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VCによるスタートアップ評価方法

過去3年半、自分自身がシリコンバレーのベンチャーキャピタルに出向していた経験、及び著名ベンチャーキャピタリスト、著名アクセラレータの著書・講演会から学んだことを、まとめておきたい。

スタートアップのステージ(創業期〜レイターステージ)に関わらず、大きくサマライズすると、評価ポイントは「1. チーム」「2. プロダクト」「3. 市場」に集約される。それぞれ、主要チェックポイントは以下の通り。

1. チーム
・創業者のバックグラウンド(どんな経験をしてきて、どんなスキル・能力があるか。連続起業家だと尚良い)
・スタートアップの解決したい課題・所属する業界に対し、適切なチーム構成となっているか(いわゆるFounders Market Fit。自分たちの経験・強みを活かした土俵で戦っているか)
・創業者は自分の事業を信じ、周囲を巻き込むリーダーシップがあるか
・ビジネスアイデアを実現させるための実行力があるか

2. プロダクト
・どんな顧客に対しなぜそのプロダクトを提供するのか(Product Market Fitに通じる考え。Product Market Fitについては別途詳細説明)
・あなたのプロダクトはNice to Haveか、Need to Haveか(別途詳細説明)

3. 市場
・十分に巨大な市場を狙っているか
・現時点における定点観測ではなく、将来の成長性も踏まえた動的な市場規模、ストーリーが語れるか

上述のポイントは全て、シリコンバレー著名VC Andreessen HorowitzのManaging Partner, Scott Kuporがその著書"Secrets of Sand Hill Road")にて記載している項目である。

それでは、最難関アクセラレータと言われるY Combinatorは、これら3項目についてどうコメントしているのだろうか。以下、Sam Altmanによるコメントである。

1. チーム
・創業者は自分の事業に24時間熱狂し、壮大かつ地に足のついたビジョンを持っているか
・自分のビジョン・将来見通しに自信を持っているか 解決したい課題は困難な内容か(安易な課題設定よりも困難な課題の方がビジョン・取組意義に共感する有能な人材が集まりやすい)

2. プロダクト
・顧客が周囲に思わずシェアしたくなるプロダクトを作ること。これができれば80%の仕事 は終わったも同然
・プロダクトはシンプルに1文で説明できる内容にすること
・一見凡庸に見えるが、実は良いアイデアを秘めているか(重要なポイントなので、後述)

3. 市場
・急成長する市場か;投資家は現時点の市場規模でなくその成長率を見ている(10年前の iPhone市場を見よ)
・トレンド;見せかけのトレンドでなく、真のトレンドを追いかけているか
→真のトレンドの例:10年前のiPhone(市場は小さいが熱烈なユーザーが存在)
→見せかけのトレンドの例:2018年時点のVR(一部の人が試しに買うが普及しない)

いずれも少しずつ見解は異なるものの、サマライズすると「自分たちの得意分野で戦っているチームか」「プロダクトは顧客が喜んで欲しがるものになっているか」「将来の成長が見込まれる巨大な市場で戦っているか」が重要なポイントとなりそうだ。

「チーム」「プロダクト」「市場」どれが最も重要か?

上にあげた3項目のうち、優先順位をつけるとしたらどれが最も重要な項目になるか?この問いに対してはシリコンバレーでは昔から定説となっている回答が準備されている。それは「市場」である。この理由について シリコンバレー著名VC、Benchmak Capitalの創業者Andy Rachleff(現在はロボアドバイザースタートアップWealthfrontのCEO)が以下のようなコメントを述べている。

「良い市場を選択すれば凡庸なチームでも成功できるチャンスはある。だが悪い 市場を選択した場合、例え素晴らしいチームでも常に失敗する」

"Great Team, Terrible Market = Market wins"
"Great Market, Terrible Team = Market wins"
"Great Market, Great Team = Magic"

というわけで、「どんなに優秀なチームであっても、闘う場所を間違えるな」というのが彼の言いたいことだ。(尚、彼が現在CEOを勤めているWealthfrontだが、正直スタートアップとしてはスケールがかなり厳しいロボアド業界にいるので、悪い市場を選択している感が否めない。やはり投資家である立場と、実際に事業をやる立場とは見えてくる風景画違うのだろう)

その他、WiL (World Innovation Lab)のGeneral Partner, Rob Theisも同様の点について以下の通りコメントをしている。

「小さい市場でも大きい市場でも、事業を立ち上げる労力は同じ」
「 市場が巨大であれば事業はスケールするが小さければ、同じ労力をかけたとしても小さい規模のビジネスで終始する」
「優秀なチームというのは、自分たちのアイデアに市場を合わせようとするのではなく(それは無理)、市場に合わせてプロダクトを改良できるチームだ」

以上、ここまでスタートアップ評価に当たる3つのポイントを述べてきた。もう少し掘り下げた内容、例えば「良いプロダクトとは」「市場規模とは」については次回以降アップしていきたい。


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