見出し画像

兼業漫画家、編集さんを個人で頼む

こんにちは、ながたです。
商業誌で描いてた漫画の続きを自分で同人誌や電子書籍で出したりしています。
基本的に全ての制作作業を1人でやっています。

ネーム進行の敵

1人で長いネームを作る時の最大の敵は「これ面白いか…?」てなる自分です。 

自分の場合割と長くて混み入った話を作りがちなので途中でこの敵に翻弄されると完成までがひどくしんどい道のりになります。
そういう作業をずっとしていると客観的な目線で見てくれる人が欲しいな…と思います。商業誌はそれがあるのがやはり大きい。

編集さんと自分

自分が幸運なのかもしれませんが、今まで会った編集さんは皆さん的確なアドバイスをくれた方ばかりで的外れなことを言われたり不快な思いをしたことはほとんどありませんでした(お互いおかしなことを言っているときは意図や前提が大概ずれているのでそちらの認識を調整すれば納得できることがほとんどです)。

中年の医者という見るからに面倒臭そうな属性のせいかもしれませんが…

アフタで「螺旋じかけの海」を描いてた時はネーム出すと大概ほぼ全通か全ボツのタイプでした。
全ボツの時は言われてみれば当たり前に前提からダメなことが多いのだけど、言われるまで我に帰れないのです。
言われて我に帰ると「ダメだな、これ!」て潔く捨てられるのですが…
基本的に描きたいように好きに描かせてくれる編集さんで、その上で出せるものか判断してくれていた感じです。
(ちなみに3巻の同人誌は完成後にお送りしました。お世辞かもしれないけど笑、面白かったと言ってもらえて嬉しかったです)

今はヤングキングBullで連載しているので担当さんと定期的に打ち合わせしながら描くというのを久しぶりにやっていますが、作画に入る前にcheckして直しを入れてもらえるのは本当に気が楽です。雑談しながら方向性相談できるのも文字打ってもらえるのも本当に楽。

編集さんは大量の漫画に触れたデータの蓄積と、形になる漫画の作り方のノウハウをそれぞれ持っているので、やはりプロだなあと思うことが多々あります。
よくネットで叩かれがちな編集さんだけど、自分の場合は問題になるのは既存の出版流通システムや、個人の編集者さんの能力や人となりの点で、編集者という職種自体は本を作る上で必須なものだと思っています。

誰かネーム読んで

一人で電子書籍などで商業単行本を模倣しようとした場合、漫画の場合は原稿・写植含め多くのものはどうにかはなります。デジタル万歳。
表紙、目次、扉、奥付などは自分で作っていますが、出来はともかく用は足りるものができます。(きちんとデザイナーさんに外注する人もいる)
ただしネームの良し悪しの判断だけは本を出すまでできないのがしんどいです。そして心が折れると完成に辿り着けない。
客観的に自分の作ったものを見るのは本当に難しいです。

そんなわけでネームを見てくれる人がどうしても欲しい(特に長い話)のですが…
・家族は普段漫画を読まない
・友人に頼むにも気を使われそうで悪い
・出張編集部に持っていったらさすがに何しにきたって言われそう(大体1人参加で暇がない)
やはり仕事としてアドバイスしてほしい……となると編集さんだ
おかげ様で螺旋がたくさん売れてくれているのと🙇‍♂️、商業誌の時のクオリティに近いものをなるべく出し続けたいのもあり仕事として編集者さんへ依頼することにしてみました。

編集さんを依頼してみる

今回、以前から交流のあるフリーの編集さんに依頼をしました。
依頼したのは根本和佳さん(@nemonemu)です。
根本さんはビッグコミックの編集部にいるけど所属はフリーの編集さんです。

以前声をかけていただいて読切のネームをいくつか作ったのですが、残念ながらその時の色々で掲載には至らず…
短編集「君の薫る星」に入っている表題作がその一つです。
そのあと自分が商業誌リタイア気味になって少し休んだあとコミティアに出るようになったのですが、その後もブースに来ていただいたりずっと交流がありました。

