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NHK for School 「デキナイヲデキルマン」に感じる漠然とした不安

Eテレの番組に、
「で〜きた」
という「幼保・小学1年」向けの子ども番組があります。

「できないに気づけば、かならずできる!」

という校訓で、加藤 諒(かとう りょう)さん扮するデキナイヲデキルマン(出来内満太郎)が小1年生の「できないこと」を探し出し、正して、できるようにするという番組です。

テーマは、第1回は「あいさつ」、第2回は「へんじ」、第3回は「すわる」・・・第20回は「ごめんなさい」などです。

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NHK for Schoolで第1回「あいさつ」の動画を見て漠然とした不安を感じました。

「できないに気づけば、かならずできる!」と、できていないないことを指して、「ダメ!」と指摘しています。

朝から元気がなく、挨拶できない子に対して、このままだと「いやなきもちにさせる」「なかよくなれない」「がっこうがたのしくならない」と諭します。

できないことを「ダメ!」指摘して何がいいのでしょうか。
優れた教員の「子どもの見取り力」はそんな単純ではありません。
教員からみたら「教師の仕事はもっと深いよ」って言いたくなる人もいそうです。

後半のシーンで、できない子が「これからあいさつする!」って急にいい子になるのも違和感があります。

こうやって子どもを「優等生へコントロールすることが正しい指導」という誤った考えが広がってしまう不安があります。

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あと、ハキハキと自己紹介できた優等生の子たちが
「外遊びしよう!」と誘い合っているとき、大きな声で自己紹介できなかった子に
「えっーっと、なまえ何だっけ?」
と言われ、
「ガーン!なまえ覚えてもらってなーい」
となるシーン。

いやいや。この小1の子供たちは、名前なんて知らなくても遊んじゃいますよ。国籍が違い言葉が伝わらなくても一緒に遊べちゃうのがこの頃です。(その前に、”名前わからなかったら聞いてあげようよ”ってことで、むしろこの優等生さんが「できてない」ですから。。笑)

このようにできる子ができない子をいじるシーンは、いじめを誘発するのではとヒヤッとします。

しかも、できるメーターなる大きなメーターが、「できないこと」があるだけでどんどんインジケーターが下がっていくんです。

これは、もちろん番組上の演出もあるでしょうが、本当の教室であったら公開処刑の場になってしまいます。

できないことに着目させることでどんどん自己肯定感が下がっていきます。
そして、「できている」優等生側の子でさえ、誰かと比較して「できること」の価値判断をしやすくなり、いずれ自分軸より他人軸が強くなっていき、大人になってから苦しむことになります

第1回「あいさつ」の動画をよく観察すると、できてないと言われる「おうすけ」くんは、実はできていることばかりです

1)朝遅刻せずにしっかり学校にきた
2)カバンをロッカーに入れられた
3)小さい声ながら自己紹介できた

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そうです。できないことではなく、「できたこと」をたくさん見つければいいのです。そのような肯定的な自己認知が基盤となり、次第に自分で気づき行動する力が身についてきます。すでに子どもたちはたくさん「できている」のですから。

NHK for Schoolは優れたコンテンツが多く、多くの学校の教育で活用されていると思います。この番組の動画をそのまま小1の指導で使う先生はいないとは思いますが、注意が必要だと思います。

今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。