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グアムのピーター「旅をすることって、そこでの出会いを愛すること」

僕が幼い頃、初めて海外に行きたいと熱を持ったのはヨーロッパでした。

お洒落すぎる建物や街並み、あの雰囲気を肌で感じてみたいと。

それから、東南アジアだけでもタイはバンコク、パタヤ、フィリピンはマニラ、ベトナムはダナン、ホーチミン、フーコック島、インドネシアはバリ、中国は上海、香港、マカオと旅をしてきました。

安いホステルかほぼ野宿で、予定を決めずに自由を楽しむのが、旅のスタイルです。

絶対の楽しみは、現地特有の音楽を聞くこと。

ストリートでのカラオケ大会や、クラブでライブをやっているアーティストにマイク借りて飛び入りさせてもらったり、割とアグレッシブなことにも挑戦します。

各地の音楽に触れる度に感じた『本質的な心躍る音楽』を、自分なりに解釈して伝えていきたくて、

足を運べる所へは行って、運命に従って経験してきました。

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グアムへの滞在は3回目。

この旅には「とある人に思い出の品を見せに行く」ひとつの目的がありました。

それは数年前にグアムを初めて訪れた際、ピーターというおじいちゃんと仲良くなったことから始まります。

ピーターはタモンビーチ沿いにある、人気の少ない草木の生茂った所でテント生活をしていて、数台所持しているSUP(スタンドアップパドル)を貸出して、生計を立てていました。


朝、ピーターのテントへSUPを借りに起こしに行くと、寝込みを襲われたと勘違いしてナタを持って出てくるのが滞在中の日課です。

しかし寝起きで不機嫌でも、

ABCマート(コンビニ)で買ったBudweiserビールを1ケース(350ml 6本入り)を渡せば、

ムスッとしながらタダでSUPを貸してくれる優しいおじいちゃん。


昼頃にはお酒も回って目が覚め気分が良くなり、

男はみんな「My son」

女の子はみんな「My daughter」になります。


集まってきた各国の人達に、ピーターは自分のBBQセットで「チャモロ、チャモロ」と連呼して、

よくチャモロ料理を振舞ってくれました。



ピーターの背中には、子供が書いたくらい下手くそな両腕のない女の人のタトゥーが入っています。

何故このタトゥーなのか?

元軍人で戦地に赴いた際、自分が戦死してバラバラになっても、直ぐに仲間に分かってもらい祖国に持ち帰って貰えるようこのタトゥーを入れたと、ピーターはそれが気になった僕に答えてくれました。

悩みがなさそうに陽気にしているピーターが眩しく見えたのが印象的です。


その話の後、「ガーディアン、ガーディアン、これは御守りだ」とピーターは小さな像をくれました。

ありがとうと言って受け取り、代わりに僕はピーターのテントに油性マジックでサインをしました。


2度目の滞在も同じ場所でピーターと再開することができ、

いつも通り缶ビールとSUPを交換し、

各国の見知らぬ観光客とBBQをして、

前回と同じ僕スタイルのグアム滞在を楽しみました。

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それから数年の時が経ち今回のグアム滞在に至ります。

ピーターの元を訪れることを楽しみにして準備をしていたのですが、僕を覚えてるか不安。

そこで、ずっと部屋に飾ってあった、あの日『僕のサインと引き換えに貰った御守り』を見せに行こうと、リュックの中に詰め込んでグアムへ出発しました。


空港に着き、あの懐かしいグアムの匂いが鼻を抜けて、久しぶりの滞在に胸が踊ります。

早々とタクシーにホテルの名前を告げ、チェックインを済ませ、部屋に荷物を置いてリュックだけ背負い、すぐにホテルを出てビーチへと向かいました。


少し歩いていると僕は異変に気付きます。

いくら見渡せどあの頃の知った顔は誰一人いないのです。

スクランブル交差点でナンパばかりしていた ジャスティン、
いつもお客さんを捕まえられないでうなだれていた ジャック、
高身長日本語ペラペラ マルちゃん、
踊り始めると止まらない ケスラ、

大好きだったBrixピザのお店、、個性豊かなあのグアムの住人達やお店は一体どこへ行ってしまったのだろう?

不安が過ぎる中、ピーターはきっとタモンビーチで待っているはず、、そう自分に言い聞かせて、少しメインの砂浜から離れたピーターの元へと向かいました。

近づくにつれて、あの日の楽しかった記憶が蘇ります。


しかし、あの薄汚い黄色のテントも、波打ち際に繋がれたSUPも見当たらない。

そして生い茂った草木の奥を覗いても、そこには何も無く雑草が高く伸びていました。



僕はそっとあの日くれた御守りを、ピーターのいたテントの場所に置いて、

少しの間眺めた後に手を合わせて、その場を立ち去りました。



あの瞬間、改めて僕は大切なことに気付きました。


旅をしているといつも、二度とここには戻れないかもしれないと思う。

それは人に対しても、場所に対しても。


だから必ず別れる時には「また会おう」と笑顔で手を振る。

だって、またその場所に行けば、あの日の笑顔が待っててくれるような気がするから。


でもそうじゃないんだ。遠い異国の地へはなかなか行くことが出来ないけど、

どんなに傍にある毎日ですら、ずっと変わらないものなんてない。


だから今、輝くその一瞬一瞬をもっと大切にしなくちゃいけない。

ありがとうピーター。また会おう。


Rest in peace.


□ ライター Zen

「旅人⇔歌い手⇔経営者」の三足わらじ。幼い頃から地球儀をずっと回して眺めている子供だった。5歳からピアノを始め、音楽の世界に慣れ親しむ。海外の広い世界に憧れ、時間の許す限り東南アジア贔屓に旅を始める。行った先各地の文化的な音楽を聞くことが楽しみ。趣味はキャンプ。バンドのボーカルとしても活動中。


■編集後記

今回のグアム滞在を経て僕が学んだことは「輝くその一瞬一瞬をもっと大切にしなくてはならない」これに尽きる。

天気が晴れたり、雨が降ったり、仕事が忙しかったり、友人と過ごしたり、家族で過ごす時間だったり、例をあげればキリがないが、どんな時間も「輝かせられる」かは自分次第である。

僕はまたグアムに訪れる日が楽しみで仕方ない。

何故なら、新たな自分を見つける旅は続いているから。

次の旅先は一体何を教えてくれるのだろう。


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