というわけでプロの編集者を個人で依頼するのは可能なのか?という時に真っ先に思い浮かんだのが根本さんです。
出版社所属の編集さんにお願いするのはさすがに無理筋かと思ったのでフリーの根本さんならお願いできるかな?…と。
以前ネームを作った時のやりとりや人柄、漫画の好みを知っているので安心して頼めるのも大きかったです。
今回お願いしたところ「そういう依頼は聞いたことないですねー」と言いつつ快諾していただきました。

編集の仕事をお願いすると言っても写植、進捗管理、デザイン等は自分でやるので、お願いしたいのはネームチェックと入稿時の誤字&作画ミスチェックになります。誤字探しも自分だと必ず抜けが出るので…。
なのでネームコンサルトと校正の依頼といった感じでしょうか。
今回4巻2話目の「樽の中の芥子畑」の制作前にご依頼したので、この話のネームへのアドバイスと4巻全体の校正をお願いしました。

依頼してみた

ネームのほうは結果としては「ほぼ直すとこなしで面白いです、なんかすみません笑」と言っていただきました。
幸いに全通パターンだったようです。Yeah!
じゃあわざわざ見てもらう必要ある?と言われそうだけど、大アリです。

3巻2話目や4巻1話目は一人で完成まで持っていったのですが、途中でちょっと迷い始めて修正したりしてしまい、作画が終わるまでかなりしんどかったし時間がかかりました。結果として割といい形にはできたと思うけど(多分…)その時に編集さん頼もうと決意したのはあります…

依頼した4巻2話目はそもそもネームを見てもらうためにきっちり最後まで他人が見てわかる状態に作る必要がある、という力が働くだけでも既に効率が良くなりました。どうしても1人で作業してると詰めが甘くなって見切り発車しがち。

作画段階でも、最後までネームを作りきってGOサインをもらうと長い話でも作画中に迷う必要がないので非常に効率的に進みます。やはり迷ってるうちに消費してしまう時間というのは大きいなと実感しました。

結果として1話目と2話目は60P台と同じぐらいのページ数だったにも関わらず作画が1ヶ月短くすみました。

もちろん最終的に読む人は色々なので1人の面白いが全部ではないだろうけど、描く人間にとっては描きあげるまでの間その1人の面白いはとても大事です。その大事さを今回改めて痛感しました。

入稿前の校正もプロの漫画編集者さんなのでこちらの意図を汲んで修正提示してもらえるのでありがたいです。指摘してもらった部分を自分で修正し入稿する形ですが、修正後に安心して入稿できました。修正案も最終的に決めるのが自分なので、提言する方も気が楽ですと言ってもらえました。

(…といって電子書籍で1箇所トーンをグレスケのまま入稿してしまったのに後で気がついたのですが…これは私の出力ミスです。電書なので後で修正可能なら修正したいと思ってます)

料金については前例がないとのことで相場もわからなかったので、ネーム相談・校正とも相談の上根本さんに提示してもらって決めました。自分としてはぜひ次回もお願いしたいです。


以上、個人で編集者さんへ依頼をしてみたの話でした。
商業誌の仕事以外で編集者さんへ依頼をするという話を見たことがなかったので、何かの参考になるかと思い記録してみました。

何かと手探りで進めている本作りですが、一人で自由に作っているのでこれからも色々試してみたいと思います。

そんな風に試行錯誤してできあがった螺旋じかけの海4巻は2/20発売です。
電子書籍の他、紙同人誌も2/20コミティアと委託書店で発売予定
とらのあな

メロンブックス

kindle・・・2/27まで1巻無料&既刊割引中です!

DMM

その他各電子書籍ストアにて


内容・お名前表記は根本さんの承諾をいただいています。
根本さん担当の「機械仕掛けの愛」「塀の中の美容室」「星の輝き、月の影」「フランチャイズ!つくだ☆マジカル」「地元のもみじ」もどうぞよろしく!→根本さんTwitter @nemonemu


2023/8/30追記
根本さんが編集さんサイドからの記事を書いてくれました!