サボテンの芯

 サボテンを眺めながらカップ麺を食べる。ある片付け本によると、片付けができない女性の部屋にはよくサボテンがあるらしい。この典型例になっちゃうじゃん、と思いつつ、惚れたものは仕方がないと買ってしまった。
 絶妙な形のサボテン。丸っぽくてかわいらしく、どこから見てもほとんど左右対称で心が落ち着く。
 「あんたね、何事もバランスが大事だからね。カップ麺食べてもいいけどその分明日は栄養のあるものを食べなさいよ」なんて、そのバランスの取れたフォルムが語りかけてくる妄想をした。カップ麺はあんまりおいしくない。お湯が沸くのを待ちきれなくてちょっとぬるいのを使ってしまったからところどころ硬い麺がある。
 本当に私ってこういう横着なところがあるよな、と自己嫌悪に入りかける私に、またサボテンが語りかけてくる。
 「そのへんのバランスは個人の好みじゃない。その横着さを取り除くと同時におおらかさもきっとなくなるわよ。本当にそれでいいのかしら」

 そうだね、とつぶやいて立ち上がる。そしてごちそうさまを言い忘れたことに気づく。
 まあいい。私ひとりのテキトーメシだから。誰にも見られてないから。ごちそうさま、とゴミを捨てながらつぶやく。私にはほんのり肯定してくれるサボテンという味方ができた。

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