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靴を脱ぎたくなるのは何故なのか?

修学旅行から戻ってきた高校生のクライアントさんが、興味深い事をおっしゃいました。

当初の予定とは行き先が変わってしまった上に、日程も短縮を余儀なくされた模様ですが、中止にならず実施できた点を評価すべきでしょう。

それに悪いことばかりではありません。

日程が短縮されたため予算に余裕が生じ、「従来の修学旅行では考えられない格式あるホテルに宿泊できた」と得意げに話してくださいました。満足そうで何よりです。

1)ベッドの足元にある布の正体

彼女に、こう問われました。

「ベッドの足元に敷かれている帯ありますよね?何のためにあるか知ってます?」

いや、存じませんね。思いつくのは「室内清掃済みの証明」くらいでしょうか。

格式あるホテルで学んできた彼女によりますと、主な理由は3つあるそうです。

① ベッドメイキング完了のサイン
② 高級感を演出するためのインテリア
③ 土足でシーツが汚れないためのカバー

①は予想通りです。②に関しても、そう言われると、部屋全体が洗練された雰囲気になるような気がしてきました。概ね納得です。

問題は③ですが、まったく意味がわかりません。土足でベッドに上がる不心得者などいないでしょう。

マナーがどうのではなく、ヒトとしてあり得ない振る舞いです。

そして、僕の反応をみて満足そうにしながら、彼女はこう続けました。

「それは日本人の発想ですね、ホテルには外国人も泊まるのです」

なるほど、土足文化ですか。言わんとするところは理解できました。

ですが、納得しかねます。

外国人といえども、好きこのんでベッドに土足で横たわるとは思えません。

2)自宅に帰るまでが遠足です

例えば、出先から帰宅する際、自宅に近づくにつれて緊張感が徐々に緩和し、玄関で靴を脱いだ瞬間ピークに達します(たぶん)。

何故そうなるのか改めて考えてみると、「慣れ」の影響は無視できません。

小中高に拘らず、学校の先生は「自宅に帰るまでが遠足です!」と口を揃えて仰っていたでしょう?

つまり、日本人にとって靴を履いての外出は「気を抜いてはいけない時間」という共通認識が刷り込まれているのです。

そうしますと、靴を履けば自動的に交感神経がONになり、逆に靴を脱げば、副交感神経に切り替わる可能性がありますね。

それを踏まえて考えると、ホテルのチェックインした際、寛ぎたいのであれば、最初にやるべきことは「靴を脱ぐ」これ以外にないでしょう。

土足で横になったところで、ちっともリラックスできません。

おそらく、土足文化圏の人は「靴を履いていても寛いで良い(緊張しなくて良い)」という慣習があるのだと思います。

それこそ、靴下と同じような感覚で履いたり脱いだりしているのかもしれませんね。

3)精神性の発汗

それでは、医学的に考えてみましょう。足裏は発汗しやすい部位のひとつで、体温調節するための汗ではなく、精神性の汗が顕著に現れます。

精神性の発汗とは、緊張が高まった際、手足や腋の下にかく汗のことです。

例えば、「手に汗握る」という表現はあまりにも有名ですが、これは精神的に発汗していることを示しています。

自律神経失調症やパニック障害の人が手足に汗をかきやすいのは、緊張している時間が長い、あるいは、緊張する頻度が多い事が原因のひとつです。

「手足は冷たくなって辛いのですが、なぜか汗が酷いのです」という相談を受ける機会が多いのですが、不思議なことではありません。

暑いから汗をかいているわけではなく、緊張による発汗だと考えれば妥当な結果ですよね。

4)結論と致しまして

まとめると以下の通りです。

① 日本人は靴を履くと緊張する(交感神経が優位になる)
② ①の結果を経て足裏が発汗し蒸せやすくなる
③ 緊張と蒸せた状態から解放されたいために靴を脱ぐ

新幹線や飛行機に乗った際、「隣席のおじさんが靴を脱いでいて困った」という経験をした方は少なくないでしょう。

そういう時は、「仕事でたくさん緊張したのだな」「自律神経が不安定なのだな」と寛容な心を持って、やんわりと嗜めてあげてください。


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