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[木造住宅]基礎床面の鉄筋を安全に減らしたい

制度や事情で失いつつある大事な生活環境

あなたの暮らしの環境で、生物としての人に、欠かすことの出来ないものは何でしょうか。
住居と支える大地は、工業化された近代社会以前は、今よりも手作りや木製のものが多く、工業化が進み強磁性の鉄などを使うことが増え、手作りのものも少なくなってきた現在とは、人に与えそうな環境負荷の違いを、感じる人は多いのではないでしょうか。
私がその違いを目の当たりにした、2つの機会について、書き留めたいと思います。

2つの環境づくりの学びの機会

先月11月に「炭埋」の学びの機会を、北海道のある建築現場の地業工事でいただき、磁性の理解に一歩踏み出しました。その学びも詳しくは、いつか記事を書けたらと思います。
建築士として、制度化されている構造体や仕上材に、計画時の選択で、重きを置いていることを改めて感じ、制度化されていない磁性などの視点を加味した選択肢も、身に着けて行きたいと思っているところです。

その2ヶ月ほど前に、同様に土地を癒やし、大地や植物が息苦しくない環境をつくっている、環境再生医の矢野智徳さんの活動映画「杜人」を見ました。その実践のワークショップにも参加させていただき、そこでの学びと、炭埋勉強会での気づきと重なった課題に感じる建築関係制度や、業界の事情などで考えられることを、整理してみたいと思います。

木造住宅で使われる鉄筋コンクリートの事情

戸建住宅を木造などでつくる場合ですが、昭和56年と平成12年の建築関係法令改正後、それまで必要としなかった鉄筋の入ったコンクリートを、基礎床面に作る割合が高くなってきています。

そして、鉄筋コンクリートを安全のメリットと捉え、マストではない鉄骨造2階以上の床でも、床に鉄とコンクリートを使う機会が増えました。
それらは業者がお客様を想ってのことだったり、お客様も安心を買いたいから、その傾向にあるのだと思います。

建築確認申請時に地盤調査をして、ある一定以上の地耐力があれば、床版は土で布基礎が可能です。
しかし現在は、床版が鉄筋コンクリートのベタ基礎とする方が多く、布基礎が使えない地耐力の弱い場所に、多くの家が建てられるようになってきていることは、土地の価格や生活コストなど様々な事情が考えられると思いますが、熟考していただきたい要素だと感じる様になりました。
布基礎でも、鉄筋コンクリートで土間を作るケースも増え、木造でも実は鉄筋コンクリートに近い、素材環境の家が増えている状況です。

省エネルギーで断熱にフォーカスすると、気密性が重要になり、基礎周辺でも気密性確保が必要となりますが、こちらも床材裏面の断熱で、どれだけ充足できるか、問題なければコンクリートを減らして、建築することを考えていく必要がありそうです。

福祉住環境の段差解消と鉄筋コンクリート

福祉住環境の分野で講師をさせていただいています。そこでは、段差での上り下りの軽減にフォーカスすることになり、コンクリートを使って床高を抑えることが、真っ先に選ばれていることが多いと感じます。(建築基準法施行令22条但し書きで、床下をコンクリートで覆う場合などで、地面から床面までの45cm以上の規定が緩和されます。)
でも細かな規定もあり、それによる対応や、段差を別の手段で解消するなど、ここでも鉄筋コンクリートは減らすことが出来るため、慎重に選べる環境をつくっていくことの重要さを感じています。

大地の水はけと鉄筋コンクリート

こちらも今年のこと、映画「杜人」を見て直ぐに、環境再生医の矢野智徳さんの、八ヶ岳竹早山荘でのワークショップを、中学3年の息子と一緒に受講しました。
そこでは、風の通る草刈り、澱まない水みちづくりを、座学と周辺の森で経験してきました。
河川を囲む圏域や、沢や尾根などの地形の影響を考えることと、土木工作物で堆積されているヘドロなどの課題を認識させられました。

数値の根拠は確認申請などには必要です。
でも地盤調査をしたときの地耐力値だけでなく、圏域や地形などを把握することで地耐力値の根拠を見つめ、床面の鉄筋コンクリートなどを減らしても安全に使える計画をまとめる事により、失われつつある必要な環境は、少しでも救われると考えるようになりました。
そしてお客様と一緒に、建築だけでなく周辺環境まで把握し、比べながら決断していってもらうことが、その後の生活環境のための、建築時に重要な判断材料であること、素材と磁性の特徴の勉強を重ねていきたいと思います。


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