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旅の話.69 ペルージャ④

リアル脱出ゲーム

ペルージャは山の上に作られた古い城郭都市なので、石造りの建物はだいたいどれも繋がっている。僕が泊まった安宿は、入口が山の上側にあるので、斜面に沿って下にも階がある。しかし、階段は簡単なバリケードで封鎖されていて降りられないようになっている。どうなっているのか気になる。

ある日、同室の台湾人ピーターとその話をしたら、彼も同じ事を考えてた。
「探検しよう」
と意気投合し、マグライトを持ってこっそり階段を降りてみた。
僕はただ探検が出来れば良かったのだが、彼の目的は脱獄だった。
この宿は0時が門限だ。彼はもっと遅くまで外で遊びたいと思っていた。
「もし外に出られたらビールを飲もう」
と、言うので僕も脱獄派になった。

下の階は工事現場みたいだった。
広い空間はむき出しのコンクリートで、脚立やレンガ、板などが置いてあった。増改築中なのかも知れない。建物が古いので雰囲気が怖い。
他の部屋もいろいろ探検した。
扉の向こうに草木の生えた庭を発見し、やった!外だ!と出てみたら崖の上の中庭だった。外には出られたけど、これでは街に行けない。
その中庭の外れに小屋があって、中を覗いたらベッドや机があった。
もう使われていないが、人が住んでいた形跡に少し緊張した。

迷路のように思わぬ所でつながっていて、面白かったけど結局街への出口は見つからなかった。

翌日の夜、ピーターが「もう1回行こう」と、誘ってきた。
実は昨夜、発見したけど「やばそう」だから開けなかった白い扉がある。
「あれ、開けてみよう」と言う。
防犯ベルとかが鳴ったらやだなと思ったけど、好奇心の方が勝り、開けに行った。鍵は2ヶ所の内鍵だけだった。案外すんなり開いた。
そしてピーターの期待通り、街へと続く裏路地に出ることが出来た。
これで門限を過ぎても帰って来れる。

脱獄成功だ。
ピーターはめちゃくちゃ喜んだ。
心配性な僕は、ちょっと不安を残しながらも一緒に街へ出てビールを飲んだ。ドゥオーモの前でクエンティン・タランティーノに似たオランダ人のストリートシンガーや、キャメロン・ディアスに似たアメリカ人のリサと出会い、一緒に夜中の2時まで歌って踊って遊んだ。
タランティーノは各地の広場で歌を歌ってお金を稼ぎながら旅をしているが、実は大学院生なんだだそうだ。
キャメロンは韓国で英語の先生をしていたそうで、少し漢字が書けた。

シエスタの習慣のあるイタリアでは、0時は日本の感覚で言う21~22時くらい。一番盛り上がっている時間だと分かった。

脱獄しなきゃ出会えなかった人達と楽しい時間を過ごせた。


つづく

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