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7月20事件とオペレーション・ワルキューレ


『オペレーション・ワルキューレ』
2004年・ドイツ

原題:シュタウフェンベルク
監督・脚本 ヨ・バイアー
主演:セバスチャン・コッホ、ウルリヒ・トゥクール、クリストファー・ブーフホルツ、ハーディ・クリューガーJr

 今年も7月20日という日を迎えました。

 7月20日という日はドイツ人にとって特別な意味を持つ日です。第二次世界大戦下の1944年7月20日、ヒトラーを暗殺し、ナチス政権を打倒してドイツを滅亡から救おうとしようとした、反ヒトラー派の最後で最大のクーデター「7月20日事件」。
 『オペレーション・ワルキューレ』はその事件の映画化作品です。

 トム・クルーズが主演した映画『ワルキューレ』の元作品で、『ワルキューレ』は、この映画のハリウッドリメイクになります。

 クーデターとヒトラー暗殺の実行者であるクラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐を主人公に、いかにしてクーデターが準備され実行されていったかが、克明に描かれています。

 『ワルキューレ』と違って、ドイツの作品ですから、第二次世界大戦でのドイツの事情やナチス政権下の問題、主題となる「ヒトラー暗殺未遂事件」については、鑑賞者が、ある程度、知っているだろうという前提で造られていますので少々予備知識は必要になるかもしれません。
 『ワルキューレ』はロケ地もこの映画と同じところを使用していますので、かなり影響を受けています。

 リメイクである『ワルキューレ』との決定的な違いは、『オペレーション・ワルキューレ』の視点はかなりシビアで絶望的な雰囲気を漂わせるリアリズムでしょうか。

 同じ題材を採っているのに、やや楽観的なハリウッド風に比べて、ドイツ版はペシミスティックな緊張感にあふれています。
 
 シュタウフェンベルク大佐を単に無欠なヒーローとするのではなく、人間的な弱さも同時に描いているあたり、ヒトラーやナチスの強大な権力と対比させて、その時代の困難な状況をよく表しています。

 主人公を演じるセバスチャン・コッホは『善き人のソナタ』『ブリッジ・オブ・スパイ』『ブラックブック』でお馴染みのドイツの俳優ですが、ドイツ映画ではこうしたナチス時代の現代史もの作品に出演する機会が多いようです。

 さて、もしも、「ワルキューレ作戦」が成功して、反ヒトラー派が政権を奪取したとしたら、その後の歴史は変わったでしょうか。

 シュタウフェンベルクらは、クーデター成功後に新政府を樹立して、西部戦線における米英と単独講和を行い、敵を東部戦線のソ連に絞る構想をしていました。

 連合国側はソ連を抜きにした単独講和には応じなかったので、即時停戦とはならずに、結局は戦争は続いて、最終的にはドイツの全面無条件降伏となったでしょう。
 シュタウフェンベルクらはその辺りの観測を最初から誤っていたのです。

 でも、ワルキューレが成功していたのなら、このあと終戦までに失われた数多の命を救えたことだけは確かです。

 そんな歴史に思いをめぐらせながらこの作品を鑑賞するのもいいかもしれません。

 なお、7月20日事件は戦後の西ドイツ及び東ドイツ、アメリカやイギリスでも何度も映画化されています。

 また機会があればご紹介させていただきます。

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