なぜVCはNDA(秘密保持契約書)の締結を嫌がるのか
過去、ベンチャーディールズの和訳の記事の中で、「なぜVCにNDAの締結を求めるべきではないか」についてを少し記載しましたが、その理由の詳細について書籍版Venture Dealsにて記載されている該当箇所を下記、記載します。
(以下、意訳)VCにNDA(秘密保持契約)の締結を求めないでください。ほとんどのVCはあなたの会社のビジネスアイデアや革新性、独自性を尊重しますが、VCがスタートアップから受け取るビジネスプランは非常に数が多く、これまでも同じような内容のビジネスプランを見てきた可能性が高いです(なので締結しても意味がないです)。また、NDAがあると、共同投資を行ってくれそうな他のVCに対して、あなたの会社について紹介することに躊躇してしまいます。
NDAがなくても、信頼できるVCであれば、あなたのアイデアを話すことについて恐れる必要はありません。VC業界は小さいので、ベラベラと個別企業の情報を話していたら信用できないVCだと思われかねずに信頼は失墜し長続きしません。また、VCがあなたのアイデアを盗んで会社を興すこともありません。風評上のリスクの観点からも、またVCの時間の制限の観点からも、たいていこのリスクは排除されます。時折、悪徳業者に出くわすこともあるかもしれませんが、下調べを事前にしておけば大丈夫でしょう。(意訳終)
完全に投資家側(VC側)の理屈に偏っている気はしますが、NDAを結んでも、同じようなビジネスアイデアは過去見てきたことが想定されるため、どこからどこまでの情報が個社固有のもので、どこからどこまでの情報を用いて、将来競合他社に投資してしまう恐れがあるのか、把握できない。したがって、NDAに縛られてしまうと、今後同業他社の投資を行って「NDA違反だ」と言われた場合、説明に困り泥沼の訴訟に陥る可能性もある、ということだと理解しております。米国シリコンバレーでは確かにNDAを米国スタートアップとは結んでいる事例を見ませんでした。そもそもシリコンバレーのVC界隈は狭い村社会なので、変なことをしたらあっという間にVCの間でもスタートアップの間でも信用が失墜し、その場にいられなくなる、という特殊な環境がNDAを不要とさせているのだと思われます。日本で結ぶ場合はまた違った論点やリスクがあるのかも知れません。
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