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旅の話.23 フリーマントル

ダイビングスクール

パースのやや南西に位置するこの街で、スクーバダイビングのライセンスを取得するため、約1週間過ごした。

先生2人、生徒12人で全員日本人のクラスだった。
生徒はみんな、近くのバックパッカーズに宿泊しているので、毎日遅くまで遊んで、ダイビングの勉強をしてまた遊んでと、忙しくも濃密で楽しい時間だった。日本各地の同年代が、それぞれ色々な理由で旅に出て、偶然今同じ場所でダイビングを習っている事の面白さを感じた。

午前は学科、午後は実習が多かった。
逆の日もあったけど、実習の後の学科は、みんな疲れて寝ちゃうのだ。
ダイビングの基本を習い終わったところで、オープンウォーターダイバーのライセンスを取得した。続けて、アドバンスド・オープンウォーターも受講する。

夜の真っ暗な海を潜る“ナイトダイブ”や、水深30m近くまで潜る“ディープダイブ”は、どちらも本能的な恐怖を感じた。ナイトダイブは視覚に頼れないせいか、方向感覚が狂う。天地すら分からなくなりそうだった。でも夜光虫はきれいだった。デープダイブは、水温の低さ、水圧の高さ、海流の強さを体感し、なんかちょっとのアクシデントで生命の危機になり得る怖さだった。

最終日は地獄のような1日になった。

今までは沿岸や桟橋からエントリーしていたが、最終日は船で沖に出て潜る。毎日タンク何本もの圧縮空気を吸っているため、頭がハイになっているのか、それとも単純に楽しいからなのか、体は疲れているのに夜眠れない。前日も、マコっちゃんと午前4時までビリヤードをしたり話したりして遊んでいた。体調管理は、完全に失敗した。

普段は穏やかな海みたいだが、この日は荒れていたようだ。乗り物酔いに強いと思っていた僕も、初めてのひどい船酔いを体験した。

出航してしばらくの間は、「風が気持ちいいねー」「海きれいだねー」と
明るい会話が聞こえていた。だんだんとみんなの口数が減り、横になる人が増え始めた頃、僕にも“あの嫌な感覚”が来た。
横になって安静にしていても治まらず、胃の中身を全部海へ吐き出した。
朝食べた、バナナとココナッツケーキのミックスジュースだった。
周りを見ると、僕と同じように海に向かってオリジナルジュースを吐き出している仲間が何人かいた。

ダイビングのポイントに着いた。
「潜ってるほうが楽だよ」と言われ、体は重く、頭は痛いけど潜った。
確かに船上にいるよりはましだけど、体調最悪な時にする肉体労働くらいしんどかった。船に戻ると気を失うように眠り。次のポイントに着くとまた潜り・・・・・・を、3回繰り返した。頭痛はどんどん酷くなっていった。
金属になってしまった脳みそを、金属のハンマーで叩かれるような痛みだった。

巨大なエイを見た。
空を飛ぶように泳ぐ神秘的な姿を、確かに見たんだけど、その話をしても誰も「自分は見ていない」と言う。あれは、夢だったのかな。

そして、船が港に戻り、僕の意識も戻った。
陸に上がった時の安堵感はすごかった。「人は土から離れては生きられないのよ!」と言った、シータは正しい。

ほぼ全滅状態の今回のボートダイブ、先生やスタッフ以外で何ともなかった人がいた。前日一緒に朝4時まで遊んでたマコっちゃんだ。何で平気なの?





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