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旅の話.18 カンガルー島⑤

オーストラリアには、“ハエは多いけど蚊は全然いない”と、これまでの旅で思っていたが、カンガルー島にはいた
最初の夜は油断していて、十数か所も刺され、痒くてよく眠れなかった。

ある日、印象的な2人の日本人旅行者と出会った。

源三さんは、ナチュラルに日焼けした、いかにもマリンスポーツ好きな感じの、30代男性で、ダイビングが目的でこの島に来た。確かサラリーマンで、転職して新しい職場で働くまでの長い休みを利用して、この旅行をしていると言っていた。

マイコさんは、小柄だけどエネルギーに満ち溢れた女性で、精神的に大人だなぁと思っていたら、なんと僕と同い年(当時22歳)だった。彼女もダイバーだ。

マイコさんは今、写真家の助手をしているそうで、その写真家の作品のスライド上映会が近くのホテルで開かれるから、良かったら見に来ないかと誘ってもらった。面白そうだから見に行った。ホテルと言っても、メインの建物にレストランとバーがあり、周囲にコテージが何棟かあり、プールとテニスコートのある、おしゃれなリゾートだった。隠れ家過ぎて、全然気が付かなかった。

上映会が始まるまで、プールサイドで3人で話をした。
森に囲まれたプールサイドで、時刻は夕方。当然、蚊に刺されまくった。
でも、源三さんだけは、なぜか本当に、全く刺されなかった。
「俺はなぜか、昔からそう言う体質なんだよね~」と彼は言った。

早めに建物の中に避難して、マイコさんから写真家やホテルのオーナーを紹介してもらった。写真家はジョージ・ルーカスに似ていた。
写真は、カンガルー島の風景や動植物を写したものだった。彼はハリモグラの研究家でもあるらしく、ハリモグラの説明では特別な熱意を感じた。小粋なジョークで会場は盛り上がった。

案外早く終わり、3人で食事をした。
近くのPIZZA BARで、メキシカンピザを食べた。初めて“生地を両手でクルンと空中に放り投げるアレ”を見た。店主はイタリア人なのか?だとしたら、メキシカンを頼んで申し訳ない。
PIZZAは辛かった。でもマイコさんはさらにタバスコをかけて食べていた。

いろいろな話をした。
2人はかなりの熟練ダイバーみたいで、話題がダイビングの話になると、僕は聞き役に徹するしかなかった。
ダイバーにとって、ある種のステイタスは、水中で出会った珍しい生物の種類や多さ、危険度など。マイコさんは自ら「運が良すぎる」と言うほど、多種多様な生き物と出会えたそうだ。内容を聞いた源三さんがビックリしていた。源三さんは逆で、どんなに確実にいる、高確率で出会える場所に潜っても、出会えないと言う、ガイド泣かせの人なのだそうだ。

そう言えば、蚊も寄ってこないもんな、と納得した。



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