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漫画の話.3 石黒正数

「それでも町は廻っている」と言う作品が好きです。
全16巻。めちゃめちゃ名作です。

主人公は、嵐山歩鳥と言う女子高校生です。
探偵に憧れ、近所の喫茶店でアルバイトをする普通の高校生です。
歩鳥の高校時代の3年間を話の軸に、学校や歩鳥が暮らす町の商店街が舞台となって友達や家族やさまざまな人が織りなす、群像劇です。

月刊誌「アフタヌーン」での連載なので、大体1話完結です。
季節感のある話がところどころ印象的に描かれていますが、実は緻密に計画的に時系列がシャッフルされていて、やがて1つの時間軸がちゃんとある事が判明します。

作者曰く「漫画は読み返しをしてもらいやすいメディアなので、繰り返し読む事で発見されるような仕掛けを多く取り入れた。ある事実を踏まえると、読み味が変わってしまう構成的な仕掛けなど。漫画でしか出来ない、ということを常に意識して描いた」との事です。

この事実を知ったとき、感服いたしました。

そんな作品、初めてです。
ひとつひとつの話が面白い上に、それらの話の繋がりを知ることで、余白が埋まるというか、想像力を刺激されて、言わずもがなを知るんです。

日常のほのぼのコメディが多いけど、SFやホラーっぽいものまでバラエティ豊か。でも根底には優しさとユーモアと、骨太なミステリー要素がある。

今連載中の「天国大魔境」も、現在めちゃくちゃ面白いです。
こちらの舞台は「それ町」と異なり、文明崩壊後の世界と、どこか未来っぽい学園で、2つの話が交互に進んでいく構成となっています。
始まったばかりの頃は謎だらけで、これからどうなっていくんだろうとワクワクしました。いくつかの謎が明らかになり、また新たな謎が生まれるサイクルが気持ち良い。最近では大きな謎が明らかになり、そうだったのか!と唸りました。

この作品も、ある事実を踏まえてから読み返すと、全く違う見え方をします。ネタバレはしたくないので、多くは語りませんが、超面白いです。


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