なぜスタートアップが取り組む課題は、安易なものより困難なものがよいのか by サム・アルトマン
元Y CombinatorのCEOで現在Open AIのCEOであるサム・アルトマンがスタンフォード大学の授業で語った興味深い内容がX(旧Twitter)で掲載されていたので、以下参考和訳を記載しておきたい。
このサム・アルトマンの講演の主旨は「起業家よ、困難な課題に取り組め!」と奮い立たせることにも聞こえるが、スタートアップ投資を行うベンチャーキャピタリストの観点からも、一理ある言葉を述べているように思える。
つまり、「安易な解決課題を行うスタートアップより、難しい課題に挑戦するスタートアップのほうが莫大なリターンが見込める」と言っているようにも聞こえるのだ。
ここでいう「難しい課題」とは、SpaceXのように宇宙を目指すようなムーンショットでも、日常に潜むものでも何でもよい。
例えば、ITサービスにおける安易な課題と難しい課題を挙げてみたい。
端的に言えば、「コスト削減ツール=安易な課題解決」であり、「売上向上支援ツール=難しい課題解決」である。
よく言われるように、企業にとってコスト削減計画はサイエンスの世界の話であり、収益計画(クロスセル、アップセル、新規顧客獲得)はアートの世界の話である。
アートの世界、は言い過ぎにしても、売上高というのは顧客の意向や市場環境等の影響を大きく受けるため、予測不可能な不確実性が残ってしまう。それがアートと言われる所以である。
一方でコスト削減は自社の自助努力で可能な部分が多く、計画さえきちんと立てれば目標実現性は高い。これがサイエンスと言われる所以である。
そして前者の売上増加という困難な課題に取り組み、大成功を収めたのがマーク・ベニオフ氏のSalesforceを始めとするセールスサポートツールなのである。
また、「難しい課題」は明確なゴールが存在しない。
ITサービスで例えれば、コスト削減には明確なゴールが存在する一方、売上向上策には最終ゴールも存在しなければ、またそれを実現するための最高のセールス手法も存在しない。ただ、その最終ゴールや最高のセールス手法に向け、ほぼ永続的に改良・前身を繰り返していくのみである。
終わることのない課題に取り組むスタートアップは、終わることのない成長を遂げる可能性も秘めている。その広大な成長性を秘めたスタートアップに対しては、ベンチャーキャピタルにとっても投資の妙味が生じる。
サム・アルトマンの発言にはこうした投資家としての目線が含まれた言葉であるように思える。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?