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「フットゴルフは自分自身を表現できる唯一のもの」

フットゴルフで、日本中に新しいブームを巻き起こそうとしているアスリートがいる。平野靖之選手。今回は平野選手にプレーヤーとしての自分、フットゴルフの魅力や奥深さなどを聞いた。

 平野選手は1996年4月1日生まれ。栃木県出身で中学までサッカー部で活動していたが、高校ではサッカー部に所属はしていない。「体験会に参加してこれはダメだと感じて入部はしなかった」とのこと。そのまま続けていればどうなっていたかという気持ちはあるものの、サッカーから一度離れたことでフットゴルフに出会うことができたとも語る。

 フットゴルフとの出会いは大学の時の話だ。たまたまテレビでフットゴルフの紹介がされており、SNSで調べてみると地元の佐野市で大会があることを知り見に出かけたのがきっかけである。その後、実際に体験した際にゴルフ場でボールを蹴る気持ちよさを知ってしまい「これは僕のためのスポーツなのでは?」と感じ、のめりこんでいった。

 平野選手のプレーにおける特徴は安定感があることだ。コースを問わずスコアをまとめられる点が強みである。その反面、爆発力がない点が課題でもあると自分自身を分析している。

 2018年にモロッコで行われたフットゴルフのワールドカップに出場した際には、世界ランキング上位の選手とまわり、規格外のプレーをする他国の選手のプレーを間近で見て力の差を感じた。そこで世界の選手に追いつくために1打目のキックの精度に力を入れ始めた。徐々に手応えも感じており、持ち前の安定感にプラスして世界で戦える武器を身に付けつつある。

フットゴルフの魅力

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 フットゴルフは、残念ながら知名度が高いとは言えない。何となく名前は聞いたことがあるという人や、そもそもフットゴルフを知らないという人も多いだろう。フットゴルフの魅力とは何だろうか。平野選手の言葉を借りると「魅力がいっぱいあることが魅力」だ。

 ここではその魅力を2つ紹介したい。1つ目はサッカーに近い要素がありながら、個人で戦える点だ。サッカーの場合、一人が突出しているだけでは勝つのが難しく、そもそも人数が揃わないと試合をすることもできない。フットゴルフは個人で試合をすることができ、自分の体1つで世界と戦うこともできる点で、サッカーやフットサルとはまた違った魅力があると言える。

 2つ目は、フットゴルフはサッカーに比べて体力差が出にくいため、年齢差がある人たちと対戦ができることだ。フットゴルファーには若い選手だけではなく、50歳を超える選手も多い。そのため、自分の年齢が2倍以上ある選手との真剣勝負も面白さの一つだ。親子三世代など家族で一緒に楽しみながらプレーすることもできる。

フットゴルフの奥深さ

 さて、ここからはフットゴルフの奥深さや難しさについても知ってもらいたい。まず奥深さだが、ルールは比較的簡単であるものの、ゴルフに通じる所があり環境を読む力が問われる。大まかなルールとしては、ボールを蹴って各コースのカップにより少ないキックでボールを入れるのだが、そう簡単にはいかない。キックの技術もそうだが、カップの位置やコースの特徴を見極める必要がある。芝や傾斜を考慮しないといけない点や、当日の天候によって環境も変わってくるなかで、いかにスコアをまとめていくかという戦略が勝負を分ける。

 では、難しさはどこだろうか。平野選手は「気持ちのコントロール」と答えてくれた。例えば、練習では決まるキックが試合では決まらない。ゴルフをイメージしてもらえるとわかりやすいのではないだろうか。これを決めれば優勝、あと数メートルでカップに届くという所で外してしまう……。そんな場面を見かけることがないだろうか。

 外す理由はおそらくプレッシャーだ。そう考えると、確かに気持ちのコントロールが問われる点は納得である。このプレッシャーについて、平野選手はサッカーに例えて「毎回PKを蹴るようなイメージです(笑)」と話してくれたが、凄く分かりやすい。ましてやPKとは違い毎回距離や蹴る場所は変わり、芝や天候にも左右される……。なるほど、フットゴルフは難しいスポーツだ。

フットゴルフ普及のカギ

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 サッカーとは違う楽しさや、奥深さ、難しさが魅力のフットゴルフだが、サッカーと比べると知名度には大きな差があるのが現状だ。フットゴルフを普及させるために必要なことは、日本人選手が世界の舞台で活躍することかもしれない。

 日本でスポーツの知名度が高まる時は世界の舞台で日本代表が勝っている傾向がある。2011年のサッカー女子日本代表によるワールドカップ優勝や、2015年ラグビーワールドカップの南アフリカ戦勝利などがその例だ。そういう意味では2021年に日本で開催される予定のフットゴルフのワールドカップは、まさに絶好の場だ。ここでの日本人選手の活躍がフットゴルフの普及や知名度向上の大きなカギと言えるだろう。

今後の展望

 平野選手に今後の展望を伺ってみた。まず、選手としては世界一の選手になることが目標。そして、「ワールドカップで優勝します」と話してくれた。平野選手は終始明るい表情かつ、穏やかな口調で受け答えをしてくれたのだが、言葉の端々で口調が強くなることがある。そこに選手としてのプライドを垣間見ることができた。そして、個人としては教育とフットゴルフを掛け合わせたことをしたいと話してくれた。実際に子供たちと触れ合う際に、フットゴルフの教育としての可能性を感じたようだ。フットゴルフを知ってもらい、笑顔になってもらいたい……そんな気持ちを胸に秘め、フットゴルフを普及させていきたいと語ってくれた。

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 最後に「平野選手にとってフットゴルフとは?」という質問をしてみた。フットゴルフのたくさんの魅力、奥深さ、難しさ、選手として感じる課題、教育としての可能性など様々な側面を語ってくれた平野選手が、この質問に対してどのように回答するのか非常に興味があった。「聞かれそうで聞かれたことなかったですね(笑)」そう笑いながら悩む平野選手。結果として出てきた言葉は「自分自身を表現できる唯一のもの」。自分からフットゴルフを取ったら何も残らない。選手としてフットゴルフ業界を牽引していくべく責任感。そんな思いが凝縮された言葉だと感じた。

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 2021年には日本でフットゴルフのワールドカップが開催される。地元日本開催ということで当然平野選手もワールドカップへの出場、そして優勝を目指している。直近ではケガの影響でツアーに参加できていないこともあり、まずはコンディションを整えてから国内で実績を残し、ワールドカップの出場権を獲得することが第一目標となりそうだ。ここでの平野選手を中心とした日本人選手の活躍が今後のフットゴルフ業界を占うと言っても過言ではない。

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