出会いたくなかった

 ゴキブリが自宅のキッチンに出た。ゴキブリといわれてみんなが想像する通りの典型的な容姿のゴキブリである。殺虫剤に描かれているリアルなイラストがそのまま飛び出してきたようないかにもなゴキブリだった。外出から帰宅後、キッチンの明かりをぱちりとつけると彼は少しも動かずじっとして触角だけをゆらゆらと動かしていた。私はそこで『きゃあっ!』などと可愛らしい悲鳴など上げられるような人間ならもう少し違った人生を歩んでいたに違いない。しかし、そうではないので彼の姿を見るなり「ゴキブリが出たぞーーーーーーーー!!!!!」とちょっとテンション高めに同居人に向かって叫んでいたのである。なにせ二、三十年ぶりの出来事である。そらテンションもあがってしまう。自宅以外では何度かお目にかかったことがあるが、物心ついたころから居住空間に侵入された覚えがまるでない。さらには彼の侵入を許した要因がまるで分からない。現在の住居の前に住んでいた場所の方がぶっちゃけ出会ってしまいそうだと心配していた。でもセーフだった。ゴミはちゃんと捨てている。掃除も頻繁ではないけど定期的にはしている。なぜだろう。
 ちょっとした非日常は平凡な日々に刺激を与えてくれる。かといってもう遭遇したくはないけど。いい対策あったら教えてください。毒餌剤は設置しました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?