バーレーン戦と中村俊輔の言葉(2008/3/27)

生地の初公開日:2008年 03月 27日

バーレーン戦の象徴的なできごとは、遠藤選手がスタメンにいなかったこと。
よほど体調が悪いのかと思っていたら、サブメンバーに名前があった。ということは、戦術的にスタメンからはずしたということだ。
いよいよ出たね、これが岡田色なのね。ということは中村憲剛選手が縦に蹴りこんで、山瀬選手や大久保選手がシュート打つんだと素人目にもわかる戦術。それなら昔からその戦術が得意な中東のほうが上をいくのは目に見えている。なら、それ以上のなにを持っているのか、どこに勝算を読み取っているのか?まさか、この試合も「お試し期間」というわけではないだろう。

遠藤選手がいないと言うことだけで、難しい試合になりそうだとの予感。
ボールをキープできる選手がいない。いやキープする気はないから外したのだろうけど、遠藤選手の存在意義はそれだけではなかったはず。なによりも何にも動じない落ち着きのゲームメイクと国際試合の経験値の高さが一番の価値なのに。その結果、前半はあわてふためいたようなぎこちないサッカーになってしまった。
後半、山瀬選手に代えて遠藤選手が出てきたとたん、日本のプレーが動き出したように見えた。
飛び出しと決定力で岡田さんの一押しの山瀬選手より、遠藤選手が機能するのはなぜなのだろう。それは、きっと信頼関係だと思う。鈴木選手、中村憲選手、遠藤選手がオシム時代から培ってきたプレーの信頼関係が機能し始めたのだと思った。この3人の連携は今の日本代表の要だと思う。中村俊輔選手が帰ってきても3人の連携は崩せないと思う。
それをまさか3次予選最大の正念場で崩してしまうとは。おまけに、加地選手まではずして内田選手で試してきた4バックを3バックにかえている。DF陣に戸惑いや連携の不安はなかっただろうか。選手たちのメンタル面も考えずやりたいシステムを試しましたでは選手たちがかわいそうだ。
岡田監督+大木コーチは、バーレーンを甘くみていたのだろう。海外経験のない監督たちの思い上がりを感じる。あなたたちは、中東をなめているのか!韓国、中国なんかより手強いし、身体能力も高い。おまけにアフリカ選手が帰化しているという情報もあったはずなのに。
いずれにしても、自分たちのスタイルが確立していないサッカーが負けるのは当たり前なのだ。

などと、偉そうなことを言っているが、これは中村俊輔選手の受け売り。
最新の「Number」(4/10号)に「CLバルセロナ戦を語るー中村俊輔」という記事があった。

カンプノウでの対戦を終えグラスゴーに帰ってきた直後のインタビュー。
この3ページにわたるインタビューには、日本のサッカーにとってものすごく貴重なものがたくさん含まれていると思う。
バルセロナのサッカーをこれだけ具体的に語れる人はいないだろう。中村選手が語る言葉からどのシーンかが分かる。そのときの観客には見えないピッチ上での細かい部分までわかるのだ。
以前からそうなのだが、中村俊輔選手は言葉にとても敏感な人だ。彼が通訳を使うことで語学力がどうのと言う人が多いが、彼はより正確なことを伝えたくてあえて通訳を通しているのだと思う。それはオシム監督が、かたくなに母国語でインタビューに答えていた姿勢に通じると思う。
その一例が、「今、理想のサッカーを上げるとバルサのサッカーか?」と言う質問に対して
「好きなサッカーはあれだね。理想というより好きなサッカー。あのサッカーが常に勝つとは限らないし、カウンター一発でやられる可能性もある。……」と答えている。
理想のサッカーと好きなサッカーとを言い分けるシビアーさ。中村俊輔選手の中では、サッカーはそれほどまでに細かく分類されているということ。その精密な分類やニュアンスを表現するには普通の英会話力ではおぼつかないはずだ。彼が如何に伝えることを大事に考えているかを感じさせる一面だ。

話をもどすが、そのインタビューの最後のほうで、バルサやビッグクラブとの対戦で感じたもの得たものは?と言う質問がある。
それに対して、「どの国にもそれぞれのサッカーの形がある。バルサにも形がある。その形の上に個人の能力がプラスされてチームの強さが増す。それを今後セルティックでも日本代表でもやっていかなければと思った。」と答えている。

監督が変わればサッカーが変わる。もうそんな時期ではない。日本のサッカーのスタイルが必要だということだろう。
それはオシム監督が日本代表監督に就任したときの言葉と似ている。中村俊輔は体験を通して、日本代表が今最も大事にしなければいけないことを伝えている。私たちは、もう少し彼の発言に耳を貸してもいいのではないだろうか。それは、宮本選手などW杯を経験し、いま海外にいる選手たちの発言に対してもだ。

そして、最後に中村俊輔はこうも言っている。
「……CL(チャンピオンズリーグ)という舞台には本当に強い相手しかいない。この先もできるだけCLでやれたらと思う。」と。

これこそが、中村俊輔ファンが最も聞きたかった言葉なのだ。

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