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ベンチャーディールズ(8) アーリーステージの資金調達はとても重要/ Venture Deals - Stages

以下、米国VC・Foundry GroupのBrad FeldやJason Medelsonが毎年2回提供しているオンラインコース(無料)、Venture Dealsの講義内容が素晴らしかったのでまとめてみました。

今回は「Stages」のセッションを和訳してみました(和訳することについてはBrad Feld氏と直接コンタクトし、許可を得ております)。他のセッションも順次アップしていく予定です。是非ご一読下さい。

なお、Venture Dealsについては、本でも出版されており、ベンチャーキャピタルを理解する上でとても勉強になる、シリコンバレーVCにとってのバイブルなので、是非ご一読ください。

(以下、講義和訳)

1. シードステージの資金調達条件はなぜ重要か

このセクションでは、資金調達プロセスのさまざまな段階(主にシードステージ・レイターステージで区分)で発生する、いくつかの事項について説明します。

(クリント)シードステージにおける資金調達条件及び投資家の構成が、後々のステージでの資金調達に与える影響、例えば制約等があれば教えてください。

(ブラッド)シードステージの資金調達は非常に重要です。多くの場合、ここで決められた条件が、後々のラウンドでも踏襲されるからです。
シードステージのタームシートの内容が非常にシンプルで軽量であれば、次のラウンドの交渉は容易になります。一方で複雑でエキセントリックな用語や条件が散りばめられたりしていると、次のラウンドでの交渉が面倒なことになりがちです。

シンプルかつクリアな条件で資金調達を行うことが重要です。もし投資家がアーリーステージの段階で資金調達条件に細かい注文と交渉をしてきて、非常に複雑なタームシートに仕上がった場合、その内容は後々のラウンドでもそっくりそのまま引き継がれる傾向にあります。

もう1つ気に留意しておくべき点は、アーリーステージの投資家が後々のラウンドまで充分支援できるかどうかです。彼らは顧客・弁護士・事業パートナー等のネットワークを活用し、あなたのビジネスを助けるでしょう。

もしそうでなければ、彼らはエンジェル投資家 (Angel Investor) ではなく、悪魔の投資家(Devil Investor)です。彼らはあなたを助け、サポートしようとすることに集中せず、代わりに彼らはあなたをコントロールしようとします。彼らは後々の資金調達にまで顔を出し、あなたの事業の成功を邪魔してくるのです。

2. よくないシード資金調達事例:パーティラウンド

(クリント)間違った投資家や条件を選択したが故に後々の資金調達ラウンドで問題を引き起こしてしまった事例を1つか2つを、教えてくれますか?

(ブラッド)もちろんです。まず一つ目は「パーティラウンド」の事例です。私はシードラウンドの時点から多種多様なベンチャーキャピタルから資金を調達している企業に常に出くわします。とある会社は、シードラウンドで1名〜3名程度の投資家ではなく、非常に小額の資金のために7名〜8名の投資家を抱えていました。

こうした事例は俗に「パーティーラウンド」と呼ばれ、多くのVCが「何か良いことが起きればいいな」と期待しながら小額のお金を皆で出し合う方法でです。その後、実際に良いことが起こった場合(投資先の事業がうまく行った場合)、次のラウンドで各投資家で激しいシェアの争奪戦があるのです。

私はこのパーティラウンドに参加する投資家でないのに、次のラウンドで資金調達を、新規投資家である私から受けよう、と話を持ってくる起業家が時折います。シードラウンドにおける投資家たちが皆、次のラウンドでも参加するにもかかわらず、です。そこで私がする最初の質問は「なぜパーティラウンドの投資家のうちの1人か2人が、今回のラウンドの資金調達をリードしようとしないのでしょう?」というものですが、それについて特に良い答えは今まで一度もありませんでした。

パーティーラウンドを経験した企業に対し、後々のラウンドで投資をしたケースは私もいくつかありますが、さらにその後のラウンドではパーティラウンドに参加したVCの参加は望んでいませんでした。一方で、会社のビジネスが成長・前進していたため、彼らが資金調達への参加を強く希望し、交渉が非常に難しくなりました。

