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【ちそうの学校#4 レポート】恐竜博士に聞く! 恐竜と長崎の関係

1月20日(水)に行われた第4回「ちそうの学校」。今回も内容と見どころをダイジェストにまとめてお届けします!

第4回は「長崎恐竜物語」というテーマについて、長崎市恐竜博物館準備室学芸員の中谷大輔さんをゲストにお招きしてトークセッションを行いました。聞き手は前回同様、長崎アートプロジェクト ディレクターの林曉甫(NPO法人インビジブル 代表)と同キュレーターの桜井祐(TISSUE Inc. 共同設立者)です。

■ゲスト紹介

中谷大輔(長崎市教育委員会 恐竜博物館準備室 学芸員)
1984年生まれ、北九州市出身。山口大卒。2012年鹿児島大大学院理工学研究科博士後期課程単位取得退学。同年から佐賀県立宇宙科学館(武雄市)学芸員。2017年10月から現職。

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トークセッションの様子(左上:桜井 左下:林 右下:中谷)

■長崎と恐竜

現在、長崎県野母崎では恐竜博物館が建設中です。開館予定は2021年10月29日で、急ピッチで工事が行われています。そもそも、なぜ長崎に恐竜博物館が建つのか……? まずは長崎と恐竜に関わる3つの背景から、中谷さんが解説してくれました。

    1.長崎県は恐竜化石の宝庫

(中谷)きっかけは2004年5月。長崎市で、とある動物の骨化石が発見されます。2010年にこの骨化石は恐竜の化石であることが判明します。なんと長崎県初の恐竜化石だったのです。
さらに2010・2011年と、調査するたび長崎での恐竜の化石は次々と見つかります。その後の2013〜2017年も引き続き調査を続けると、
国内初のティラノサウルス科の大型種の化石が見つかります。

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(長崎市で発見された主な化石の紹介)

上記の画像にあるように、長崎県では恐竜化石が調べれば調べるれほど出土するそうです。ついに大型種まで見つかるとは……!

    2.恐竜の名付け親は長崎にあり!

(中谷)恐竜は英語でDinosaur。直訳すると恐ろしい蜥蜴(トカゲ)という意味です。かつては蜥蜴(トカゲ)という文字を使った翻訳もありました。
日本人にとって何が一番イメージが湧きやすいか考え、竜という文字を用いたのが長崎県出身の横山又次郎先生。横山先生は出島で代々オランダ通詞を生業としていた家の方です。ドイツで古生物学を学び、日本で最初に古生物学の授業をされたことから「日本の古生物学の父」と呼ばれています。横山先生は多くの教科書を残しており、その中で初めて「恐竜」という言葉が使われています。

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(恐竜という漢字の変遷)

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(横山先生の書籍の中で恐竜という文字が用いられている)

    3.長崎県で日本初の恐竜化石を発見か!?

(中谷)1962年、長崎県長崎市にある高島炭鉱で骨を掘っているときに恐竜の化石が発見された、という報告があったのです。その後の調査から結局化石は哺乳類であったことが判明したものの、当時は日本に恐竜はいない、もしくは恐竜の化石は見つかりにくい、とされていたため、この発見は研究者たちの固定概念を覆す大きな働きをしたのです。

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(高島炭鉱で発見された化石)

中谷さんの説明で、長崎県と恐竜の密接な関わりがわかりました。

■恐竜博物館の見どころ

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(博物館の一部のイメージを紹介)

続けて、現在建設中の恐竜博物館の詳細や見どころを教えてくれました。

恐竜だけでなく、絵の上部には鳥もいます。窓もとても大きいし景観も美しいですね。しかし通常、博物館は窓を小さくして、建物に光が入らないにすることが一般的。なぜ恐竜博物館にはこんなに大きな窓をつけることができるのでしょうか。

