とかが、自分自身の変化の原因として感じられるためには、「できる」という状態を選び出し、自分でそれは向けて貢献しなければならないのですが、他人から勝手に「できること」を課せられてしまうのでは、いくら「できた」といっても、自分自身の変化の原因としての能力感(効力感)は得られません。
ほんと、共感で震える言葉だらけです。
佐伯先生がおっしゃる「わかる」がまさに「自己認識」にあたると思います。自律的に生きていく力を育む第一歩がこの「わかる=自己認識」であるということを物語っていると思います。これは一人一人の可能性を引き出すキーワードかと思います。
また育成に悩んでいる人なら、少なくとも解決する大きなヒントを得る感覚を得ることができると思います。というか勇気をもらえる本です。(気骨な研究者である佐伯先生に言わせたら「永谷くん、あれは随筆だから」とおっしゃるでしょうが。笑)
原著は38年前、新書も26年前の出版です。私たち教育関係者は時代を前に進めることができているのでしょうか。ぜひ、一読もらえたらと思います。
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。