一番最初の資金調達ラウンドの構成は非常に重要なのです。

3. よくないシード資金調達事例:エンジェル投資家による多額の介入

二つ目の事例は、「シードファイナンスで多額のシェアを出したエンジェル投資家がいる場合」です。エンジェル投資家は、後続のベンチャーキャピタルによるラウンドの評価または条件の観点で、何か良いことが起きないか、とある程度の期待を抱くのですが(例;バリュエーションが何倍にも跳ね上がらないか)、その期待は、基本的なVCによるファイナンスとは全くかけ離れたものです。そうしたVCの目線と自身の期待値のギャップが激しいエンジェル投資家は、シードラウンドへの投資額が大きいため、資金調達プロセスを実際に妨げてくる可能性があります。

4. よいシード資金調達とは?

(クリント)では、逆に、あなたにとって「おお、それは素晴らしいね!これなら安心して夜も眠れるよ」と思えるようなシードラウンド構成はどのようなものですか?

(ブラッド)2つのタイプがあります。 1つは転換社債のラウンドです。条件が(エクイティラウンド対比で)軽量であり、割引転換社債です。それはプロラタ条項とかそれに類するような面倒で派手な条項がありません。

もう1つの例は、「Light Preferred」と呼ばれる、シードラウンドまたはシリーズAラウンドにおける優先株シードです。これはシンプルな残余財産優先分配権(Liquidation Preference)のみが付与され、会社清算時の参加権(Participation)参加なし、新株発行を優先株主がブロックするための保護条項(Protective Provision)はほぼ付与されるケースなし、複雑な取締役会の構成の規定もない、という極めてシンプルなものです。会社がうまく行かなくなるダウンサイドケースにおいて、投資家が主に得ようとしているのは、自分たちが出したお金を返してもらう権利のみです(それ以上を取りに行こうとはしていません)。

シードラウンドのこのいずれか2つのタイプだと、次のラウンドの資金調達条件はシンプルになり、比較的論争の種にはなりません。シードラウンドの条項に多くの条件や権利等を追加すると、新規投資家・既存投資家と多方向での交渉がその分多くなります。

(クリント)資金調達条件面の話はわかりました。投資家の面ではどうですか?パーティラウンドのことをあまり良く思っていないように見受けられるけど、あなたが思う、シードステージでのベストは投資家構成とはどんなものですか?

5. パーティラウンドの顛末とは?

(ブラッド)パーティーラウンドがあまり好きではないかどうかは私もわかりませんが、それほど効果的な資金調達方法ではないと思います。 これまでパーティラウンドについては3種類の顛末を見てきました。

1つ目は成功事例です。会社が非常にうまくいき、誰もが次のラウンドで投資したがっている、というケースです。

2つ目はよくありがちなケースですが、会社のビジネスは進展しているものの、一部投資家にとっては満足のいくほどの進捗が達成できていない、という場合です。既存投資家の中には引き続きサポートしたいと考える者と、サポートしたくない者が出てきます。誰が次のラウンドでサポートするか・しないかについて、大きな動きが出てきます。

3つ目はダウンサイドケースですね。ビジネスがうまく行っておらず既存の投資家がサポートしてくれないため新しい投資家を見つけようとしている、というケースです。

ああ、4つ目のケースがありました。起業家が、多数のVCが出し合った小額の資金と、彼らの出資時の口約束の結果に満足していない、という状況です。こんなこともサポートできますよ、あんなこともしますよ、というから投資家の出資を受け入れたのにほとんどその約束を果たしてくれていない、という状況です。

6. シードラウンドにおける最適な投資家構成とは?

私の経験では、シードラウンドの最適な投資家構成は、次の2つのうちいずれかとすべきます。1つ目は、エンジェル投資家から構成されており、そのうち数人がリード投資家となり、残りがフォロワーであること(リード投資家を明確であること)。リード投資家はあなたの会社と積極的な関与を持ち(それは必ずしも取締役会メンバーになるというわけではありません)、アーリーステージの事業を真に本当に助けてくれる投資家です。

2つ目は、1〜2社のVCによるシードラウンドであり、これらのVC投資家は会社がまだ若い段階から積極的に関わりサポートを行います。

この2つのケースが最も成功していると思いますし、起業家にとって良い構成です。

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