(中谷)野母崎は渡鳥が通過する場所であり、また希少鳥類も訪れる場所なので、鳥についても紹介できる場所にするつもりです。
他の博物館との大きな違いは窓です。通常の博物館は窓を減らし、標本が光の影響を受けないようにします。しかし長崎の恐竜博物館は完全に北向きで、紫外線除去のフィルムを貼っています。さらに化石や岩石という日光の影響を受けにくい標本の展示が基本になるので、大きな窓をつけることが可能です。

窓からは海や軍艦島が見えるのだそう。恐竜の歴史とともに、野母崎の景色まで楽しめる空間になるのですね。

(中谷)博物館の一番の見どころといえばT.rex(ティラノサウルスレックス)の全身骨格レプリカです。
資料の写真はオランダに展示されている本物で、ティラノサウルは全長13メートルで世界最長、全身の8割が発見されていて保存状態も非常に良好です。
このレプリカはまだどこにもなく、今回特別に長崎市で作る許可が降りました。普通はできないことです。

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(オランダ、ナチュラリス生物多様性センターに展示されている本物のT.rexの写真)

全長13メートル!見応えは十分ですね。早く博物館でティラノサウルスが見たいです!

■恐竜博物館への想い

長崎と恐竜の繋がりから始まり、恐竜博物館の見どころについても熱く語ってくれた中谷さん。恐竜博物館建設に際して、どのような想いや目標があるのでしょうか。

(中谷)私としては恐竜はあくまできっかけで、恐竜を介して何かと繋がって欲しいと思っています。例えば恐竜はアートととも繋がりがあって、復元画や模型を作るためには、想像力を働かせる必要があります。恐竜を媒介に、いろんな方向に進むきっかけを与えられたら嬉しいです。
また、長崎南部に少しでも多くの人に来ていただき、地域の魅力を見つけてもらえたらと思います。

トークではその他にも、恐竜と海竜の違いや、なぜ人は恐竜に惹かれるのかなどなど……視聴者からの質問まで語り尽くしています!全容はぜひ、下記リンクよりご視聴ください!

以下のリンクから視聴できます


■おわりに

「ちそうの学校」もあっという間に第4回。今回はちそうの中に潜っている「化石」、そしてかつてその地に存在していた「恐竜」に焦点を当てました。織りなすちそうを調べることで繋がった「恐竜」と「長崎」には、時を超えた不思議な結びつきを感じます。

ゲストによって異なる様相を見せるトークショーの次回は2021年2月17日(水) 19:30〜、以下よりご視聴いただけます。どうぞお楽しみに!

▽テーマ
ちそうの学校 #5 「埋もれた民衆史」

▽日時
2月17日(水) 19:30-21:00

▽配信URL
https://youtu.be/udV7xh5RGC0

▽ゲスト
VIDEOTAPEMUSIC(映像ディレクター/ミュージシャン)
映像ディレクター/ミュージシャン。地方都市のリサイクルショップや閉店したレンタルビデオショップなどで収集したVHS、実家の片隅に忘れられたホームビデオなど、古今東西さまざまなビデオテープをサンプリングして映像と音楽を同時に制作する。VHSの映像とピアニカを使ってライブをするほか、MV 制作、VJ、DJ など、活動は多岐にわたる。

森元斎(哲学者/長崎大学 准教授)
1983年東京都生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。博士(人間科学)。専攻は、哲学・思想史・文化研究。日本学術振興会特別研究員、パリ西ナンテール(旧パリ第十)大学文学部哲学科研究員などを経て、2019年4月から長崎大学多文化社会学部准教授。著書に『具体性の哲学 ホワイトヘッドの知恵・生命・社会への思考』(以文社、2015年)、『アナキズム入門』(ちくま新書、2017年)。

▽聞き手
林 曉甫(長崎アートプロジェクト ディレクター/NPO法人インビジブル 代表)、桜井 祐(長崎アートプロジェクト キュレーター/TISSUE Inc. 共同設立者)


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