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ベンチャーディールズ (4)タームシート概観 -Venture Deals / Term Sheet Overview-

以下、米国VC・Foundry GroupのBrad FeldやJason Medelsonが毎年2回提供しているオンラインコース(無料)、Venture Dealsの講義内容が素晴らしかったのでまとめてみました。

今回は「Term Sheet Overview」のセッションを和訳してみました(和訳することについてはBrad Feld氏と直接コンタクトし、許可を得ております)。他のセッションも順次アップしていく予定です。是非ご一読下さい。

なお、Venture Dealsについては、本でも出版されており、またこちらもベンチャーキャピタルを理解する上でとても勉強になる、あるシリコンバレーVCにとってのバイブルもしくは古典的名著のような本なので、是非ご一読ください。

今回の「タームシート」ですが、そもそもの資金調達の全体像のうち、どのプロセスに該当するのか把握すべく、以下、資金調達全体のプロセス概観をまとめておきました。今回の講義は③及び④に該当します。

<資金調達プロセスの大まかな流れ>

①投資家(VC)探し
②投資家との基本交渉
③タームシート提示・交渉
④タームシート調印
⑤本契約書面の作成
⑥本書面の交渉
⑦リード投資家との合意
⑧他投資家への書面提供
⑨Board&Shareholder Consent
⑩サインページ収集&クロージング

(以下、講義和訳)

(クリント)「タームシート」とは何?

(ジェイソン)ベンチャーキャピタリストとの取引を構成するすべての条件の基礎となるシートです。資金調達において、本契約の前に交わされるシートになります。

残念ながらタームシートは1ページで終わる分量ではありません。2、5、7、9ページの分量で済む場合もありますが、中には50ページに及ぶこともあります。執筆は一般的に弁護士が行うもので、プリンターで印刷すると非常に分厚い書類になります。

でも安心してください。タームシートで重要なポイントは2つだけです。

それは「Economics」(経済条件)と「Control」(支配権)です。ベンチャーキャピタリストも起業家も、これら2つのことに重点を置いて交渉をすべきなのです。

もし両者がEconomicsやControlに以外の条件で争っている場合、的外れな事項ついて交渉している、ということになります。これは、この先この相手とはうまくやっていくことはできないな、ということを示す前兆と考えるべきです。

Economicsにおけるポイントは「あなたの会社の価値はいくらですか」「あなたの会社の持分をどれだけ購入できますか」「あなたの会社が清算する際、優先的配当を得ることができますか」と言ったことです。

Controlとは、VCのメンバーのうち誰かが、スタートアップの取締役メンバーになり、経営に参画する権利を得ることです。VCにどの程度の権利が付与されるか、などについても取り決めます。

これら2つのこと以外はさほど重要ではありません。準拠法の管轄、表明保証条項など、ほぼ定型文言が述べられている条項ばかりです。が、もしそれらについて交渉しているのであれば、そのスタートアップとVCはその時点で問題を抱えています。

(クリント)タームシートを作成したら、そこで謳われている条件は、本契約に記載される条件とどの程度類似していますか?変更を加えることはできますか?

(ジェイソン)変更は可能です。 起業家であれば、その変更に対し、相手側のVCが誰なのかに応じて、さまざまな反応を示します。 「OK」で済む場合もあれば、イラついた様子で「ちょっと待って。そこは前にタームシートで合意したはずですが」と言ってくる起業家もいます。

確認ですが、起業家・VCお互いが10年以上付き合うという関係性を前提にすれば、ここではどう振る舞うのが適切なのでしょうか

タームシートを調印し終えたら、その時点で取引は実質完了したと考えるべきです。高いレピュテーションを得ているベンチャー企業とVCの間ではそれが不文律です。もしそれでも本契約で条件変更せざるを得ないとすれば、それは、デューディリジェンスを行っている中で当初予想していなかった重要な事実が判明したり、大幅な環境の変化が起こった場合などに限られます(安易にタームシートからの条件変更などすべいではないのです)

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