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中島知久平の「必勝戦策」。9ページまで

「必勝戦策」の下部を書影に上げました。シミらしきものがありますね。「必勝戦策」以外にも、当時の紙資料が保管されている場所をいくつか知っています。

 私はその手の資料に遭遇するたびに「市の文化財課に保存してみてはどうでしょうか」と提案しているのですが、「倉庫に眠るよりも、あなたのような変わり者のために保管しているんです」みたいな返答をよくもらいます。

 市町村の「文化財課」は人の移動と物の移動が起きる時に、その時に失ってしまうの事がチラホラあるそうです。それが巡り巡って私の元にあるという。

 ではページを上げまーす。

 又、敵は日本本土空襲を大規模に準備中であって、何時来るか判らない、故に本土には広く優秀なる飛行機を配備し置かなければならない。

 又、支那本土に於いては、盛に米国流の大規模を以て多数の飛行場の建設中であって、之が整備を了れば一夜にして多数の飛行機を結集し、日本攻撃の撃に出ずべきことは明かであります。之に対しても優秀にして有力なる空軍を配して置かなければならない。

 又、米、英は、大規模のビルマ反攻を企画し、現に印度に大量に兵力、器材を集結中であって完了次第大規模の攻撃に出来ることは緊迫したる事実であります。之の方面の反攻は必然、ビルマ、泰、馬来に及ぶ広大なる戦面となり、日本としては未曾有の大消耗戦を展開するに至ることは瞭かであって、全生産能力を挙げて尚ほ足らざる情勢さへ想像せらるのであります。

 又、スマトラ、ジャバ等は、石油の源泉地であって之を爆破せらるか失う時は、日本は重大なる運命に逢着する、米英の真の狙いは必ずや之の辺にあると思われるのであります。従って此の方面こそ、最も有力なる空軍を配し、防備の完璧を期さなければならない。

 又、委任統治領の何千かの南洋諸島は、どれを取られても直ちに米国の航空基地となり、本土防衛の危険を来することとなる、従って之等多數請島の防衛のために相當数の飛行機を配備しなければならない。

 又、ソ満国境にたいしては、互いに多數の精兵配して対峙して居るのであって、一寸の遅緩も重大なる結果を引き起こす憂がありますから之の方面にも優秀機を集結して置かなければならないことは言う要せざる所であります。

 斯くの如く日本は広袤三万粁に亘る外郭防衛線に全線に汎ねく飛行機、、軍需品を備えなければならない。而して、米、英は厖大なる生産力を来る戦力を任意に點に集結して、大挙攻勢を採りえる態勢にあるのであります。

 はい。長島流に意訳します。

 また、敵は日本本土空襲の準備中であっていつ来るかわからない。故に本土には優秀な飛行機を配備しなければならない。

 また、中国(中華民国)にはたくさんの米国流の大規模な飛行場を建設しており、これが完成すれば一夜にして多數の飛行機が結集して日本空襲に出るのは明らかです。これにたいしても優秀な飛行機を配備しなければならない。

 また、アメリカ、イギリスは、ビルマ(現、ミャンマー)反攻を企画し、現に印度に大量の兵力を集結し、いつ攻撃に来るか緊迫しています、この方面は必然に、ビルマ、タイ、マレーシアに及ぶ戦面となり、日本は未曾有の大消耗戦に展開することはあきらかで、全生産能力を挙げても、戦力が足りないことが想像できます。

 また、スマトラ、ジャワ等は、石油の源泉地であって爆破や失う時は、日本は重大な運命にでくわす、アメリカ、イギリスの真の狙いは必ずやこの辺にあると思います。従ってこの方面にも有力な空軍を配備し、防御を完璧にしなければならない。

 また、委任統治領の南洋諸島はそれを取られてもすぐに米軍の航空基地となり、本土防衛の危険を招くことにな。従ってこれら多数の請け負う島の防衛のために相当数の飛行機を配備しなければならない。

 また、ソ連満州の国境に対しては互いに多数の精兵を配して対峙しているのであって、ちょっとの遅い行動で重大なる結果を引き起こす心配がありますから、ここにも優秀機を集結して置かなければならないことは必要な所であります。

 日本の防衛線はトータルで三万キロメートルで、全線に飛行機と軍需軍を備えなければならない。こうして米英は厖大なる生産力で任意に点で集結して大挙に攻勢を採る態勢であります」

 あたりでしょう。

「又(また)」が多いですね。

 で、深堀りすると、

 ソロモンやアリューシャン列島を守っても中国本土から爆撃の可能性があり、英米はビルマから反攻に出て大規模になり、大量消耗戦になります。さらにスマトラやジャワが米英の本命で、ここに必ず攻撃すると思います。

 南洋諸島の委任統治領は何千もの島があり、そこのどれか1つ、アメリカに奪われたら、アメリカの航空基地に変わって本土に攻撃をしかけます。

 さらにさらに、ソ連と満州は睨み合いを続けていますが、少しの油断があればソ連が攻めてくる可能性があるので防備の強化が必要です。

 つまり日本の防衛線は三万キロメートル全てに飛行機や軍需品を配備しなければならない。しかし米英は持ち前の生産力で一箇所に戦力を集結し、いつでも大挙する態勢であります。


 あたりでしょう。事実上の四面楚歌になることを説明しています。

 とにかく飛行機と軍需品が必要ですが「日本の生産力では限界が目に見えて追いつかない」と言いたいのでしょう。

 そこから作戦を大胆に変える、起死回生、乾坤一擲の「Z飛行機」の説明の地固めをするのでしょう。まだまだ、序盤です。

 はい。今回の旧仮名遣いのお勉強です。

 盛に←はなはだ

 了れば←りょうする

泰←タイ

馬←マレーシア
 

瞭か←あきらか

逢着←ほうちゃく 「でくわす」という意味。

相當←相当、だが「それ相当の高い能力」というニュアンスの模様

遅緩←ちかん。 ゆっくりしていて、遅い。

粁←キロメートル

汎ねく←あまねく

點←点の旧字体。ずいぶん変化したな〜


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